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マイノアルテ7

 ―― ントロ戦争してくれてる各領地の魔女に告げまーす。この世界に邪神の加護を受けた女神の勇者を名乗る存在が、えーっと 五体? 出現してまーす。放置すると世界が崩壊するのでントロ戦争を一時中断、女神の勇者を狩っちゃってくださーい。女神の勇者が居なくなったらントロ戦争再開しまーす ――


 突如、天から声が降ってきた。

 女はそんな声を聞きながら目の前の人物に視線を向ける。


「えーっと、どうしちゃいますか?」


 目の前の人物の手刀を受け止めた状態の彼女に、金髪の女はふむ。と答える。


「そうね。別にこのまま続けてもいいんだけど、正直あなた達とはやりにくいわ。一時休戦受け入れてもいいわよ。私はお兄様の元へ帰れれば問題ないのだもの」


「私も~。有伽ちゃんの元に戻れたら問題ないから無理して闘う必要ないんだよねー」


 えへへと笑うのは目元まで隠れる黒髪の少女。

 すらりと伸びた細い四肢。ともすれば折れてしまわないかと思う程だ。

 その肌は艶めくように白く、小顔美人の少女は上目使いに金髪の女を見上げる。

 といっても金髪の少女もまた背丈は彼女と同じくらいだ。


「じゃー、しばらくはお友達だねー」


「お、お友達? いえ、私は……」


「真奈香、それとそっちの有徳の者だったか。休戦するのなら作戦会議と行かないか?」


 不意に声を掛けられた金髪の女が視線を向けると、そこには黒髪、黒スーツ、黒い手袋と靴といった出で立ちの全身黒づくめの男が日記帳をすらすらと書きながら声を掛けて来ていた。


「エンドよ。エンド・オメガ。あんたたちは?」


「そちらが寛大な者、上下真奈香。私はその付き添いで召喚された白滝柳宮だ」


「そぅ。まぁいいわ。とりあえず女神の勇者とやらを片付けるまで、休戦と行きましょうか。良いわよねジルベッタ?」


 つい先ほどまでントロ同士の闘いということで茂みに隠れていた少女が恐る恐る現れる。


「あら、可愛い」


 真奈香の言葉にびくりと肩を振るわせる彼女はたたたっとエンドに駆けよると、彼女の背後に抱きつくようにして真奈香から隠れた。


「ステラだったか。勝手に決めさせて貰ったが、構わんな?」


「神からの声となれば下手に争う訳にも行かないわね。天罰は避けたいわ」


 赤髪の獰猛そうな女が茂みから現れる。

 腰元にはサーベルを佩き、凛とした佇まいで歩く姿は軍人のようだが、れっきとしたドラグニアの姫にして魔女である。


「よーし、女神の勇者たちを倒して有伽ちゃんの元へ帰るぞーっ」


「私はお兄様の元へっ」


「……おかしいな。お守相手が増えた気がするのだが」


 柳宮は思わず視線を空へ。どんよりとした黒雲に覆われた空は、彼に一抹の不安を呼び起こさせた。


 ---------------------------------------


「フオォォォォッ!!」


 老紳士の杖が無数の突きを放つ。

 対戦しているのは小学生位の少女である。


「あはははは。当ってないよお爺ちゃん。威嚇なの?」


 焦った顔というよりは辛そうな顔をしながら牽制を行う老紳士に、少女はどうしようかなぁっと余裕な顔をしながらロリポップなステッキを振るう。


「よーしレウちゃん。フローシュちゃんからパクッた魔法行っちゃおーか! 「そこまでの相手とは思えんな」」


 少女の口からは無邪気な声と凛とした声が同時に漏れる。

 右に天使の羽、左に悪魔の蝙蝠羽。光と闇の瞳を笑みに変えながらひらひらとしたスカートをはためかせ、少女は余裕で回避して行く。

 今のところ彼女は一撃たりともダメージを受けていない。


「ホーリーアロースプレ……」


 ―― ントロ戦争してくれてる各領地の魔女に告げまーす。この世界に邪神の加護を受けた女神の勇者を名乗る存在が、えーっと 五体? 出現してまーす。放置すると世界が崩壊するのでントロ戦争を一時中断、女神の勇者を狩っちゃってくださーい。女神の勇者が居なくなったらントロ戦争再開しまーす ――


「およよ?」


「ふぉっ!?」


 同時に攻撃を中止する。

 思わず互いを見つめ合う少女と老人。

 老人は何を思ったか懐から包み紙を取り出す。


「お嬢さん、飴をあげよう」


「え? うん。ありがとうお爺ちゃん」


 思わず受け取った少女は飴を口へと放り込む。イチゴ味だった。


「阿呆か茉莉! そんな得体の知れん飴吐き出せ! 「えー、イチゴ味でおいしーよレウちゃん」敵からの施しを受けるなアホーっ!!」


「ふぉっふぉ。やはり幼女には笑顔が似合いますな。幼女とは闘うべきではないのです」


 頭を撫でてきた老紳士に少女は笑顔から納得できない顔に代わる。


「チィッ。全く茉莉は無警戒過ぎていかん。おい風変わりな者よ。一応聞いておくが、一時休戦ということでよいのだな?」


「小父様、よろしいですか?」


 老紳士に声を掛けたのは彼の魔女エルフリーデ・ロシナンテ・ベルダンディ。幼い少女にこくりと頷き老紳士は告げる。


「全ては幼女の笑顔の為に。愚かな女神の勇者とやら、私が倒してみせましょうお嬢さん」


「じゃー競争だね。茉莉がんばっちゃうんだから。ねーシャルちゃん」


「仕方ありませんわね。休戦しましょうかエルフリーデ。放っておいてもわたくしの勝利のようでしたし、ここは私が折れておきますわ。改めて、シャルロッテ・レムト・フィラレンツィアはエルフリーデ・ロシナンテ・ベルダンディと協力して女神の勇者を殲滅することを約束しましょう。上品な者の名に掛けて」


 ふふ。と笑みを浮かべるシャルロッテは、まさに上品に口元を隠すのだった。

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