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序・アンゴルモニカ

「さて、皆の者、話は聞いたな?」


 その日、アンゴルモニカに存在する大国家、松下連合国の会議室に、彼らは集まっていた。

 盟主、松下宝蔵が上座に座り、連合代表の大名たちが順に座る。


 北条家大名・北条貞経範純ほうじょうさだつねのりとも、アーチボルグ最高司祭・クラネス・エッヘンベルグ、練武山李家師範・李白、同じく練武山指南役・黄丹月、田中家大名・田中一、グルジア代表・ボックル、駑家代表・鎮蘭、長曾根家大名・長曾根陽芽姫、中田家大名代行・中田ベアトリーチェ、アマゾネス族族長・チョムチョム、軟体族族長・ソカン=モティカルパイト=ヘグイトス、スキアポデス族&アナトミー族代表・トトメス・フラグナスリク、妖楼閣大名・平柾門、魔人代表・歌貢耶、魔王・トルーア・トルクスタ・トゥルフーカス、最後に救国の英雄ヘムルトゥス・ヘルムッド・ヘーペレントゥム。


 皆、一癖も二癖もある人物だ。

 彼らはもともとこの世界の住民ではない。そもそもこの世界自体、神・ナーガラスタが創造していた世界が崩壊するのを見越して神々により急造された異世界なのであり、生まれたばかりの世界にナーガラスタが創造した世界の住民を全て移したのである。そのナーガラスタはマロンとの闘いに破れ、現在は能力を全て失い地球の狭間に軟禁されている。


 よってこの世界の管理もマロンが請け負っており、その関係で女神サンニ・ヤカーによる逆恨みの対象世界に認定されてしまったらしい。

 先の神々の対戦により多大な被害を受け、新天地を改革し、ようやく大国家としての運営が軌道に乗り始めた時だったのだ。

 この世界に女神の勇者を名乗る邪神の手先が現れたと、先程天から声が降ってきた。


 このため、松下家盟主の名の元に、松下連合国の大名たちが集まったのである。

 基本方針は女神の勇者を見付け次第駆逐する。

 それに異存はないのだが、流石に相手の力量も特性も分からぬまま闇雲に闘う訳にも行かない。そこで各大名が再び手を取り合い、先の闘いで敵対していた者同士も此度の戦では争うことのないようにと、松下宝蔵の挨拶が締めくくられる。


「それから、急危を知った助っ人がマロン神より齎された。皆もよく知っている者たちだ」


「ふむ。それは武藤薬藻たち、と思っていいのか」


 北条の言葉に松下は返答に困った顔をする。当らずとも遠からずなのだが、上がった名前の存在は来ない。


「アンゴルモア様がいらっしゃるのでしょうか?」


 アーチボルグのクラネスが期待を込めて尋ねる。アンゴルモア神を信望するアーチボルグにとって現人神であるアンゴルモアの存在はあまりにも大きい。


「いや、期待させて申し訳ないが、助っ人としてこの世界に来るのは我が娘、松下星廼、その従者である網走紅葉、それと勇者・手塚至宝殿だ。あとその知り合いという娘が一人追加で来るらしい」


「ほぅ、勇者が来るのか!」


「うむ。女神の勇者とやらがどれ程危険かは知らぬが、彼女に来て貰えるならこの世界も安泰であろう」


「そうですか、アンゴルモア様は……いらっしゃいませんか」


「うむ。お主がそう聞くだろうからとマロン神からアンゴルモアの近況を教わっている」


「近況……?」


「少し前まで別の世界に召喚され、その世界を救っていたらしい。一度地球に戻ったが直ぐに別世界へ旅立ったようだ。しかも……そこでもまた、やらかしておるらしい」


「なんとっ! さすがはアンゴルモア神様! 我が世界をお救い下さっただけではなく幾多の世界に渡りご活動とは! それでは我が国に戻って来られないことはしかたありませんな。ああ、なんと慈悲深きことか!」


「そ、そうだな。アンゴルモアはおそらくこの世界はお前達で何とかしてみせろと言っておるのだろう。彼は他の世界を救っておる最中であろうしな」


 両手を重ね祈りだすクラネスに苦笑いしながら松下は適当な言葉を吐く。実際に言われた訳ではないがクラネスを御すにはアンゴルモアはそう思っていると告げるのが一番効果がある。


「分かっております。他世界の危機を救っているというのに、我が国の不甲斐なさで神に助成を頼むなどアンゴルモア神様の落胆を買うようなもの。我等は一丸となり邪神の手先を葬り去ってみせましょう! 今は亡きベルナガルド最高司祭が成したように、我々に与えられた成すべき事を成しましょうぞ!」


 宗教家の相手は疲れる。松下は内心溜息を吐きながら呆れた顔をしている各国の代表を見回す。


「そう言う訳だ。既に動き出していると思うが、皆連携して女神の勇者と相対してくれ。くれぐれも多大な被害を出さぬように」


 皆がこくりと頷く。

 誰もが女神の勇者に負けるとは思っても居なかった。

 何しろ絶望的な闘いならば既に経験済みなのだ。

 一丸となり国を立ち上げた彼らにとって、女神の勇者を名乗る侵略者など恐れるモノではなかった。

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