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目が覚めると、精霊が増えていました




 新しい階層を作った次の日、私が屋敷の方で目を覚ますと、既に外が騒がしかった。

 やっぱり、窓から朝の陽ざしが入ってくるのを感じられるのは心地いいなぁと、ベッドから降りてそのままテラス窓を開けると、人型や動物型、様々な精霊が庭や花畑にいるのが見えた。

 セオ達が勧誘してくれた精霊が、夜のうちに早速来てくれたようだ。

 毎朝シャワーを浴びるのが習慣だけど、それは後回しにして、急いで着替えて部屋を出た。

 


「おはようございます、カヤ様。申し訳ありません、お外が騒々しかったでしょうか?」



 私が部屋を出たことに気づいたエイミーが、急ぎ足でやって来る。

 今日の服や洗面道具などは、既に一通り用意してあったから、私が目を覚ました頃にもう一度部屋に来るつもりだったのかもしれない。



「日差しが心地よくて、自然に目が覚めたの。外を見たら、精霊達が増えていたから、挨拶くらいはした方がいいと思って、急いで降りてきたんだけど」



 契約してもらう立場だというのに、礼を失することはできない。

 彼らがいなくて困るのは、私なのだから。



「カヤ様、そんなに急がずとも大丈夫ですよ。でも、そうはいっても気になるのでしょうから、まずは私の弟子を紹介させてください。……ベラ、こちらに」



 エイミーがキッチンの方に向かって声を掛けると、もふもふでくるっとした尻尾がチャーミングなリス精霊さんがやってくる。

 背がかなり小さくて、足取りが軽いところから、若い精霊なのだろうと想像がついた。



「カヤ様、私がメイドとして育てております、リス精霊のベラです。まだまだ未熟者ですが、こちらの屋敷の方でメイドとして雇用していただけないでしょうか」



 ベテランメイドのエイミーが自ら育てているのだから、見所のある子なのだろう。

 当然、私に否やはない。



「もちろんよ、エイミー。ほとんど掃除がいらないとはいえ、これだけの屋敷を維持するのは、大変だもの」



 本当は私の世話は必要ないのだけど、その辺りはセオもエイミーも譲れないようで、何かと世話を焼きたがる。

 二人と過ごすのは心地いいし、構ってもらえるのも嬉しいから受け入れているけれど。



「ベラ。私はダンジョンマスターの香夜です。ここは他と違って、人が死なない、人を殺さないダンジョンになりますから、この世界の常識とは違うことも多々あると思いますけど、ダンジョンではなく、普通のお屋敷に勤めるとでも思って働いてください」



 私が声を掛けると、ベラが教育の行き届いた綺麗な所作で頭を下げる。

 私より頭一つ分くらい小さいけれど、精霊だから年齢はそれなりに重ねているのかもしれないと感じた。



「先日は、美味しいクッキーをありがとうございました。リス精霊のベラと申します。まだまだ未熟ものですが、精一杯お仕えさせていただきます」


「カヤ様、ベラは食いしん坊なのですよ。カヤ様の作られたクッキーがとても美味しかったからと、カヤ様との契約を熱望するほどに。ですから、ベラへの報酬は、時々お菓子を与えてください。まだ教育中の身ですし、それで十分ですので」



 食いしん坊と言われて、ベラは拗ねたようにエイミーを見るけれど、エイミーは知らん顔だ。

 とても仲のいい師弟らしい。

 報酬のことをわざわざ口にしたのも、ベラからは言い出し辛いから、代わりに伝えてくれたのだろう。



「お菓子が報酬でいいのなら、一緒にたくさん作って、たくさん食べましょう」


「はい! たくさん作って、たくさん食べます!」



 微笑ましく思いながら声を掛けると、元気のいい返事が返ってくる。

 エイミーの言う通り、食いしん坊のようだ。



「セオが人数分の契約書を用意していますから、朝食の後に契約を済ませましょう。早速山に入ったり、森を歩いたりしている者もいますから、急がずとも大丈夫です。朝食を終えた頃の時間に集まるように指示してあります」



 私一人で慌てていたけれど、さすがセオとエイミーのやる事に抜かりはないようだ。

 エイミーとベラの二人で朝食の用意をしてくれていたので、今日は屋敷の方で食事を済ませることにした。

 今日は魔物の召喚もしたいから、後でマスタールームにもいかなければならない。


 パンの籠や冷蔵庫に入っていたピッチャーは、マスタールームから持ち出すことができなかったので、マスタールームと行き来できるエイミーが、中身を移して持ってきたようだ。

 マスタールームに入れるのは、しばらくの間はセオとエイミーだけにすることを、昨夜のうちに話し合っていた。

 作ってもらったご飯は美味しいなぁと、野菜たっぷりのスープを堪能しながら、頭の中で今日の予定を立てるのだった。




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