表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
203/223

地球 ・ラナリア最終決戦5

「今の報告、本当か!?」


「あ、あの、今ハニエル様から念話が、天使たちが天界に強制転移で引き戻されてるそうですっ。地上から締め出されて天界から地上に降りられませんッ」


 誰にともなく告げた龍華にフロシュエルが言葉を被せる。


「あと、ブエルさんからも念話が、魔族が魔界へ強制転移させられ地上に出られなくなったと。ブエルさんもニスロクさんも引き戻されたそうです。地上で闘いに出ていた魔族も次々にっ」


「レウコクローンめ。一体何をするつもりだ」


 玉座から垂直落下する彼らは中空で身動きを封じられながらフロシュエルから齎される報告に毒づいていた。


 ―― ラナリア攻略組に連絡っ。地球上から正義の味方、悪の秘密結社などの超人系が全て消された。残ったのは唯一防壁が間に合ったエレクトロハルリー一人だ。君達もラナリアから出れば強制転移対象になる。解析が済むまでそこから出るなっ ――


「マロンの声じゃないな。切羽詰まっているがどうやら同位の神らしい」


「チッ。面倒なことになった」


「ふむ。シシーちゃんが見るにどっか見覚えのある術式があるんだよね。こりゃ多分時間転移系だな」


「見えるのか?」


「地球だっけ? この星全体に張られた術式だからねー。シシーの三つ目で解析中。なかなか感心する魔法陣だよー」


「さすがシシーだお。私ではなぁんにもわかりませんお」


「てひー。もっと褒めて。ビームしか出ないけど」


「ビーム出るお!?」


「無駄話はそれまでだ。そろそろ着地準備をしておけ」


 アンの言葉にシシルシとリュミエルが押し黙る。

 フロシュエルに二人が捕まり、フロシュエルが翼を羽ばたかす。

 翼をもたないシシルシと満足に扱えないリュミエルは先輩におんぶに抱っこで激突の危機を回避したのだった。


「ひゃー。落ちても怪我にはならないけど深かったね」


「深淵の先の秘密部屋か。ヌェルティスが好きそうだな」


 ぐちゃり。と一人だけ物凄い音を響かせ着地した龍華。すぐに再生して立ち上がる。


「こっちだ」


「分かってる。だが大丈夫か。ラナリアには防壁があるようだがこの先まであるかはわからん。最悪辿りつく前に我々も転移させられかねんぞ」


「それはない。超人というのならばレウコクローンも一緒だ。奴はこの地に残るつもりらしいからな。ならばこの施設内で転移はまず無い」


「よく分かっているじゃないか。彼女の事を」


「……」


 龍華の言葉に押し黙り、アンが走りだす。


「フローシュ。警戒は怠るな。万一はお前の判断で退避しろ」


「師匠が居るのにですか?」


「相手が相手だ。手玉に取られる可能性は捨てきれん。だろう?」


「ですね。了解しました。シシーちゃん。もしもの時はリュミーをよろしくお願いします」


「え? あ、うん。マジかよ。アホ天使のお守とかやりたくねーぞ」


「シシーちゃん酷いお!?」


 カンカンと金属音が響く。よく響く通路を音を隠すこともせずに走るアンたちの前に、その部屋は現れた。

 荘厳な作りはまるでラスボスの部屋を思わせる。

 実際似たような存在ではあるが、これこそ廚二病の極意と言ってよさそうな禍々しい観音開きの扉であった。


「うっわー。やりやがってますねあの人」


「完全に趣味全開だな。奴はヌェルティスと結構話が合うらしいからな。こんな施設がある予想はできていた」


「首領なんてやってるんだしこんなもんでしょ。そら、行くんだろうテメーら。シシーちゃん、ワクワクして来たゾ」


 深淵が覗く瞳でニタァと笑みを浮かべるシシルシ。

 アンはそれを一瞥して無言のまま扉を開く。

 まるでそこは脈動する臓腑の中にいるようだった。

 紫のうねる蔦のようなモノが部屋全体を覆っており、中央に不気味な玉座。

 そこに座り待っていたレウコクローンが部屋に入ってきたメンバーを睥睨する。


「随分と遅かったじゃないかアン。もう、正義の味方はほぼ壊滅したぞ?」


「らしいな。だがお前に引導を渡すことが私の使命だ。消えろレウコクロリディウム。亡霊が蠢く時間は終わりだ」


「無理だな。終わっているのはお前だアン。既に貴様の本体は真一と共に転移済み。お前、何故動いている?」


「っ!?」


 意味が分からずアンは呆然とする。


「クク、貴様は既に終わっているのさ。衛星に残った貴様の残滓が参照されているにすぎん。通信が途切れた以上間もなく稼働が止まるぞ」


「なるほど、だがそれまでの間ならば貴様と闘える訳だな。ならば問題ない時間稼ぎ等させずに絵麗奈諸共に、消し去る」


 だが、彼女が動こうとした瞬間、アンの身体が硬直する。


「なっ、もう……」


「ククク、ハーッハッハッハ! 無様だなアン。いや葵。貴様は闘わずして私に負けたのさ。本体を倒していい気になったようだが、この時代に貴様の居場所はもう無い。この先は我がシクタの妖たちの時代になるのだッ。ハーッハッハッハ……っ」


 戦慄するフロシュエルたち。稼働を止めたアンを見下し高笑いを続けるレウコクローン。

 もはや戦局は決した。女神の勇者による地球破壊は止められたが、漁夫の利を決めた彼女により、地球から超人的存在、天使、悪魔に至るまで一掃されたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ