マイノアルテ・隕石落下3
「念のため、お兄様の能力をコピーしておいてよかったわ」
自身を空気の層で纏うことで呼吸出来ない事態を回避したエンドは、今、宇宙空間にやって来ていた。
背後を見れば丸い星が見える。
地球とは違い所々カラフルな色合いを見せるその青赤い星が、今まで自分が居たミルカエルゼである。
視線を隕石に向ける。
殆どミルカエルゼと同質量の星だ。こんなものがぶつかれば星が終わるのは確定的だろう。
面倒ではあるが完全に破壊すべき物体だ。
「さて、さっさと面倒事は終わらせますか。霧雨の隔壁」
自身に雨粒の防壁を展開し、突撃することで削り飛ばす。
一番無駄の無い、しかし時間のかかる作業を始めようとした時だった。
背後から一条の光を感じ、咄嗟に避ける。
龍の身体と鳳凰の翼を併せ持った状態のエンドをやすやす消し飛ばすような一撃が隕石にぶち当たり、爆散する。
呆気に取られる愚は犯さなかった。
即座に振りかえり駆け抜ける閃光をお返しとばかりに打ち放つ。
「ほぇあ!?」
まさか宇宙空間にそいつがいるとは思いもしなかった。
城内茉莉とレゥが魔法少女ステッキを振り抜き追撃の一射。
エンドもこれを躱しながら駆け抜ける閃光で応戦する。
「何してくれますか!」
「あはは。魔女戦争は既に始まっているのだよエンドくん。なんちて」
「あの隕石が落下したら世界が終わるわ。それが分からないほど愚図で間抜けで痴呆なのかしら!?」
「茉莉間抜けてないし! ボケてもないしっ! 「阿呆だがな」レウちゃんひどい!?」
そんな問答を宇宙空間で飛ばしながら二人は光線を打ち合って行く。
「隕石などこの茉莉ちゃんがぶっ壊しちゃうんだから。それー最大放出「阿呆!? こんな場所で全力使うな!?」」
強力な光の一撃が隕石へと注がれる。
回避不能の一撃で、隕石が粉微塵に粉砕された。
「星すら一撃……か。随分と高火力ですこと。この図体で居るのは良い的ですわね……」
もともと隕石破壊の為に身体を獣化させたのだ。それが必要無くなったのならば茉莉相手にわざわざ当てやすい姿を晒す意味は無い。
元の人型へと戻り、両手に炎を灯す。
「つまり、遠慮なく貴女を倒せということですわね」
「倒すのは茉莉だし! 行っくぜぇー!!」
ステッキ振ってエンドを牽制。光の連撃を打って来るが、鳳凰の翼を生やしたエンドはその攻撃全てを避けて行く。
「まずは優雅なる火炎の灯と駆け抜ける閃光で……」
連続して光を放ち、途中で炎を投げる。
茉莉は白い翼と蝙蝠羽を左右に生やし、時折羽ばたかせながら宇宙空間を縦横無尽に駆け抜ける。
「いっけーシューティンスター!!」
星型の光線がエンドに襲いかかる。
これは霧雨の隔壁により弾きながら接近。
近距離での光の打ち合いとなったために避けるよりは防壁で防いだ方が速い状況になる。
「へっへーん。プリズムリフレクションがあるから私にダメージこないもんね!」
「そっちも防壁は完備ってことね。でも残念。阿呆、愚物、愚か者っ。足りないオツムじゃわかりませんか? 駆け抜ける閃光」
「何する気か知らないけど、馬鹿の一つ覚えはエンドちゃんじゃん! ホーリーアロースプレッ「いかん、逃げろ茉莉!」ド?」
エンドの狙いに気付いたのはレウだけだった。焦って叫ぶが茉莉には伝わらない。
エンドの光が茉莉に直撃しプリズムリフレクションで反射され、茉莉が一瞬遅れて光の散弾を打ち放とうとしたその瞬間。エンドはニヤリと笑みを浮かべた。
「遍く全てを防ぎし壁よ」
それは球状の防壁だった。対象を絶対的に防御するものであるはずだが、その防壁が張り巡らされたのは茉莉の身体。
彼女の周囲をがっちりと固め、エンドの攻撃を完全に防ぎ、そして茉莉自身が放った攻撃を悉く跳ね返す。
「ちょ、え? 「プリズムリフレクションを二重に展開されたようなモノだ。避け切れんぞ!?」」
簡単に言えば、プリズムリフレクションという防壁により跳ね返されたエンドの駆け抜ける閃光を遍く全てを防ぎし壁よで閉じ込め跳ね返し返すつもりだったエンド。茉莉が跳ね返った光に合わせて拡散する光の矢を放った御蔭で思った以上の反撃になったのだ。
全てを防ぐ球体により跳ね返された無数の光が茉莉の周囲を跳ね返りまくる。
もはや眩し過ぎてエンドからは見えなくなった球体の内部で、外と内で跳ね返る光は、結果的に全てがプリズムリフレクションの合間を縫って茉莉へと襲いかかる。
致命的な悲鳴が聞こえ、茉莉の上半身が爆散した。




