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???・女神の勇者反乱事件終息3

「は? 管理者?」


 サンニ・ヤカーは思わず相手を二度見する。

 黒の聖女に抱かれている赤ん坊が、管理者。

 あんな弱そうな生物が管理者?


「馬鹿にしてるのっ!?」


「何を言っているのか分かりませんが?」


 心外だ。と小首を傾げる黒の聖女。


「そんなのが管理者って、頭おかしいんじゃないの!?」


「貴方に言われたくはないですね」


 クスリ。黒の聖女は不敵に微笑む。


「そもそも、今回私達が来たのは貴女のせいなんですよ。全く、子供の世話だけしてれば充分だったのに」


 ぶつぶつと不満を漏らしながら、黒の聖女はグーレイの隣に立つ。


「あの、黒の聖女……なぜここに? それに管理者とは……」


 先程エアリアルに聞いたばかりだ。

 これ以上は管理者が出てくる。しかも、エアリアルは彼と出会った事があり、今は赤ん坊状態だと言っていた。

 つまり、黒の聖女が抱いている赤子は、管理者である可能性はかなり高い。


「このまま放置して居れば女神の権能を使いこの世界を破滅に導きますからね。監視者が結論出す前に上司がわざわざやってきたわけです。迷惑掛け過ぎですよねヤカーさん?」


「ふ、あははっ。死ねッ」


 黒の聖女の笑みを受け、笑い返したサンニ・ヤカー。突如豹変して全力の一撃を叩き込む。

 しかし、その一撃は不可視の壁に当り消し飛ばされた。


「くっ!」


「無駄です。私自身に貴女をどうこうできる能力はありませんけど、この人がわざわざ来てしまいましたからね。どうでもいいけど目に余るから消しとこう、だそうです」


「はぁ!? 私の相手がどうでもいい? 気まぐれで来たってこと!?」


「貴女もよくあるでしょう? 気まぐれで下位存在を召喚して、気まぐれに褒美を与えて、気まぐれにプチッと殺す。それを貴女がされるだけのこと」


「だぁー」


「あら。そんなところがあるんですか?」


 管理者の言葉に黒の聖女が意外そうな顔をする。


「よかったですねサンニ・ヤカー。貴女を0次元にご招待するそうですよ」


「……零?」


「ええ。始まりにして完結している世界。0次元。そこはその次元のみで完結しているため本来は向かうことはできないのですが、管理者様は送るだけならできるそうで。もちろん、出ることは不可能ですけど」


「ふ、ふざけるなっ。この私が、そんな訳のわからない次元に……」


「だぁ」


 管理者が力を行使する。

 危機を察したサンニ・ヤカーが慌てて逃げるが、牢屋内で逃げ場など内に等しい。そもそも彼女が逃れる術などないのだから無駄な努力であった。


「やめ……」


 逃げようとしたサンニ・ヤカー、その存在が、二十一次元世界から消える。

 その光景を見せつけられたグーレイは、ただただ戦慄するしかなかった。

 ただの転移ではない。されども見知った強制転移でもない。

 訳の分からない法則を多分に使った強制退去。グーレイにはその力の一端すらも理解できなかった。


「何をしたかは、聞いても無駄ですかね?」


「はい。管理者が行うことは私にも理解のおよばない行為なので。とにかく、これで女神? サンニ・ヤカーがこの世界や別次元に迷惑を掛けることはないでしょう」


「信じて、よいので?」


「0次元とはそういう場所です。その次元単体で完結した場所なので入ることはできても出ることは不可能。死ぬことも無く生きる意味もなく、ただそこにあるという概念のみが存在する世界です。彼女が脱出出来る可能性もなく、救いだす術もない。0次元に入った瞬間、その内部の全てが0になるのですから」


「……とりあえず、理解不能だということを理解しました」


「それでいいと思います」


「しかし黒の聖女さん、貴女は確かゲルムリッドノートに吸収され魔法となったのではなかったですか?」


「王利さんがあの魔本を消去してくださったおかげで、過去に戻ってあの魔本に吸収される筈だった人たちが戻ったみたいです。ただ、私はこの世界に転移してしまったせいか閉じ込められたようで、過去や未来に戻れなくなってしまいました。仕方無いので管理者さんに二十五次元で儂の世話してくれん? と言われて世話してます」


「そ、そうですか……」


「本当は王利さんの元に向かって抱きつくくらいしてあげたいんですけどね。未来の女がしゃしゃり出るにはあのバカップルぶりはちょっと……引きますね」


「ああ、アレはねぇ。別の星だから滅多に覗かないけど砂糖吐きそうになるね」


「だぁ」


「あら、もうお帰りですか? 仕方ありませんね」


 黒の聖女の胸をぽんぽんと叩く管理者。気付いた黒の聖女が困ったように小首を傾げ、グーレイに向き直る。


「ではグーレイさん。エアリアルさんにも釘刺されたようですが、あまり監視者を刺激しないように。私達が原因を取り除くより早く次元ごと消し飛ばされますから」


「肝に銘じますよ」


 苦笑いするグーレイを残し、黒の聖女と管理者が消え去る。

 彼女達を見送って、グーレイはふぅと息を吐いた。

 実感はあまり湧かないが、女神サンニ・ヤカーが起こした騒動は一応の終結を見せたようだ。

 被害はそれなりに出た。それでも全ての世界を守り切ることはできたようである。


「さて、最後の後片付けに向かいますかね」


 誰もいなくなった牢屋に背を向け、グーレイは立ち去るのだった。

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