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ヘリザレクシア・隕石落下2

「目標捕捉」


 ピスカは巨大隕石を見付け、一人呟く。

 宇宙空間の為、声は周囲に届く訳はないのだが、作成者の意向を汲んで独り言を呟くのだ。

 曰く機械人間は攻撃する際や行動を起こす際にはそれ相応の台詞を吐くものだ。と。


 よく意味は分かっていないが様式美として決まった台詞を告げるようにしている。

 今は目標存在を見付けたので「目標捕捉」と告げるのが正解なのである。

 隕石自体は巨大だがただデカいだけで真っ直ぐに迫る物なので、撃破自体は容易である。


 問題があるといえば火力であろうが、その点はピスカの能力次第なので、最終兵器な彼女としては心配にしていない。

 彼女の火力であれば宇宙空間であろうとも隕石を破壊する位訳の無い威力になる筈なのである。


「ご主人様。見てくださっているでありますか!? ピスカ、全力全霊。この無機質な岩の塊ぶっ壊すでありますよーっ」


 誰も見ていないのに叫んだピスカはその場でいやんいやんと頬に両手を当てて身体をくねらせるピスカ。

 誰かが見ていれば何してんだっ、早く隕石なんとかしろーっと叫んでいるだろうが、宇宙空間に彼女を止める存在は一人もいない。

 とはいえずっと妄想していると隕石を見逃してしまうので、ピスカは慌てて思考を中断する。


「おっとあぶない。もう少しで阻止限界点突破されるところでしたであります。ではさっそく。消えろでありますよ」


 自らの機体に存在する砲塔全てを隕石へと向ける。


「全砲門開け! でありますよ。システムオールグリーン、えーっと後なんでしたっけ。まぁ、なんでもいいや。とりあえず、発射ーっ! であります!!」


 砲塔という砲塔から無数のビームが放たれる。

 レーザー、ビーム、火炎放射。無数の属性砲がたった一つの巨大隕石へと殺到し、その姿を次々に穿ち削り破壊していく。

 巨大な隕石はその姿を徐々に消して行く。


「無駄無駄無駄ーっであります。貴様に抗う術は無いであります。抵抗は無意味なのであります!!」


 もはやずっと俺のターン状態。攻撃の術を持たない隕石相手に、ピスカは遠慮すらなく無慈悲な連撃を叩き込む。

 見る間に壊れ、削れ、消えて行く隕石に、ふっと笑みを零した。


「形ある者は皆壊れる。でありますよ」


 はーっはっはっは。と高笑いをあげるピスカ。割り砕かれ、無数に別れた破片の隕石が地上向けて落下を始めたことに気付いてすらいなかった。


「はぁぁ。見てくださいましたかご主人様。頑張ったピスカにお慈悲をくださいませ。つきましてはぜひともお子を、お子を授からせて……いやーん。ご主人様ったら大胆な・ん・だ・か・らーでありますぅ~」


 いやんいやんと身体をくねらせるピスカ。その目の前を地上向けて落下していく小型隕石。


「あーん。ご主人様そんなとこ舐めちゃだめですよぉ。私に何させる気でありますかぁ~」




 そして地上へと無数の隕石群が降り注ぐ。

 そんな光景を、地上からアンゴルモアとウサギが呆れた顔で見上げていた。


「あーあー。なんっつーか。これ俺の不幸のせい?」


 ウサギは首を横に振る。

 明らかに奴による人災、否、最終兵器災だと言わんばかりである。


「どうすんだこれ? 地上にアレ降り注いだら結局終わらね?」


 困った顔をするアンゴルモアに、ウサギは両手をあげた。


「お手上げ兎だ。……って、ウサギがホールドアップすんなよ!? ほんと中身人間じゃねーだろうなテメェ!」


 そんな突っ込みを入れるアンゴルモアに、ウサギはあ、見ろよアンゴルモア。とばかりに空を指し示す。


「どうした? まだ何か不幸が……嘘だろオイ!?」


 空に巨大な魔法陣が出現していた。

 まるでこの星全てを覆い尽くすような巨大魔法陣。

 隕石が魔法陣へと降り注ぐ。

 だが、魔法陣に触れた隕石から先に、一つ一つ消滅していく。


「な、なんだこりゃ? あれ? これ幸運? それともここから不幸?」


 そんな事を言っているアンゴルモアをウサギは呆れた顔で見る。

 何も隕石が落ちる不幸がアンゴルモアだけのモノではないのだからいくらなんでもこれでお前の不幸が回避された訳ではないだろう? と。

 案の定。魔法陣の隙間を抜けた隕石が一つ、アンゴルモアの真上から脳天に激突。

 鼻水を盛大に噴き出したアンゴルモアが撃沈した。




 全く、世話の焼ける世界だ。

 そいつは羊水の中をたゆたいながら嘆息する。

 気配察知を展開していると突然遥か彼方に出現した巨大隕石。

 それが細かく分裂し地表に襲いかかろうとしていた。


 このままでは母体も危険だと気付いたそいつは未だ生まれぬ身でありながらあり余った魔力を存分に使い世界を覆い隕石を消失させる結界を展開したのである。

 この世界に未だ生まれてすらいない転生者、ディアリオは苦笑する。

 別世界では魔神と呼ばれ世界滅亡に加担した自分が、今は生まれても居ない世界を救っているのだ。この矛盾に笑わずなどいられようも無かった。

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