地球5
「ぬはははは。なんだこの雑魚共は!」
強烈な魔法炎がゾンビの群れに打ち込まれる。
爆散と共に飛び散る肉片。
迫るゾンビ達を迫撃砲のような連撃が駆逐していく。
魔法を放っているのは一人の女だった。
最近覚え始めた流行りのファッションを取り入れた服装の彼女は、側頭部から魔族特有の角を生やしていた。
「見るがいい我が夫よ! 余のこの無双具合。ゾンビなどという雑魚共は早々駆逐してくれるぞ!!」
高笑いをする女、ユクリティアッド・ミークラトス・フレイアスティラはつい先日ラナリアに婚姻届を届けてきたところであり、夫となった河上誠に視線を向けた。
「行くぜ、ジャスティス。砕け、セイバー!」
彼は今、赤いスーツの正義の味方と化し、ゾンビの群れに対峙していた。
ラナリアに所属する正義の味方の一人であり、今回ゾンビ殲滅戦に有志で参加したのだ。
「必殺! ギルティーバスタ――――ッ!」
手にしたセイバーを振り切る。光を纏ったセイバーより撃ち放たれた光が放出される。
必殺の一撃が国道を走り抜ける。群がるゾンビの群れを一瞬にして消し飛ばし、彼方まで飛んで行った。
「くぅ、たった一撃で余の撃破数を上回った、だと!?」
「言ってる場合か、マイツミーアたちが避難民を隔離するまで戦線維持しねーとなんねーんだからな。ユクリ。魔法使い過ぎてディアリッチオ人形戦みたいに最後見学って訳にゃいかねーからな」
「言われんでも分かっておるわ! だから最低消費の広範囲火炎魔法を使っておるのではないか。ま、全く、素直に褒めてくれてもいいではないか。いっつもいっつもマイツミーア撫でまくりおって。テーラとペリカばっかり可愛がられておるしラオルゥ様はべたべたべたべた。にっくき萌葱の奴とはいい雰囲気だし、余だけ除者ではないか。正妻だぞ。ちょっとは……」
「ブツクサ言ってる暇があるなら迎撃頼む」
「ああああああっ!」
河上誠、またの名をジャスティスセイバーが告げた瞬間。頭を掻き回して叫ぶユクリ。
怒りに任せて迫り来るゾンビ軍団を爆炎魔法で駆逐していく。
「それもこれも……貴様等のせいだからなーっ」
完全な八つ当たりでゾンビに魔法を打ち込むユクリ。その間に力を溜めたジャスティスセイバーが必殺の一撃を打ち放ち、ゾンビ溜まりを消し飛ばす。
「クソ、切りがない」
「元を断たねば際限なく増えそうだな。我が夫よ、行くか?」
「そうだな。ちょっと……待て。何だあいつは?」
元を倒しに向かおうとしたセイバーだが、不意に、揺らめくゾンビの群れの間に、一人の男が居ることに気付いた。
ゾンビに囲まれているのにニヤついた笑みを向けて来る男に、警鐘が鳴り響く。
「ユクリ、悪いがしばらく一人で持ちこたえられるか?」
「抜かしおる。我は魔王ギュンターの一人娘、ユクリティアッドであるぞ? 行くがいい我が夫よ。赤き魔王ここにありと女神の残党どもに教えてやるがいい」
ギルティ―バスターをもう一度打ち放ち、ゾンビの群れを引き裂いたセイバーは、男に向かって駆ける。
ゾンビ達が群がるより早く、必殺により出来た道を駆け抜け、男に剣を突きだした。
先手必勝の一撃は、しかし唐突に消えた男のせいで空ぶり、背後に居たゾンビに突き刺さる。
「ちぃっ」
囲まれる前に飛び上がる。
さらにそのまま空中で停止したセイバーは、真上に存在する男に視線を向けた。
「ほぅ、空飛べるのか赤い魔王」
「テメェ、あの女神の勇者って奴か」
「翼の勇者だ。よろしくなぁ!」
バサリ、背中に生えた翼がはためく。
まさに天使のように空中を自由に移動する男は、翼を羽ばたかせ羽根を飛ばしてきた。
当る気はないと回避旋回しながらセイバーを構える。
ジャスティスセイバーは二度目の異世界移動の際、神々の一人から飛行能力を授かった。
異世界から戻ったあともその能力はリセットされていないため、今では重宝する能力だ。
さらにサンニ・ヤカーの世界で自分の正義を見付けた彼は、女神の勇者等に負ける気はなかった。正義力を攻撃力へと変換し、強固なセイバーを作りだす。
羽ばたく翼の勇者に向け飛翔する。
「行くぜ、ジャスティス。迸れ、セイバー! 必殺! ギルティーライナ――――ッ!」
剣に溜めた正義力という名の光を一点に集束、放射する。
線となって飛び出した光が翼の勇者へと放たれるが、旋回した翼の勇者は軽々躱してしまった。
「はは、遅ぇ遅ぇ! テメーみてぇな雑魚正義の味方様に何とか出来る程俺様は甘くねーんだよ。死ね!」
叫ぶ翼の勇者。その口に光が集まる。
「いやいやいや、嘘だろオイ!?」
咄嗟に回避行動に移ったセイバーの直ぐ横を、口から放たれた怪光線が飛んで行く。
「お、お前翼の勇者じゃねーのかよ!?」
「翼っつったら怪獣ものだろが! 口から光線尻尾で破壊、巨大化もしたかったがそっちは巨大化勇者に取られちまったからな!」
「どうでもいいんだよそんな事は!」
ジャスティスセイバーにとっては翼の勇者討伐が出来ればそれでよく、彼の能力についてなどどうでもいいことだった。




