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地球・翼の勇者2

「紗那螺ッ! どっせぇい!」


 両拳に出現したグリップを握り、聖小影ことルミナススプリングが咆える。

 腕を守るアームガード型のトンファー紗那螺でユクリに近づいていたゾンビを殴り付け、周囲のゾンビ諸共ふっ飛ばす。


 普段は眠そうな眼にぴょいんと側頭部から突き立った髪の毛がチャームポイントらしい彼女だが、今は中華服のような服装に薄い虹色に煌めく天女の羽衣を身にまとっている。

 コレが彼女の戦闘服らしい。額には西遊記の孫悟空がしているような金色のわっかが填り、その下辺りに謎の紋様が額自体に浮き出ている。


「スプリング、突出し過ぎ!」


「ヒャッハー鏖しだーっ」


「サマーも正気に戻れ!」


 ユクリの元に出現したのはルミナススプリングだけじゃなかった。

 スプリングの後を追い、黒髪のルミナスウインター、茶髪ボーイッシュのルミナスサマー、黒髪の下半分が紫色になった変わった髪のルミナスオータムがユクリを囲うように助っ人に入る。

 入った瞬間叫んだサマーに、オータムがハリセンを取り出し頭を叩く。


死卆犁しおり!」

「おーし、驅驅かるか行くよーっ」

「仕方ない、お姉さん、手伝うわ冴閘ざおう!」


 各々武器を生成し、周囲のゾンビを駆逐する。

 ウインターは大鎌振るい、サマーが双剣で斬りかかる。

 弾ける血飛沫を全て薙ぎ払うように、オータムの巨大ハリセンがサマーごとゾンビ軍団を弾き飛ばした。


「あっ」


「きゃひーっ!? とりゃ!」


 ぶっ飛ばされたサマーは慌てず騒がず、着地点に居たゾンビの首を蹴り折り飛び上がる。


「そいさ! や! とれぇっ! はいやーっ」


 そのまま別のゾンビの頭を足場に戻ってきた。


「もー、またかーオータム。僕じゃなかったら死んでたぜっ」


「あー、うん、めんご」


 問題らしい問題にはならなかったので軽く謝りハリセンを振る。

 一振りで数十体のゾンビが吹き飛ばされ、背後のゾンビ諸共粉砕される。


「相変わらず豪快ね」


「やりたくてやってる訳じゃないのよ。フルスイングしないとゾンビ共立ち上がってくんの!」


 ウインターの言葉にイラつきながら答えるオータム。

 その光景をしばし呆然と見ていたユクリも、ようやく再起動した。


「スマン助かる」


「大丈夫、お代はあとで請求しますんで」


「この金の亡者、物凄い金にがめついからむしり取られますよ?」


 半ばあきらめたようなオータムの言葉に、ユクリはヤバいモノに助けられたことに今更ながら気付く。

 しかし、セイバーと萌葱に任せればいいかと気楽に考え請求については頭の隅に押しやった。


「今はゾンビの群れ相手だな。アウトレンジゲイズ」


 近接戦闘を他人任せにできたことで、ユクリは援護に切り替える。

 数メートル離れた周囲十メートル程を円周状に火炎が噴き上がる。

 内部に居たゾンビたちが一瞬で消し済みへと変わり、空白地帯が広がった。


「うわ、凄っ!?」


「遠距離は任せて良さそうね」


 ユクリはむしろ遠距離特化型である。近接戦闘の方が不得意であり、魔力砲台となった彼女は魔王の娘としての本領を発揮する。

 別世界から持って来た魔力回復薬を一気飲みし、けぷっと口から漏らし、慌てて口元を腕で拭うと、魔法詠唱を再開した。


「御蔭で魔力も回復出来た。上げてゆくぞ!」


「おお、ノリノリ!」


 気勢が上がる。

 それを上空から見たジャスティスセイバーは、安堵の息を吐いて自分の敵を見た。

 ユクリへの心配が無くなった今、焦る心配はない。じっくり腰を据え、こいつを倒す。


 直ぐ横に助っ人の八神が舞って来る。

 バサリと純白の羽を広げ、面倒臭がりの天使は剣を構えた。


「聖剣・不変シュテーティなるヒカイト・運命シュテルン・の時シュトゥンデ。 略して聖剣SSS。これはサラカエル様に頂いた剣であり、意味するのはこれを持つモノに絶対的好機を与えるという加護がある」


 なんか自分の剣説明しだしたけど、これは様式美とかそんなんか?

 俺も自分のセイバー説明した方がいいだろうか? ジャスティスセイバーはそんな事を思う。

 これは変身用スーツが俺の正義力を使い生成する剣であり、正義力により強度が変わる何度でも作れる剣である。とか?

 ちなみに一度手放した後で新しく剣を作ると手元に新しい剣が出来て、古い剣は光に代わり霧散、彼の正義力に変換されることなく消えてしまうので多分空気に溶けたとかだろう。


「さらに、コレが聖剣ネジネジ! 邪神すら切り裂く聖なる剣よ!」


 おお、二刀流。ジャスティスセイバーは思わず呻く。

 たぶんアイテムボックスを増渕に貰ったんだろう。何処からともなく八神が取り出したのは、歪に曲がって螺旋を描き、楽器のホルンみたいに円を描いて∞の文字型になっている剣だった。

 なんだあれ。鑑定して見るとイモータルソードという名前らしい。いろいろ凶悪設定の剣だった。

 というか、神殺しの剣とかって天使が持っていいものじゃないと思うんだけど。反乱する気か? 失楽園か? 彼の心配をよそに、八神は得意げに剣を構えるのだった。


「ネジネジじゃねーじゃねーか。イモータルソードの方がカッコイイと思うぞ八神」


「いいの、これは私と麁羅がネジネジと決めたんだから。聖剣ネジネジよ!」


 聖剣に対して酷い名付けである。

 少し離れた場所で聞いていた翼の勇者もさすがに呆れた顔をしていた。

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