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???・女神の勇者反乱事件終息2

「……終わった、のですか?」


「終わったよ。ほい、これはグーレイちゃんにあげよう。第二十一次元の皆にも言っといてね。あんまし調子乗るようだとこうなるよって。それに、今回は私がでたけどさー。多分次は管理者が出てくるよ」


 管理者。その言葉に、なぜか背筋がぶるりと震えた。

 グーレイは勇者だった手のひらサイズのキューブを受け取りエアリアルを見る。


「管理者……とは」


「次元の先に存在すると言われる存在。私も見たのは一回だけだけどね。今は赤ちゃん状態になってるのかな? もう数年は安全だと思うけどその先は老人から再誕するでしょうから、その後は危ないかなぁ。それよりも監視者の方が危険だけど。あまり危険思考人物多くして目を付けられないようにね?」


「わ。わかりました。肝に銘じましょう」


「うん、じゃあ私は帰るね?」


「はい。この度はお手数おかけしました」


 エアリアルがモルグドラハへと転移する。

 彼女が消えるのを見送ったグーレイは、ふぅっと息を吐いてキューブを見る。

 既に意思は無くなっているのだろう、しかし、まだ生きているというのは理解できてしまう。


「私に渡した理由は、見せしめですかね。仕方ありません、これを持って帰るしかありませんか」


 顔をあげて周囲を見回す。

 透き通る透明しかない世界は何処までも見えるようで何も見えない。光も闇も存在しないまさに真空の世界。

 第二十三次元があることを発見し、その力を追い求め、次元の壁を越えようとしたが為に二十三次元の住人の怒りを買って次元ごと滅ぼされた世界。


「この世界みたいには、なりたくありませんしね」


 グーレイもまた転移を行う。

 第二十一次元へと戻ってくると、丁度歓声が上がった。

 なんだ? とそちらを振り向けば、神々がこぞって地球を映したノートパソコンを見ながら結果オーライ、何もしてないけど憂いが消えた! と喜び合っていた。


「何をしてるんだか……」


 呆れた顔で溜息を吐くグーレイ。マロンが落ち込んだ顔で座り込んでいるのが気にはなったが、彼はやるべき役目があったので彼らを放置して牢屋へと向かう。


「ふふ、あはは。戻った。戻ってきたわっ」


 不意に聞こえてきたのはサンニ・ヤカーの声。どうやら牢屋内で一人笑っているようだ。


「女神の権能が全てっ。ああ、勇者たちは敗北したのね、でもありがとう。貴方達が死んでくれたせいで私の力が戻ったのよ。力が無かったから牢屋に入れられただけで権能は封印されてない。ふふ。これで私は……」


「逃しませんよ?」


「っ!? グーレイッ」


 全く、この女はまだ何かするつもりか。

 溜息を吐いてグーレイは彼女の前に姿を晒す。


「な、何の用かしら?」


「先程の独り言は全て聞こえましたので隠しても無駄ですよ。それよりも、これを」


 ぽーんとキューブを投げ渡す。

 思わず受け取ったサンニ・ヤカーはなんだこれ? と両手の掌に乗せてまじまじと見る。

 肌色の四角い立方体だ、気のせいか生温かい気がする、否、脈打っている?


「なによこれ?」


「第二十二次元に逃げ込んでた最後の勇者だ」


「あいつの遺物?」


「いえ。彼自身ですよ」


「は?」


 意味が分からずキューブを二度見して、慌てて投げ捨てる。


「気持ち悪っ、なんでこんなモノになってんのよっ」


「調子に乗り過ぎたんですよ。高次元生命体が出てきました」


「……は? 高次元生命体? それって私達のことじゃない」


 意味が分かっていないサンニ・ヤカーにグーレイは溜息を吐く。


「私達にとっての高次元生命体ですよ。次は、ないそうです」


「は? な、何を言って……」


 意味がわからない。そう告げつつも、本能的に理解した彼女は、キューブに視線を向ける。

 これ以上、下手な復讐をすれば。上が出てくる可能性がある。

 その現実に、思わず喉を鳴らす。


「あ、ありえない。ありえないわ。そんな存在がいるのなら今まで出て来なかった理由が……」


「第二十二次元の滅んだ理由、お忘れですか?」


「うっ……ふ、ふふ。なら、なら私を消すためにこの次元の奴等全員も道連れにできるのかしらねっ」


 壊れたように笑うサンニ・ヤカー。

 心中を心に決めたような笑みに、グーレイの危機感が募る。

 彼女にこれを告げるのは早まったか?


「女神の権能全てが戻ってきた私なら、そのくらいは……」


「いいえ。貴女はここで終わりです」


 ゾクリ。

 つい直前までそこには誰も居なかった。

 グーレイとサンニ・ヤカーだけの筈だった。

 しかし、瞬きすらしていないのにその女はいつの間にか側に居た。


 赤ん坊を抱いた黒い髪の女。

 聖女然とした姿の女がそこに居た。


「な、なによあんた!?」


「初めまして、グーレイ、サンニ・ヤカー。私は今黒の聖女と名乗っています。それとこちらは、『管理者』です」


 クスリ、柔らかな笑みを浮かべ、黒の聖女が管理者を撫でながら告げた。

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