プロローグ
お久しぶりです。初めましての方もよろしくおねがいします。
数年前から書きかけてはやめて、いい加減に発酵しそうだったので放出します。
あらすじにも書きましたが、ダンジョンを公開するまでの準備段階が長いです。
のんびり楽しんでいただけたらと思います。
重い防火扉を押し開けて、外付けの非常階段に出た。
今見たものが信じられなくて、混乱したまま階段を駆け下りる。
こんな勢いで降りたら危ないってわかってる。でも、心のどこかに、どうなってもいいというやけっぱちな気持ちがあった。
例えどんなにひどい怪我をしても、きっと今の心ほどは痛まない。
――どうしてなの?
さっき見た光景を思い出すだけで、胸が焼け付いてしまいそうだ。
いつも通りに帰宅した自宅のリビング、ソファの上で母を押し倒していたのは、つい最近できたばかりの私の恋人だった。
大学に入学した頃に知り合って2年、少しずつ親しくなって、恋愛に夢も希望も持てなかった私が初めて好きになった人だった。
ちょっと堅苦しいくらい真面目で不器用で、とても優しい人。
人目を惹くようなカッコよさはないけれど、一緒にいると安心した。
ずっと付き合っていけると思ってた。
それなのに……。
常に数人の男を侍らせ、イイ男を手玉に取るのが趣味と豪語する母にかかれば、女慣れしていない彼が誘惑されてしまうのも仕方がないと、そう思う気持ちもあるけれど、理解なんてしたくなかった。
何かの間違いであってほしい、ただの誤解であってほしい、そう思いながらも、引き返して真実を確かめる勇気はなかった。
10階から一気に駆け下りたせいで、疲れた足が不意にもつれる。
あっと思ったときにはもう遅く、階段を転げ落ちそうになった瞬間、何かに体が弾かれた。
落ちるっ!!!
恐怖で体を強張らせ、きつく目を閉じて心地悪い落下の感覚に耐えたところまでしか覚えていない。
次に目を開けた時には、重厚なインテリアで整えられた書斎のような部屋にいたのだった。
短いのでもう一話更新します。