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エピローグ・天界

「戻って来て、しまったわね」


 テナーことテナー・ピタは地天使である。

 本来は任務終了時に天界に戻らなければならないのだが、任務続行が難しくなったため天界に戻ることを諦め地上で生活する事を選んだ天使だ。

 堕天することも無く天使として活動することもやめ、地上で人と同じ生活を営んでいた。

 その時に契約を結んだ女性も今は隣にいる。


 自分と契約したせいで天界に連れ去られたようだ。

 元の世界に戻してやりたいが、戻り方もわからない。

 仕方無いので四大天使長の元へ向かおうと決意する。

 任務放棄で天界に戻ってしまったのだ、最悪ラグエル辺りに消滅を告げられるかもしれないが、せめてマスターだけは地上に戻せるように交渉するつもりである。


「にしても、ちょっと来ない間に天界も様変わりしているわね」


 忙しなく動きまわる新人天使達を見てテナーは困ったように首を捻るのだった。




「あーもう、忙しいッ。四大天使の復活はまだかーっ!」


「ハニエル様、地上で任務中だった天使たちが訪ねてきてますっ」


「全員天界待機。天界と人界の繋がり断たれてるから戻れるまで待機するよう言って!」


「了解しました!」


 新人天使が去っていく。

 ここ、天使最高位が座する神殿では、今ハニエル、ラグエル、ラドゥエリエルが忙しなく書類と格闘していた。

 四大天使長は先の天魔戦争により消滅してしまい、今は再誕を待つ状態。

 他にも重要な大天使が軒並み消滅してしまったので天界は火の車であった。

 それだけならばまだ廻せた日々の業務も、天界と人界の繋がりが断たれた今となってはそちらの対応に煩わされ、さらに戻ってきた天使たちへの指示までしなければならない。


「ええいフローシュ、フローシュはどこよぉっ、今は猫の手でも借りたいのにぃ」


「念話すればどうですか?」


 新たな天使を産みだしながらラドゥエリエルが告げる。

 新人天使見習いでも今は欲しい状態だ。生まれてすぐで悪いとは思うがブラック企業で働いて貰う。


「念話、そうね、念話ならっ。フローシュ聞こえる!? 今どこにいるの、さっさと帰って来なさーいっ」


『ほわっ、ハニエル様ですか? えーっと、今ラナリア本部に居ます。天界には……多分帰れない、ですかねー』


 あははと苦笑いするフロシュエルの念話が帰って来た。


「はぁ!? ラナリア本部……って、あんた地球にまだいるの!? ナイス、ナイスよフロシュエル」


 一瞬文句言いながら早く帰ってこいと無茶振りしそうになってハニエルは気付いた。


「天界門を開きなさいフローシュ。そっちから開けば繋がる筈よ!」


『天界門……ですか、了解です、今は大団円中なのでもう少ししてから探します』


「ちょぉ!? こっちを後回しなのぉ」


『えー。だってめんど……これからの方針を話し合ってるのでこっちも重要です』


「今、面倒って言った。絶対言ったぁーっ。フロシュエルのバカーっ」


 半泣きで叫ぶハニエル。

 意味は理解できなかったが、やってきたテナー・ピタは踵を返して神殿を後にした。

 どうやら四大天使長は不在で、地上から戻った天使は天界待機で御咎めなしのようだ。


「む、テナーか? テナーではないか」


「げっ」


 書類から顔をあげたラグエルに見つかった。

 逃げようかと思ったが観念して彼女の前に向かう。


「お久しぶりですラグエル様」


「うむ。壮健なようで何よりだ。言いたいことは山程あるし、裁きをしてやりたくはあるが、今は神すらも不在の非常時、悪いが書類仕事を手伝え、貴様の罪科を軽減してやる」


「それはいいけど、私と契約した人間がここにいるの」


「……は?」


「多分他の天使と契約してる聖戦士とかも天界に連れて来られてるわ」


「ああああああああああああああああああああっ」


 書類が盛大に舞った。

 さらに増えた問題に、ラグエルが頭をかき乱しながら御乱心召されたのである。


「きゃぁぁ!? ラグエル何してんの!?」


「もうやだっ。もうやだぁ、私おウチ帰るぅっ」


「あなたの家はこの天界ですっ。ええい、そこの天使達、ラグエル押さえてっ。この非常時にラグエルまで壊れたらあんたたちの仕事増えるわよっ」


 これ以上仕事を増やされたらたまらない。っと天使たちが大天使を必死に押さえる。


「やーだーっ。おウチ帰るのぉーっ」


 じたばた暴れ出したラグエルのせいで、しばし天界の業務が滞ったが、皆の大健闘もあり徐々に平穏を取り戻すのだった。

 その天使たちの書類整理に、何故か人間が一人一緒になって処理を任されていたが、彼女の何故自分まで? という疑問は、契約者のテナーですらも答えられる質問では無かった。

 フロシュエルにより地上への道が再開通するまで、彼らはしばし、書類整理に明けくれるのだった。

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