表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/223

地球10

 血飛沫が舞う。

 無数の肉片が空を飛ぶ。

 赤い二連の刃が煌めく。


「おおおおおおおおおおッ!!」


 聖龍華は一人ゾンビの群れと闘っていた。

 並みいるゾンビの群れはその全てが何故か外人だ。

 白人の者もいれば黒人もいる。太った警察官らしいゾンビを三つ裂きにして続く金髪の女ゾンビを薙ぎ散らす。


 まさに暴風。近づくゾンビ全てを切り裂き吹き飛ばす。

 少女の三倍はある鎌はまさに近づく全てを狩り尽くさんばかりに物凄い速度で振るわれ、既に彼女の周囲数メートルは安全地帯と化していた。

 それでもまだ止まる気配はない。

 安全地帯は内部から移動しており、龍華が近づくほど別のゾンビが斬り裂かれ、弾け飛び憤死する。


「うっゎ、何だあれ」


「凄いな。正直アレが敵だと思うとちょっと二の足踏むな」


「なんだ闇の勇者。臆病風に吹かれたか?」


「まさか? お前こそゾンビがやられまくって焦ってんじゃねーのか?」


 焦った顔で互いに軽口を叩き合う闇の勇者とゾンビの勇者。

 徐々に近づく龍華の猛攻に、二人はごくりと生唾を飲み込んだ。


「ふっ、丁度良い俺の闇に惑え!」


 不意に、龍華を包み込む暗闇。

 暗黒球に包まれた龍華が見えなくなった。


「どうだ! その闇は継続ダメージ付きのうえ盲目の結界だ。もうお前は袋の鼠逃げることさえ……」


「いやいや、それあいつにゃ聞こえてねーだろ」


 言葉の途中でくっくと笑うゾンビの勇者。だが、二人の声は唐突に止んだ。


「しゃらくさいっ」


 気合い一撃、暗黒球が内側から爆散する。

 飛び出した龍華の瞳に青龍が宿って見えた。


「応龍乱舞ッ」


 地面に足を付けた瞬間、先程より猛スピードで振るわれる鎌がゾンビの群れを薙ぎ散らす。

 真空波が発生し、遠く離れたゾンビですらもナマス切りにしてしまう。


「おい、嘘だろ!?」


「チッ、しゃーねぇ。こうなりゃ……これでどうだ!」


 ゾンビの勇者が召喚する。

 そこから現れたのは……サイクロプス。

 ゾンビではなかった。一つ目の巨人。と言っても4メートル程の身長の巨人だ。


「なんだと!?」


「はは、なかなかいいのが出たじゃないか!」


 強張った顔で告げながら、闇の勇者共々龍華達から距離を取るゾンビの勇者。

 現れたサイクロプスは棍棒を持ったまま、きょろきょろと周囲を見回す。

 近くに居る龍華を見定め、雄叫び上げて打ちかかって来た。


「チィッ。ゾンビの勇者ではなかったのか!?」


「はっ。何を言ってんだぁ? 俺はゾンビの勇者だなんて一言も言ってねーぜ?」


 ニヤつくゾンビの勇者。否、別の能力を持つ勇者はさらに召喚を開始する。


「いい事を教えてやる。ここに居るゾンビは遥か未来、この地球から連れて来てやったものだ。分かるかぁ? 世界は未来でデストピアになっちまうのさ。ちぃっと早まるだけだし問題はねーだろ?」


「ほざけっ」


 サイクロプスの首を刈り取り着地した龍華にマンモスが突撃して来た。


「これは!?」


「そら、こいつはどうだ!」


 マンモスを三枚下ろしにした龍華の目の前に現れたのはティラノサウルス。Dレックスとも呼ばれるソレは目の前に現れた龍華を睥睨する。


「成る程、貴様の能力、ゾンビでは無く時空系か」


「時空転移の勇者だ。よろしくなァ」


 嗤う時空転移の勇者はさらにゾンビを召喚していく。

 彼が行っているのはこの地球の未来、あるいは過去へのゲートを開き、そこから生物を召喚しているのである。

 ならばゾンビが現れるということは時代のどこかでゾンビパニックが起こったのだろう。サイクロプスに関しては地上に出てきた魔族だと思われる。


「すげーだろ。何か知らんが女神の勇者は襲われなくなるんだぜ?」


「共倒れさせることは無理ということか」


 ティラノサウルスの足を、尻尾を首を切り裂き、龍華が倒れた胴体の上に着地する。


「なおさら、貴様らを止めねばならんな」


「はっ。このまま雑魚どもと遊んでな!」


 次々と召喚されていく生物達に、龍華の進行速度が遅まった。

 舌打ちしながら鎌を振るって行く。

 周囲を片付ければ既に距離を取った勇者たちとの間に新たなゾンビ達の群れ。

 完全な千日手になっていた。


 ゾンビや連れて来られた生物に後れを取ることはないのだが、流石に無限に闘うことになると少々面倒臭い。

 それでも手を休めることはなく、近づくゾンビを狩り尽くす。

 嗤いながら距離を取る二人の勇者が遠い。


「随分苦戦をしているわね。手伝おうか?」


「っ!?」


 気付いた時空転移の勇者が飛び退く。

 遅れて逃げようとした闇の勇者向け、上空から迫るそいつはくるりと一回転して蹴りを叩き込んだ。


「ダンサー……キックッ!」


「がぁっ!?」


 くの字に折れ曲がり吹き飛ぶ闇の勇者。

 入れ替わるように地面に着地したのはおがくずのようなダンサー衣装に身を包み、仮面を被った一人の女。


「ペトルか!?」


「正義の味方として、女神の勇者退治、助太刀するわ」


 仮面ダンサーペトル推参。龍華の元クラスメイト、四月朔日梓が参戦した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ