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モルグドラハ2

 武藤風音は旧インセクトワールド社の元社員である。

 インセクトワールド社は今、一緒に行動をしているバグソルジャーにより壊滅したが、森元王利の活躍により首領は無事異世界へと逃げおせ、ラナ、そしてクルナを伴い地球へと帰還した。

 そうしてラナを首領に押しやり作られたのが首領レウコクロリディウムが裏の首領として統治していたラナリアである。


 もともとレウコクロリディウムに見出された風音は彼女を心酔しており、彼女の為ならばその命すら惜しくない。彼女の生存を知った風音は真っ先に異世界から帰った首領に接触を図り、そのままこの異世界旅行に付いて来た。

 本来であればヒストブルグという学園で学生をしていた彼女だが、既にそのような場所に戻る気はない。


 否、正義の味方が存在する場所であるならば涎垂らして突撃する所存ではあるが、基本、首領が第一優先、正義の味方と出会う事が第二優先。仲間の安全はさらに下である。

 この為、機械兵団で闘うヒストブルグのクラスメイトたちへのフォローは最小限だった。

 もともと首領も付いて来たヒストブルグクラスメイトである正義の味方候補たちをフォローする必要はないと言っていただけに、彼女としても必要以上に手伝う気はない。


 なので目の前の多腕の勇者に意識を裂く。

 まだ変身すらしていないので闘いにすらならないのだが、既に周囲は戦場と化している。

 多腕の勇者もいつでも闘えるようで、風音が戦闘態勢に入るのを律儀に待っているようだ。


「おい、わざわざ俺と闘うみたいな感じに対峙してっけどよ。どーすんだ? やる気ねーなら他の奴殺すぞ?」


「あーっとそうでした。ちょっと周囲を観察しすぎてましたね」


 機械兵団と闘うクラスメイトたちは危なげながらも接戦している。

 一応パピヨンがいる御蔭か、今の敵数ならば問題はないようだ。

 もっとも、機械兵団の勇者は様子見というか、潰れない程度の兵数に抑えているようだが。


 安定した戦場になっていることを確認し終えた風音は、最後に防壁の勇者と睨み合うクマムシ男を見る。

 全く動く気配の無い二人に呆れた視線を向け、周囲の確認を終える。


「んじゃ、そろそろ始めましょうかね。flexiоn!」


「おお、テメーも変身すんのかよ。華奢な身体だからどう闘うのかと思えばよぉ」


「はいはいどうも。セブンズスパイダー、参ります」


 現れたのは白き蜘蛛。流線型な顔立ちはまるで正義の味方のよう。

 複眼のアイレンズに女性らしいフォルム。

 変身を終えたのを見計らい、多腕の勇者の肩甲骨から四つの腕が飛びだした。


「うわ、気持ち悪い」


「テメーも蜘蛛っつーなら節足どうした? その身体か背中から生えんだろ」


「そうですね。やはり悪としては第二形態、第三形態は残しておきたいものですよ」


「ああ? 何かよくわからんが、奥の手ってことか。なら、早々に引き出してやるぜ。その慢心ごと身体を引き裂いてなぁっ!」


 言葉と共に突撃。

 六本となった腕の右三本がセブンズスパイダー向け放たれる。

 当然ながら当ってやる義理はないのでその場から飛び退いた。

 追い打ちをかけるように拳を打ち込んできた多腕の勇者は落下してきたセブンズスパイダーに狙いを付けた。


「終わりだ」


「蜘蛛の闘いを知らなすぎです」


 落下中だったセブンズスパイダーが急速に上昇した。

 予想外の動きに三つの腕が空ぶる。


「う、上に落下!?」


「言いえて妙ですが落下みたいなものですかね。正確に言えば糸による上昇です」


 いつの間に張ったのだろうか?

 既に上空には大量の蜘蛛糸が張られ、多角形の蜘蛛の巣が出来ていた。

 そこに糸を垂らしたセブンズスパイダーが上下逆に浮いている。


「ちっ、なかなか面倒そうだな」


「ふふ、蜘蛛の巣にようこそ。絡め取られないよう気を付けなさいな」


 今度は自分の番だ。というように蜘蛛の巣より飛び出すセブンズスパイダー。

 物凄い速度で迫った彼女に咄嗟に六つ腕をクロスして防御する。

 高速落下による飛び蹴りがクロスした六つ腕を圧し折る。

 思わず呻く多腕の勇者に追撃の回し蹴り。


 クロスした腕が千切れ飛び、多腕の勇者が吹き飛んだ。

 転がる多腕の勇者に気付いた防壁の勇者が嘘だろ。と呟いていたがセブンズスパイダーは気にせず追撃に移る。


「終わりですっ」


「ふざ、けんなァッ!!」


 追撃の飛び蹴りを掴み取り、起き上がった多腕の勇者はセブンズスパイダーを投げ飛ばす。

 突如生えた新しい二本の腕を見ながら、蜘蛛糸を操り勢いを殺して着地する。


「忘れてました。圧し折っても新たに腕はできますね」


「クソッ、俺の最初の腕折りやがった。トサカ来たッ。テメー絶対ぶっ殺す」


「あら、トサカなんてあったのですか。それは初耳ですね」


「なんだとォ!!」


 激高の言葉を嘲笑されてさらに猛る多腕の勇者。その全身から無数の腕が突き出した。

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