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マイノアルテ・狙撃の勇者1

「まったく次から次へと面倒ね……」


「おい、ビルグリムだったか」


「おう? なんでぇシャロンの嬢ちゃん」


「ちょっと全力稼動で相手を倒して来てはくれまいか」


「いや、普通に死ぬだろ。相手の技量次第じゃ無防備に出た瞬間撃たれかねねェだろ!」


「あなたのスピードでもですか?」


 使えませんね。と溜息を吐きながら、身体を低くしたシャロンはヌェルティスの元へと向かう。

 しゃがんだ状態で酒場の隅を移動しながら入り口付近に待機中のヌェルティスへと辿り着くと、その後ろで壁を背に座り込む。


「どうです、ヌェルティス?」


「ふむ。現状敵は狙撃して来ているだけだ。こちらを征圧する面子が居ないということはおそらく単独と思って良いだろう。それとチャルチ家だったか? あちらの娘を襲った以上チャルチ家のものではないと思われる」


「自作自演の可能性はあるが、おそらく低いだろうな」


 ヌェルティスの言葉に直ぐ横で外を伺う龍華が告げた。

 入口を挟んだ逆の壁にはフラグニアに守られたメルフィーナが震えている。

 あれでは協力は不可能だろう。フラグニアに自分を守らせることしか考えていそうにない。


「ふむ。仕方ない。現状我が行くのが一番良さそうだな「だねー」」


 突然の声に振り向くと、ラナエやシャルロットたちをバーカウンターの奥へと隠し終えた茉莉が無防備に歩いていた。

 入口へと近づく彼女に、驚いたのは伯爵。いけませんお嬢さんっ。と告げるが茉莉は大丈夫と入口へと向かって行く。


 当然無防備な彼女に向けて狙撃の銃弾が襲いかかる。

 だが、無防備に歩く彼女に弾丸が当ることは無かった。

 キンと音が鳴って床に弾痕が穿たれる。


「プリズムリフレクション。余程の事が無い限り我にダメージは無い「ふはは、無敵ではないか我が軍は! でいいんだっけ?」阿呆、それは敗北フラグだ馬鹿茉莉っ」


 とたん不安になったのはヌェルティスの気のせいではないだろう。


「ヌェルティス、こちらは頼む」


「行く気か聖」


「当然だ」


「仕方ない、今回も大人しく留守番と行くか」


 溜息を吐き、ヌェルティスは隠れるラナエを見る。

 ビルグリムやゼムロットの近くに居るのに攻撃されていないのがなんとも。本当にあの魔女代理とントロは阿呆だな。と思う。

 コレがヌェルティスの知る性悪水魔術師だったらなら、おそらく隙を見せ、ントロが近くに居ないラナエやシャルロットは削り殺されているところだろう。


 シャロンにその場で待機するように告げ、龍華と茉莉が酒場を飛び出した瞬間、自分もカウンター奥へと走る。

 狙いあまたず狙撃されたが、そこはマントだけを犠牲に回避。カウンターへと飛び上がり、転がりながらバーカウンター奥へと辿り着くと、ラナエを抱えあげる。


「な、なに? なんですかーっ」


「ここはちょっと危険なのでな。シャロンの元へ連れて行くぞ」


「ふえぇ!?」


 再びバーカウンターを飛び越える。入口から直線上を横切り走り抜けるが、どうやら狙撃手はこちらに意識を向ける余裕が無くなったらしい。ヌェルティスは狙撃されることなく逃げおおせる。

 シャロンのすぐ側に戻り、自分の居た場所にラナエを、自分は龍華が居た入口近くの壁に陣取る。


「エルフリーデ嬢、ご無事で?」


 そして気付く。フラグニアとメルフィーナのすぐ後ろに伯爵とエルフリーデが避難している。

 敵対者同士は気付いていないようだが、一瞬即発なのは見てわかった。


「まったく、この世界は忙しないな」


「ヌェルティス?」


「来るぞ!」


 ヌェルティスの言葉に遅れ、酒場に飛び込んできた銃弾。

 壁に当り角度を変え、酒瓶を砕き、レジカウンターを破壊し、ゼムロットへと襲いかかる。

 慌ててナイフで弾くビルグリム。

 運良くナイフに斜めに当り、近くの酒瓶を破壊していった。


「あ、あっぶねぇ!? マジここ危険じゃねーか!?」


「いや、そういう意味だったのではないのだが……まぁ、良く無事だったな」


 感心するヌェルティス。まさかあの跳弾をナイフで退けるとは思わなかった。とっさの判断だとはいえ、少しでもずれれば確実に眉間に穴が開いていただろう。

 シャルロットも、そこでようやく自分が無防備な状態だと気付いたのか慌ててバーカウンターから逃げ出そうとする。


「下手に顔を出すな阿呆ッ! 敵は逃げ出す間抜けから狙うぞ!」


 叫んでやると、逃げ出そうとしたシャルロットが慌ててビルグリムの背後に隠れた。


「ちょ、あんた何俺の後ろに来てやがんだ!?」


「あら、私のントロの代わりに守ってくださるのでしょう? 頼りにしてますわ」


「うぐ……」


 綺麗なシャルロットに背中から手を置かれたビルグリムは、呻きながらも鼻の下伸ばしてしゃーねぇな。っと……アホかあやつは? 思わず白い目を送るヌェルティスだった。

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