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エピローグ・ミルカエルゼ

「はぁ~、い~や~さ~れ~るぅ~」


 作戦会議室に集まった面々は、薬藻の上に座って抱きつくヌェルティスにジト目を向けていた。

 さすがにしばらく異世界に飛ばされ辛い思いをして来たということもあり、皆が許したとはいえ、自分の思い人と思い切りイチャついているのを見せられていい気な女は居なかった。

 そもそもがここの面々は我が強い存在ばっかりなのだから、皆不満を爆発させる寸前まで我慢中である。


 その均衡は既に破れる寸前で、コップに満杯まで張り詰めた表面張力で保たれている水の状態。

 一滴でも刺激があれば途端に溢れる危険な状態であった。

 その空気を一人察している薬藻はヌェルティスにスンスンハスハスされながらも青い顔で虚空を見上げていた。


 あ、今日俺死ぬんだ……

 そんなことを呆然と考えている。

 針の筵となった現実から逃避しようとしていると、その一滴、否、さらにコップにバケツの水を零したようなサプライズイベントが出現した。


「今帰りました、こちらは大丈夫でしたか?」


「可憐が活躍したと聞いたぞ、頑張ったな」


「菜七さん!? あ、ありがとうございますっ!!」


 なぜか立ち上がりお礼を告げる可憐。

 戻って来たのはマロムニアに派遣されていたイチゴと菜七、そして……オキュペテー。

 え? と薬藻が現実に意識を戻した時には、ばさりと飛翔したオキュペテーが薬藻に飛び込み、ヌェルティスに激突。弾き飛ばして自分がすっぽり収まった時であった。

 そして薬藻の頬をぺろぺろ舐めて来る。


「おぶぅっ!? 何をするか貴様ッ! ぬおお!? なんか見覚えのあるクソ鳥ではないか!」


「ケーッ!」


「こやつ儂を威嚇しおったか!? おのれ貴様、なぜここにっ」


「あー、はは。マロムニアで薬藻さんに恋してたオキュペテーさんです」


「無理矢理付いて来てな。相変わらずモテモテだな武藤」


「いや、ちょ、まっ」


 慌てる薬藻、膨れ上がるボルテージ。殺気が無数の場所から立ち上る。そこへ……


「よー、今帰ったぜ!」


「はー、どないしょなー、またライバル増えてもうたわぁ」


「お許しくださいませ星廼姫様。私、絶対にあの方に嫁ぎますから……ね? うわぁ……」


 さらに戻ってきたアンゴルモニカ勢。

 早速目的の薬藻に嫁入り宣言をしようとした陽芽姫。鳥型全裸娘にぺろぺろされてる男を見てちょっと引いた。


「ええい、離れろエロ鳥がぁ!」


「クェ、ェ」


 ぎゅむっとオキュペテーの頬を押して自分が割り込むヌェルティス。負けじと頬で押しかえすオキュペテー。

 男冥利に尽きるモテ具合に、薬藻は自身の生命が終わったことを悟った。


「そろそろ、お仕置きの時間かしらね」


「なんやぁちょっと離れた間に知らん女が増えとんなぁ?」


「あれれぇ、薬藻さん、オキュペテーさんは仕方無いですけど、なんで他にも女性が増えてるんですか? あとヌェルティスさんは邪魔なので消えてください」


「あーあ……こりゃ恒例の大戦争勃発かなぁ」


「ほら、ノエルさんレミーラさん、雅さん、退避しますよ」


「姫、奴の殺害なら喜んで手伝いますよ」


「あー、陽芽姫、とりあえず退避だ。話は後にしようぜマッキーもそれでい……あ、参戦すんのな?」


「クアニは退避、冬子、安全地帯教えて」


 至宝たちの帰還を皮切りに、大乱闘スマッシュ嫁ーズと化したネリウ達による殺し合……キャットファイトが始まった。

 当然の如く巻き込まれた薬藻はフィエステリアに変身して脱走。

 ドア付近にマルモ化して逃げ来た彼は、誰かの足にこつんと当る。


「おお? なんじゃ薬藻よ、まぁたいつもの日課かの」


 聞き覚えのある声に、薬藻は人型へと戻り姿を確認する。


「葛之葉? 帰って来たのか」


「うむ。地球も一段落したのでな。それより薬藻よ、なんか遠くの国から国が隕石の流星群で壊滅的被害受けたから支援してほしいと支援要請が各国に飛んで来とるらしいぞえ? この国は行くのかや?」


 葛之葉の言葉に、キャットファイトが一時中断される。

 オキュペテーの髪と頬を引っ張るヌェルティスも、ヌェルティスの頬を両側から引っ張っていたオキュペテーも、重力魔法で鎮圧しようとしていた真希巴も対抗して大魔法を使おうとしていたネリウも、全員が視線を葛之葉へと向ける。


「なんでも流星群で城が壊滅状態で王族もほぼ死滅、たまたま外に出ていた第二王女が陣頭指揮を取って立て直しをしているそうだが、支援するなら対価をよこせという周辺国家ばかりで絶望中らしい」


「あー、そうだな。流石に行かない訳にはいかないか。こちらは対価を要求せずに支援要請に応じよう」


 そもそもの原因がこちらにあるので流石に罪悪感が湧いた。だから行こうと思ったのだが、女性陣は別の場所に反応した。


「またべつの女の尻おっかける気かこのエロ怪人ッ!!」


「違ぇからっ!?」


 ネリウの言葉に心から叫び返す薬藻であった。

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