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地球7

「行ってらっしゃいませ」


 深々と礼をする夜ト神乱菊に、高田純平は口付けを交わして背を向けた。


「行って来るよ乱菊。ゾンビ達に気を付けて」


「ラナリアの怪人や正義の味方が居てくれてます。私の事は気にせず旦那様のなすべきことを」


 朗らかに微笑む妻に、純平はこくりと頷き三角形の先端を持つワイヤーロープに足を掛ける。

 ワイヤーが引かれ、上へ上へと遠ざかる純平に、乱菊はただただ両手を合わせ祈るように見上げていた。

 彼女に笑顔を見せて開かれたハッチに着地する。コクピットに乗り込む。


 巨大人型兵器へと乗り込んだ彼はパイロットスーツの不備を確かめ、コクピットの座席に座る。

 深呼吸を一つ。

 パチンとボタンを一つ押すと、ハッチが閉じて全天視界モニターが起動する。

 瞬く間にメカメカしい内部が消え去り、周囲の光景が見えるようになった。

 まるで宙に浮いているような状況だが、彼はコクピット内部におり、目の前に立ち並ぶ機械の群れに囲まれているのだ。


「ハロハロマスター。本日はどんな敵をコロコロしちゃいますかー?」


「女神の勇者の一人が真っ直ぐに国会議事堂を目指してる。接敵される前に潰せってさ」


「おー。今度は勇者が相手かー」


 感心したように告げるのは半透明の少女。

 丁度純平の背後、彼の座る椅子の上から覗くようにして出現していた。

 この人型機械兵器ジェノス・カスタムのメインコンピューター。人工知能のジェノスである。


「マスター、勇者っていうと至宝さんみたいな感じですかね?」


「あそこまで理不尽な存在じゃないよ。といっても巨大化してる時点で理不尽だけどね。ジェノス・カスタム、出ます!!」


 射出ポッドがジェノス・カスタムを押し上げる。

 物凄い速度で打ち出されたジェノス・カスタムがとある山の山頂から飛びだした。

 忙しなく機械類を操作し、純平がジェノス・カスタムを動かす。

 慣れた手つきを見守りながら、ジェノスは純平のパイロット姿を見つめていた。


「……ん? どうしたジェノス?」


「いえいえー。さすがマスターだなぁ。とやはり女を知っただけあって女体の扱いは上手いなーっと」


「何を言ってるんだ全く。っと、もうここまで来てるのか!?」


「でっか!?」


 飛行しながら目的地へと辿り着いたジェノス・カスタムのモニターに映る巨大な男を見つけ、純平とジェノスは息を飲む。

 巨大な小学生位の少年が一人、ズシン、ズシンとビルをなぎ倒しながら進んでいる。

 時折あはははは、おもしろーい。と声が聞こえるのは気のせいだと思いたいが、アレが女神の選んだ勇者かと思うと頭が痛い。


「あんな子供なのか……」


「逆ですよマスター。子供だから巨人になって怪獣みたいなことをしたいとか巨大ヒーローのマネゴトしたいってことですよ」


「ああ。なるほど。昔は僕もアトミックマンには憧れたな」


「クラスメイトにいませんでしたアトミックマン?」


「居るよ。伊藤だろ。彼を見たことで僕の憧れは砕け散ったよ」


「それ、どういう意味かは問いませんが、友人に謝れマスター」


 まずはカノン砲を取り出し挨拶代わりの一撃。


「うわぁっ!?」


 突然受けた一撃に驚く巨大化の勇者。

 周囲を飛び交う戦闘機からも銃撃を受け、戦車部隊からの砲撃も受けているが、そこまでダメージを受けていないようだ。


「これは、結構頑丈だな」


「ルクスエナジーチャージ開始しちゃいますね」


「その方が良さそうだ。全方向は封印だからね」


「あいあいマスター」


 巨大化の勇者の前面へと着地する。

 自分と同じくらいの人型兵器を目にした巨大化の勇者は目を輝かせる。


「わー、凄い凄いっ。女神様の言う通りだーっ。玩具が一杯で楽しいなーっ」


 純真無垢に笑みを浮かべ突撃してくる。


「ひぃぃ、マスター、ああいうの苦手ですっ」


「だろうね。レーザーザンバー装備。白兵戦行くぞ!」


 ジェノス・カスタムはレーザーザンバーを引き抜き、迫り来る巨大化の勇者を斬り付ける。

 流石に斬る一撃はダメージが通るようで、ジェノス・カスタムを掴もうとした掌に切り傷が付けられる。


「痛っ!?」


「嘘だろ!? 今ので紙で手を切った位のダメージなのか!?」


「砲撃やら機銃攻撃で穴開かない身体ですしねぇ。こりゃ苦戦必至ですか。ナーガラスタ戦とか思い出しちゃいますねー」


「魔力回路緊急起動。魔力剣で対抗しよう」


「ラジャですマスター」


 レーザーザンバーがジジと光を失い、赤紫の光が放出される。


「もう、痛いじゃんかーっ、壊してやるからなっ」


「こちらは元よりぶっ殺す気満々ですけどねーっ」


 突進してきた巨大化の勇者に、ジェノス・カスタムの魔力剣が唸りを上げる。

 巨大化の勇者がレーザーザンバーを掴み取る。ジュゥと焼ける音が聞こえたが、巨大化の勇者は構わずレーザーザンバーを圧し折った。


「嘘だろ!?」


「勇者やべーっ。マスター回避っ」


 咄嗟にブースターで回避しようとしたジェノス・カスタム。

 しかし逃げるには距離が近すぎた。

 飛び上がった足を掴み取られる。


「壊れろーっ」


「マズ……」


「リュアッ!!」


 ジャイアントスイングが行われようとした瞬間だった。

 上空から巨大な人型が落下して来て巨大化の勇者の後頭部へと飛び蹴りが炸裂した。

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