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マイノアルテ・最終決戦12

 ―― はいはーい。ちょぉーっと早過ぎる決着な気もするけどおめでとー ――


「来おったな駄女神」


 ―― 駄女神言うのはどの子かなー。擂り潰しちゃうゾ ――


「ぬおぉっ!?」


 突然ヌェルティスの真上に現れた巨大な棒からかろうじで脱出。

 地面がすり鉢状に擂られ、棒が天空へと消えて行く。


「殺す気か!?」


「変なこと言うからでしょ。とりあえず落ち付きましょうかヌェルティス」


「ぬぐぐ……」


 駄女神と言っただけで殺されかけたことにイラつきを覚えながらも、マグニアに諭されたヌェルティスは溜息を吐いて空を見上げる。


「それで女神よ。とりあえず魔女戦争はントロ一人残して終わった訳だが」


 ―― そうだねー。とりあえず勝者はこの場合ジルベッタちゃんかな。もう他の魔女がヌェルティス奪ったりしないんでしょ。じゃあ決定。さぁジルベッタ、願いをいってみそ ――


「魔女戦争を無くしてください。これ以上、辛い思いをする人がいなくなるために」


 ―― え? それでいいの? 父親からは父を国王にして国の繁栄を約束させるように言われてなかった? あなたが父に代わって国を収めてもいいのよ? ――


「魔女戦争を、無くしてください」


 少女の決意の瞳が、空の彼方から覗く神を射抜く。

 たじろぐ女神は少し考え、でもやはり魔女戦争を一回目で無くしてしまうのはどうだろうかと困った顔になる。


「よいのか神よ。このようなシステムを使い続けるならばやはり駄女神の烙印を押さねばならんぞ。何しろマロンの奴は勇者と魔王システムを作ってやらかしおったからな。今話題の女神の勇者も似たようなシステムでやらかした結果であろう?」


 ―― よし、無くそうか ――


 即決であったという。

 やはり駄女神だな。とヌェルティスばかりかマグニアやジルベッタも思ったのだが、心の中に仕舞っておくことにした。

 口に出しても災いしかやって来ないからである。


「さて、女神の御蔭で魔女戦争は無くなったらしいが、これからどうするのだ?」


「って、あなた身体が」


 魔女戦争が無くなったからか、それともただ役目を終えたからなのか、ヌェルティスの身体がうっすらと消えて行く。


「どうやら儂も元の世界に帰るようだ」


「ヌェルティスお姉ちゃん……」


 行かないで。そんな泣きそうな顔をするジルベッタの頭をなで、ヌェルティスは薄く微笑む。


「安心して、ジルベッタは私が領地で養うわ。プラリネ家に戻っても暗殺されるか監禁されるだけだもの。責任を持って育てるから安心して帰りなさい」


「よかろう。シャロンもジルベッタも任せる。お前の人生に幸運を。神の祝福が……ああいや、あいつの祝福は無い方がいいかもしれんが、とりあえず幸運を」


「ええ。貴女も、向こうの世界で幸せに」


「ヌェルティスお姉ちゃん。あの、がんばるから。私幸せになるからっ!」


 涙して見送るジルベッタにヌェルティスは微笑み浮かべて消えて行く。

 ヌェルティスが消失するのを見届けて、ジルベッタはマグニアの胸に飛び込み泣きだした。

 優しく抱きとめ、マグニアはジルベッタをあやす。


「皆、逝ってしまったわね」


「うん……」


「でもントロの皆はそれぞれの世界に生きてるのよ。エンドも、元の世界で生きてるわ。彼女は貴女の幸福を願っている筈よ」


「うん」


 泣きやんだジルベッタは目元を拭い頷く。

 倒れたままのシャロンをマグニアが引き起こし、背負って歩き出す。

 背後からそれを支えるジルベッタ。二人はクラステス家のある街へ向け、歩き出すのだった。




「……んぁ?」


 マイノアルテから戻って来たらしいヌェルティスは、気が付くと城のエントランスホールに突っ立っていた。


「おお、戻って来れたか!?」


「あれ? ヌェルティスじゃないか。お帰り。ついでにただいま」


 外に出ていたらしい薬藻が帰ってくる。その背後をぞろぞろと嫁たちが戻ってきた。

 その中に、ヌェルティスの見覚えがない人物がちらほらと。


「ちょ、ちょっと待てダーリン、そいつらは……?」


「あー、その、話すとちょっといろいろと面倒な理由が……」


「クアニと一緒だ金髪。夫にオトされた女神の勇者三人だ」


「ちょぉぉ!? 残念女神の勇者なんてなんでオトしとんだダーリン!?」


 戻って早々増えた嫁候補に思わず叫び、しかしそれよりも先にやるべきことがあると、ヌェルティスは素早く走り込み薬藻にル○ンダイブを決め込む。


「ヌェルティス!?」


「ずっと会えなかったのだ。とりあえず薬藻ニウム補充させろっ」


「そういえば、私達と顔合わせする瞬間に異世界に行ったんだっけ」


「飛び着く直前だったか? ツイテない女だな」


「煩い新人ども。名前なんだったか?」


「チキサニだ」


「私は稀良螺。なんかよくわかんないけどお疲れ様、でいいのかしら」


「おお、本当に疲れたぞ。マイノアルテはあまりに殺伐しておって、あー、ダーリン大好き。すんすんすんっ」


「こらヌェル、抱きつくのは許したけどすんすんするのは許してないわよっ!?」


 離れろっとばかりにヌェルティスに飛びかかるカトラ。面白そうだから。と女性陣が殺到し、再び薬藻争奪戦が始まるのだが、それはまた別の話である。

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