地球 ・ラナリア最終決戦8
「ハーちゃ……」
伸ばされた手を掴めなかった。
周りに居た魔法少女たちが次々と消えて行く。
意味がわからない中、すぐ前に居たスプラッシュみゆみゆが咄嗟に手を伸ばして来た。
気付いた時には遅かった。
手を伸ばそうとした次の瞬間には彼女が消え去ってしまった。
「あ……」
力無く、その場に座り込む。次はきっと自分だ。自分も消されるのだ。
だが、そう思った次の瞬間、彼女の周囲に檻のようなモノが出現した。
びくりと身体を揺らし、ゆっくりと前を見る。しかし、景色は変わらない。
空から天の声が降ってくる。
どうやら地球上の超人が全て消えてしまったらしい。
残っているのはラナリア本部に侵入したメンバーと、宇宙に居るメンバー、そして、自分ただ一人。
自分、一人だけだ。
魔法少女はもう、誰も残ってない。
彼女の知り合いはもう、誰もいないのだ。
自分だけが、残ってしまった。
「あ、ああ……なんで、なんで私だけッ、どおしてっ! みゆみゆを残してくれなかったのッ、神様ッ、なんでっ」
思わず叫ぶ、誰にも向かえない。まさに神を恨むしか出来ない心からの慟哭を、聞く相手も無しにあらん限り叫ぶ。
神々は己の事に夢中で彼女の叫びを聞き届けることも無かった。
「あああああああああああああああっ!!」
気が狂いそうな思いで地面に拳を叩きつける。
意味がわからない。何故皆が消えたのか、死んでしまったのか、どこかに転移したのか、生きているのか。何も分からない。自分一人だけが取り残された。
その空しさに、少女はただただ嘆きを発し続けるのだった。
地球で少女が失意に暮れる頃、宇宙に退避していたメンバーは地球に戻るなと言われて困っていた。
ジェノスに乗った純平、エヴーネに乗った麁羅、そして隕石破壊を手伝いにわざわざ自分たちの星からやって来てくれた家族や仲間と挨拶を行っているアトミックマン・ヘルト。
アトミックマン星人たちはリュアリュアと話し合っているので純平にも麁羅にも意思疎通ができないのだ。
「なぁ麁羅さん」
「はい、なんです?」
「そのさ、これからどうします?」
「どうします、とは?」
「桃栗さんの話では地球に戻っても正義の味方施設が全て無くなってるそうです。そこで働いていた人々も。多分、乱菊さんも……」
「あ……その……」
「いえ。気にしないでください。既に覚悟はできましたから。それよりも、施設がないのが問題なんです」
「どういうこと?」
「施設がないということは壊れたエヴーネを直す方法がないということです。ジェノスの方はナノスキンにより多少の傷は治りますが、エヴーネには搭載されてないでしょう?」
「え? そうだっけ? 最新式だから……いや、まぁそれでも破損次第じゃ治らなくなるのかぁ。それは嫌だなぁ」
「最悪、手塚さんに頼んでマロムニアでしたっけ、あそこで回復して貰うしかないですかね。あの世界なら機兵はゴーレム扱いで回復魔法で回復出来ますから」
「迷惑掛けちゃいそうだなぁ。でも方法があるのは嬉しいかな。にしても……」
周囲がリュアリュアと喧しい。
地球に超人が居なくなったならもうヘルト居る意味無いんじゃないかという話をしているのだが、純平たちには全く理解できなかった。
ラナリア本部では未だ激闘が繰り広げられていた、が、突如機械兵たちの動きが止まる。
「なんだ!?」
「動きが止まった?」
「まさか、おい、そこの量産型インペリア、インペリアと会話を繋げ。マスター権限はどうなっている!?」
「少々お待ちを、インペリア接続確認しました。どうぞ」
「インペリア、機械兵が動かなくなったがどうなった?」
「おお、赤城様、丁度ご連絡入れようと思っていたところでした。マスターレウコクローン様が死亡されましたので先程レウ様にマスター権限を尋ねたのですが、優先度は旧マスター代理の赤城様の方が優先度があると言われまして。貴方にお聞きします、再び我々のマスターと成られますか?」
「あたりまえだ。そして命令する。戦闘行為を中断。どうもこうもと馬鹿を見付け次第射殺しろ」
「了解!」
「ちょ、見付け次第ってここに居るだろ「言ってないで逃げなさいっ」」
ジャスティスセイバーと闘っていたどうもこうもが慌てて逃げ出す。
しかし、その場に居た無数の量産型インペリアに襲われ、なすすべなく蜂の巣にされていた。
「加えて告げる。マスター権限は今度から俺が誰かに移譲すると言った時か俺が死んだ時以外移譲することを禁止だ。終わったらさっさと通常業務に戻れアホ共!」
「了解ですマスター」
機械兵たちはレウコクローンの死と共に無効化され、どうもこうもも完全に焼却される。
「終わった……か?」
「龍華たちがやったらしいな。まったく、面倒な事をしてくれたもの……ああ、そうだ。インペリア、レウコクローンが発動した超人転移だったか? そのシステムをダウンさせろ、以後使用禁止だ」
「了解、人理超越時間跳躍システムをダウンさせます。以後封印いたします」
「これで地上に出ても俺達が巻き込まれる心配はなくなったか」
ふぅ、と息を吐き、哲也は安堵の息を吐くのだった。




