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序・神々の苦悩2

「それじゃ、裁判長の名前も決まったことだし、マロン、報告」


「はいはい。んじゃぁあちしんとこから報告していきますかにゃ。まず、あのクソ女神があたしたちの目を盗んで捕まる直前に異世界から片っ端から召喚してウチらの世界に送りこんだ勇者は合計50人。これは向こうの過去ログ見てわかったことですわ」


 一人、自分の名前に感動を噛みしめる裁判長を一瞬皆が見たあと、マロンに注目が集まる。


「あちきが管理してるのはもともとの管理世界であるマロムニア。そしてナーガラスタが管理していた世界から皆で緊急避難させた下位住民が存在する星、こっちはいつのまにか、アンゴルモニカって名前が付いてたからそのまま代用してますわ。ンで、どうも現れた勇者は過去ログから見て8人。マロムニアに4人、アンゴルモニカに4人ってとこだにゃぁ」


「ナーガラスタと言えば、貴女を恨んでいた同位存在でしたね。地球で斃れたのでしたか?」


 ミルカの確認にマロンが頷く。


「まー、あの蛇野郎はこの際関係はないからほっといてだに。その地球にも勇者が10人程観測出来たわけですわ。地球の神様にさっき報告してみたんだけど、俺、あの星滅んでも気にしないから適当にしといて。とかいわれたんだにゃぁ」


「あの神、ホントやる気無いな」


「意図した世界から逸脱してしまったせいで地球に見切りを付けたのでしょう。そのせいで私達が自由に降りられる上にやたらめったら召喚で引き抜かれても文句も言わない都合のいい世界として名高くなってしまって。世界創造の際、模倣する同位存在が後を断たないんですよ」


 マロンの言葉に裁判長が呆れる。グーレイが捕捉するように告げると、皆がそうだったなと納得してしまった。


「んで、あちしの世界に関してはあちしが学校生活送ってたクラスメイトの面々が動いてくれるから問題ないとして、他の皆さんの世界ですにゃ」


「グレイシアには8人ですね。人数的にはマロンさんと同じですか」


「あちしらクソ女神の前に率先して姿現してたからねぇ。恨み買っちゃったかも?」


「本当に駄女神ですねあなたは……」


 呆れたグーレイになんですとぉっと憤慨するマロン。どうでもいいのでミルカが続きを促す。


「ペンデクオルネで確認されているのは3人だな。俺の天の声で誰かが討伐に向かってくれればいいのだが」


「ミルカエルゼはその分安全かしら? 8人の勇者が観測されてるけど、こっちはマロンのクラスメイトであるF・T君たちがいるから。多分人数がマロンやグーレイのとこと同じなのは彼らが居るからでしょうね」


「へ? なんで薬藻っちがそこに?」


「だってクラリシア城があるの私の世界だし」


 衝撃的事実に愕然とするマロン。クラスメイト武藤薬藻を国王とするクラリシアのメンバーは今回の闘いで切り札となる存在だと思っていただけに、マロンとしてはむしろ不利になる現実だった。

 彼らがミルカエルゼに拘束されてしまうということは、異世界を転移出来るスキルを持つクラスメイトや、チート的存在が各世界の援軍へと行けなくなるということである。


「マイノアルテはーちょーど魔女戦争が始まったところなんだよねー、とりあえず停戦させて女神の勇者討伐優先って伝えといたよー。こっちは5人来てまーす」


「魔女戦争?」


「うん。地球でさー、人気ゲームに聖杯だかなんだかのあったじゃーん。アレやりたくって。魔女と精霊としてントロの召喚で生存した最後の一人の望みを叶えてあげようかなーって」


「ントロが何かはわかりませんが、異世界人を無駄に殺すのはサンニ・ヤカーと変わらないのでは?」


「あ。それは大丈夫。私の世界で死んだ場合蘇生されて元の世界に強制送還になるように決まってるんでー異世界人は死なないんだよ。死ぬのは魔女だけー」


「……あのー、きのせいですかにゃー、見覚えのある顔がいらっしゃるんですが……」


「んー? あ、ホントだ。でもほら、ミルカからは許可取ってるしー」


「うわ、私の戦力がっ!?」


 返せ、返さないとぎゃあぎゃあ言い合いを始めた二人の女神を放置して、マロンはモルグを見る。


「モルグドラハだっけ、そっちは大丈夫?」


「うむ。3人だけのようだ。先程声掛けを終えたのだがな。運のいい事にラナリア勢がこの世界に来ていた」


 ラナリアといえば地球で日本を席巻した秘密結社である。


「武藤風音がいたぞ。武藤薬藻の妹、確かセブンズスパイダーだったか?」


「あー、あっちのメンバーか。ラナちゃんいるんじゃ女神の勇者共の方が可哀想かも?」


 こっちも問題無さそうだな。とマロンは裁判長を見る。


「そっちはどっすか?」


「うむ。声掛けは終わった。あとはどの程度の被害で収まるかじゃな。おぬしのクラスメイト程ではないがこの世界にも頼りになる者はおるんじゃよ。ついでにな……その言いにくいんじゃが……」


「ん?」


「アンゴルモア、見つけちゃった」


 てへ。と可愛らしくいう厳つい老人。殴り殺してやろうかと一瞬殺意を覚えたマロンだが、ふーんと聞き流す。


「そう言えばあいつまたどっか強制転移させられてたみたいだけど、裁判長の世界にいたんだねー、不幸に好かれたクラスメイト」


 アンゴルモアはマロンのクラスメイトの一人である。もともと名前は存在したのだが、み……名前が出て来ない程に皆の記憶に残らないためアンゴルモニカの住人に付けられた神の名前であるアンゴルモアが彼の名前として定着しつつあった。

 不幸なせいか様々な世界に飛ばされているようで、今は裁判長が管理する世界に居るらしい。


「グーレイさんや、そっちは大丈夫?」


「ええ。先程ウチの懐刀アルセ姫護衛騎士団というパーティーメンバーが動き出してくれました。彼らからの報告によると女神の勇者を名乗る存在を既に一人倒しているそうです」


「え? もう?」


「ええ。冒険中に遭遇して倒したとか」


 優秀らしいグレイシアの下位存在たちに思わずいい奴いるなぁと物欲しそうな眼をする神々であった。

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