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アンゴルモニカ1

「なんやぁ、久々に来たきぃするわ」


「実際ここ数年帰ってませんでしたからね。子育て優先でしたし」


 松下城へとやってきた手塚至宝、松下星廼、網走紅葉、大井手真希巴の四人は、松下城を見上げてしばし呆然としていた。

 しばらく来ない間に随分と様変わりしたようだ。

 本来日本に存在するような瓦屋根の城である筈の松下城は、グルジア民の魔改造により監獄かと思える程の厳重警戒態勢が敷かれ、無数のライトと砲塔に彩られていた。

 もはや普通に城と呼べる存在ではなくなっている。むしろ要塞とでもいうべきではないだろうか?


「で、皆集まってんの?」


「そらないでしほうん。おとんの話やと皆呼ばれてったみたいでなぁ。各地で勇者探しとん」


「この世界に来ているのは四人ということですが、世界自体が狭いせいで隠れきれるとは思えません。早急に見つかる事でしょう」


「そっか、じゃあ早く済みそうだな、終わったら他の世界フォローに行こうぜマッキー」


「う、うん。お手柔らかにね、しーちゃん」


 赤い髪に小柄な背丈。マスクメロン大の胸を鎧で隠した手塚至宝に、ソバカス娘はあははと笑う。

 今回至宝に同行した真希巴は正直な話活躍できるとは思っていなかった。

 魔法少女という特殊な正義の味方である彼女は、既に学校を卒業した時点で、否、子供が出来た時点で魔法少女ではなく魔法奥様とか魔女と呼べる存在になっているのだ。そのため変身した姿も痛々しい気がしてあまり好きではなかった。それでも親友と呼べる至宝が真希巴も行こうぜ。と誘ってくれたのだ。ここは少しでも頑張って彼女の役に立つべきだろう。


 頭部から二本の角が生えた黒髪ストレートの松下星廼は一番最初に松下城から視線を降ろすと、隣に佇む忍者巫女の紅葉を見る。

 同じ黒髪だが、長い髪は束ねられ、ポニーテールになっている。人を信じず寄せ付けない瞳は今も周囲を探りつつ、彼女にとっての姫、星廼を守ろうとしているのが分かった。


「さぁて、ここで城見とってもしゃーないし、ウチらもおとんとこ呼ばれよかー」


「だな。宝蔵さんがどれくらい元気か見に行くか」


「おとん無駄に元気なったからなー。今度孫見せたりにいこかなー」


「薬藻、殺されんじゃねーのそれ?」


「復活するから問題はないんえ」


「折角ですからそのままコンクリ詰めにして海に放流してやりましょう姫」


 薬藻に対して酷い対応だな。と思いながらも至宝は紅葉に視線を向ける。

 薬藻ハーレムの中でも彼女は特殊だ。姫である星廼が薬藻を気に入っているからクラリシアに来ているらしいが、自分の身体を許す気はないらしい。

 星廼から命令されれば子作り位はするとは言っているが、おそらく彼女が嫌うだろうそのような命令を星廼が下すことはないだろう。

 そしておそらく、その命令が下されたが最後、紅葉は自分たちの前から姿を消し、二度と会うことはなくなると思われる。

 彼女だけは心底薬藻を嫌っているのだから。


「あんま薬藻虐めてやんなよ。あいつ苦労してんだから」


「いつも女に追い回されている姿しか見ないぞ?」


「それが虐めだろ」


 溜息吐いて、至宝は星廼の後に続く。

 紅葉と真希巴は二人の後をしずしずと着いて行く。


「あ、あの、私はこの世界まず来ないからよくわからないんですけど、強い人っているんですか?」


「うむ。本当であれば我々も来る必要が無かったかもしれんくらいの猛者はいる。しかし何事も絶対はないからな。相手のスキルも分からん以上助っ人として来る意味はある」


「な、なるほど……」


 真希巴と紅葉の会話はここで終わった。

 後は無言で四人が歩く。

 真希巴は何か会話を、と思うのだが、誰も喋る気配が無かった。


「ここや」


 そうこうしている内に最上階へとやってきた彼らを二人の老人が出向える。

 丁度将棋を打っていたらしい、松下宝蔵と北条貞経範純は向い合うように座っていたが、四人に気付いて顔を向けた。

 宝蔵が立ち上がり、彼らに近づいたのに気付き、範純は将棋の台座をクルリと入れ替える。

 あの野郎ズルしやがった。至宝は思ったが指摘はしなかった。


「おお、我が娘よ、よく来てくれた。少し見ない間に綺麗になったのではないか?」


「や、やなぁおとん。そんな言われたら折ってまいそうやんっ」


 頬に手を当てハニカム星廼。出て来た言葉に皆が顔を青くしていたが、彼女は気付かず身体をくねらせる。


「よう来たよう来た。とりあえず座りなさ……んん? 北条の、なぜか儂の方が王手になりかけとるん気がするんだが……これ逆……」


「ほれ、主の番だぞ、さっさと打ちんせ」


「北条、貴様っ」


「なんじゃ松下っ!」


 突然老人二人が取っ組み合いを始めた。話に着いて行けない至宝たちはただただ呆然と二人の喧嘩を見ているしか出来なかった。

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