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マイノアルテ・狙撃の勇者2

 酒場から一足飛びに外へと飛び出した龍華と茉莉が走る。

 銃弾が即座に飛んできた。

 単発式のスナイパーライフルの一撃が迷いなく茉莉を直撃、プリズムリフレクションにより跳ね返る。


「風属性にしてるから見えない防壁プリズムリフレクションなのだっ「威張ってる場合か、さっさと処理するぞ!」了解だよレウちゃん!」


 狙撃手も跳ね返りは見えたようで、今度は龍華に銃口を向ける。

 速い。一瞬目を離しただけで物凄い距離を詰められた。

 射撃。

 迫る龍華が避けられない一瞬の空白を狙った一撃が、狙いあまたず龍華の眉間を通過する。


「ハッ、雑魚が」


 無防備に迫った愚かな小娘についつい毒を吐き捨てたそいつは、次の瞬間思わず「はぁ?」と叫び声を上げた。

 それが自身の居場所を相手に教えるなんてこと意識すらせず、ただただその光景に驚きを見せていた。


 額を狙撃され、倒れ死ぬだけだった筈の少女が、立ち止まることなく走り続けている。

 ぷっと口から潰れた銃弾を吐き捨て、気勢を上げて迫り来る。

 龍華に驚くそいつに向けて、龍華は迷うことなく鎌を振り抜いた。


「クソッ!」


 ぎりぎりで身を屈めて避ける男は家屋の屋上から転がると、腰元に装備していたワイヤーをひっかけ、屋上から垂直落下。

 ワイヤーが勢いを殺し、彼を無事家屋下へと送り届ける。


「幻影か何かか!? 俺は狙撃の勇者だぞ? 今のは絶対ヘッドショット決まっただろ! まさかゾンビじゃあるまいしっ」


「逃すかッ」


 走りだした狙撃の勇者に龍華は一っ跳び。屋上から飛び降り彼の背へと迫る。


「なんだこのバケモノはっ!?」


「はいどーんっ! こっちは通行止めだよーっ」


 一度後を振り向き迫る龍華に罵声を浴びせた狙撃の勇者。その走る先に、茉莉が待っていた。

 右に天使の羽、左に悪魔の蝙蝠羽。光と闇のオッドアイ。

 天使と悪魔を無理矢理に融合させた魔法少女姿に、狙撃の勇者も思わず立ち止まる。

 驚いた彼は、一瞬背後を忘れていた。

 迫る死神の鎌が頭上へと掲げられる。


「はっ! しまっ……」


 思い出して後を振りかえる。

 彼の瞳が最後に映したのは、深紅に煌めく二連の刃。袈裟掛けに振り下ろされた一撃で、彼の身体は三つ裂きにされていた。


「マジ……かよ?」


「脆い。これが女神の勇者か? いや、前に闘った何とかの勇者たちはもっとややこしかった気が、いや、それは横入りで仮面ダンサーアンが来たからだったか?」


 昔の記憶を呼び起こす龍華が難しい顔で唸る。


「女神の勇者倒しちゃった? なんかショボい?「どこぞの神を名乗る誰かに力を授かった程度であればこの位だろう。自覚も意志も薄弱では技量が伴わんよ」えー。よくわかんないよー?」


 モノ言わぬ躯と化した狙撃の勇者にステッキをつんつんとつっつく茉莉。

 それを見た龍華が嫌そうな顔をする。


「こらレウコクロリディウム、死者を冒涜するな」


「ちょ!? これは我ではないぞ!? 茉莉が「あはは。レウちゃんいけないんだー」き、貴様謀ったな!?」


 レウと茉莉がどうでもいい話をし始めたので、龍華は放置して遺体を探る。

 体つきは中肉中背。黒髪黄色人種なところを見るに日本人で良さそうだ。

 服装は迷彩柄ジャケットに迷彩ズボン。手に持っているのはスナイパーライフルだと思われる。

 フラグニア同様この世界には無い科学技術の塊だ。


 他に気になる点は無い。持ちモノも携帯食料とかしか持っていないようで、特段変わった女神の勇者だと結論付けられるモノは何一つ持っていなかった。

 腕を組み、しばし考える。


「神よ、こやつは本当に女神の勇者でいいのか?」


 と、思わず天を見上げて告げていた。


 ―― はいはい天の声より返答~。あってまーすよー。残る女神の勇者はぁー、えーっと、魅了、強奪、時間停止、神速の四体でーす ――


「うわっ!? な、何?「これは……天の声、つまりこの世界の神か」」


「まさか本当に返ってくるとは思わなかったが、聞いてみるモノだな。おかげでキチガイにならずにすんだ」


 実は独り言だったらしい。龍華は頭を掻きながら茉莉に視線を向ける。


「聞いた通りだ。女神の勇者は倒した。残るは魅了に強奪、時間停止に神速の勇者らしい」


「ふむ。勇者を倒したかどうかが分かるのはいいな。とりあえず他の奴らと情報を共有して次の方向性を決めるか」


「だな。何処へ向うかも考えるべきだろう。……待てよ? 女神に聞けば勇者の居場所なども分かるのではないか?」


「どうなのだ女神よ?」


 ―― ああ、そっか。そうしたら効率いいよねー。じゃあ他の魔女とントロにも伝えよーっと ――


 こやつ本当に神なのか?

 思わず顔を見合わせるレウちゃんと龍華。

 互いに呆れた顔をしていたのも仕方の無いことだといえた。

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