地球11
「バカな、一瞬で!?」
調伏の勇者は思わず叫んだ。
現れた三人組のヒーロー真愛戦隊エンジェリックラバーズを睨みつける。
ただの少女三人の悪ふざけにしか思えない戦隊名とポーズだが、その内の金髪と赤髪の少女に羽と天使の輪が付いているのは少々見逃せない。
ただの少女と結論付ける訳にはいかないだろう。
正義の味方、あるいは、天使。少なくとも折角手に入れたオウラミサマを一撃浄化できる神聖魔法が使える存在が一人いると思うべきだろう。
悔しげに呻きながらも亡者の群れをここへと集わせる。
「マズいな。折角のスキルが無効化されそうだ。これはマズい」
焦りつつもなんとか目的の女を殺そうと視線を走らせる。
ニヤニヤと自分を見物している女が居ることに気付いた。
「おい、そこのっ! 見てないで助けろ!!」
「あっれー。調伏の勇者君、自分だけで大丈夫なんじゃなかったー?」
「ふざけるなっ。幽霊共が浄化されちまったら意味ねーんだよ!」
「はぁ、しょーがない。仕方ないから手伝ってやるわよ」
屋根の上に居たそいつがひらりと舞い降りる。
「おお!? なんかカッコイイ人ですお」
「多分女性だねー。フローシュが戦闘すんの?」
「ええまぁ。リュミーはまともに闘えないでしょうし、シシーさんは手伝わないのですか?」
「この世界ではあまり力を振るわない約束なの。シシー強過ぎるから。てひ~」
「さぁて、選手交代。初めまして可愛らしいお嬢さんたち。武器の勇者だ」
武器の勇者は宣言と共に両手にアサルトライフルを出現させる。
「まずはダンスを踊ってくれるかい。血塗れのダンスをっ」
高笑いと共に連続した発砲音が響き渡る。
即座に反応して飛び退くシシルシ。
リュミエルも圭一と魑魅の元へ飛び退く。
しかし、フロシュエルだけは逃げることなくその場に留まり、不敵に微笑んだ。
「プリズムリフレクション」
刹那、彼女を取り巻くように虹色に輝く八角形の小さな盾が無数に出現する。
彼女の周囲を漂うそれらがフロシュエル自身を覆い尽くす。
迫る銃弾が盾に当った瞬間だった。
同じ速度、同じ威力で武器の勇者向けて銃弾が跳ね返る。
「ちぃっ!?」
咄嗟に銃撃を止めて飛び退く武器の勇者。
「残念ですが、飛び道具も近接武器も私には効きませんよ!」
「全部跳ね返すって? なんて天使よ。こんなのが居るとか最悪ね」
フロシュエル・ラハヤーハ。数年前は落ちこぼれの天使見習いだった。
危機意識もなく力もなく技術も拙かった。
でも、ハニエルに見出され、小影に指導され、龍華に、完全に、ピクシニーに、ブエルに様々な人に沢山の事を教わった。
だから、そんな人たちがいるこの地球を破壊する勇者たちに、フロシュエルは自分が闘い人々に恩を少しでも返したいと、ハニエルに許可を貰い天界から舞い降りたのだ。
絶対に負ける気はない。この地球を壊滅させはしない。
一人でも多く沢山の人を守り切る。その為にっ。
「遠慮はしないと、決めてます。貴方達を、全力で滅します!」
「舐めるな小娘ッ」
ロケットランチャーを打ち放ちながら小型ボーガンの連射。
移動しながら武器の勇者は様々な飛び道具でフロシュエルを攻撃する。
しかし、フロシュエルは動くことなく、その場で弓を引く動作を行った。
「ホーリーアロー……スプレッドッ!」
たった一発の光の矢。打ち出された瞬間無数に枝分かれして武器の勇者へと襲いかかる。
三十程に分かれて襲いかかる光の矢に、武器の勇者は思わず舌打ちするのだった。
一方、圭一と魑魅を引き連れ戦場から遠ざかるリュミエルとシシルシには、調伏の勇者が追って来ていた。
すでに周囲の亡者たちは彼の支配下に収まっており、リュミエル達を追い詰めていく。
リュミエルのホーリーアローが何体かの霊体を撃破するものの、焼け石に水状態だ。
「リュミちゃん、あせんしょんなんとか使えないの!?」
「フローシュ先輩の技ですか!? あんな聖力の無駄遣い技フローシュ先輩か大天使長クラスじゃないと無理ですお。あの人の聖力どうなってんのか私も意味不明ですお」
「先輩に対して何たる言い草。でも、それじゃお前じゃなくてフローシュちゃんがこっち来た方が良かったんじゃね?」
深淵の覗くような黒い瞳で見て来るシシルシに、うぐぅっと反論できないリュミエル。
彼女も分かっているのだ。フロシュエルからいろいろと教わっているが、フロシュエルのように磨けば光る原石だったわけじゃない。リュミエルの聖力は並み以下だし、力も頭もそこまで無い。
唯一フロシュエルに教わった技術だけが彼女を見習いから天使へと格上げしてくれたのであり、それが無ければ既に天使足り得ずと消滅していた存在である。
「磨けば光る秀才とは違うのですお。私は何処まで行っても役立たずですおぅ」
「泣きごと言ってる暇無いぞ!? あんたたち助けてくれたのはありがたいけどこの状況どうすんだ!?」
また、囲まれてしまった。
十字路に追い込まれ、前後左右に亡者の群れ。
巨大な霊体がまた現れている。
「ふふ。くははっ。道中見付けた見越し入道とかいう霊体だ!」
「つ、詰みましたお」
「勝手に詰むな阿呆ッ」
その声は、上空から聞こえた。
弱気になるリュミエルを叱咤するように、その女は上空数百メートルから自由落下を行って来た。
「月下暗殺拳・斬空殺月面落刺ッ」
見越し入道の頭蓋を蹴りで突き破り、下田完全が降臨した。




