ペンデクオルネ・隕石落下2
うわぁ……ナートは空を見上げて魂を吐きだした。
今、目の前で巨大隕石が真っ二つに割れた。
しかもその割れた二つが不規則に動く。
おそらく半円の中央を持ち上げ互いに投げ合っているのだろう。
相手から投げられた半円隕石を受け止め投げ返し合うナートの父親と幼馴染の父親。
遠目過ぎる宇宙の彼方なので分かりずらいが、おそらく笑いながら投げ合っていると思われる。
「お父さんたち楽しそうっ」
「お前らの感性わかんねー……」
「いいなぁ。ねぇナート。私達も隕石使って投げ合いっこしよーよ。ナートの隕石受け止めて、私の隕石を受け止めて貰うの。あ、これなんか付き合ってるって感じがする!? いやーんナートのえっち」
「意味わかんねーよ。あ、砕けた」
隕石の一つが砕け散った。おそらく力加減を間違えたらしい。
しかし残った半円でキャッチボールを繰り返すおっさんたち。
隕石が高速で移動するのがなんともいえない。
きっと楽しいなぁとか叫びながら剛速球を繰り返しているのだろう。
しかも徐々に近づいているせいで灼熱化している。
おそらく大気圏近くでキャッチボールしているようだ。
隕石が燃え始めて徐々に小さくなっていく。
「ひゃわ!? なになに?」
そんなキャッチボールを見ていると、突然小型の隕石が降って来た。
幼馴染の後頭部に直撃したのだが、まるで小石をぽーんっと当てられたように何が起こったのか理解すらしていない幼馴染が頭に感じた衝撃に周囲を見回す。
「そこの隕石が当ったみたいだぞ」
「わっ。これが隕石? ちょっと暖かいね」
「大気圏で燃えてたからな。数千度くらいあんじゃね?」
「ほへー」
両手で拳大位の隕石を持ち上げ物珍しげに眺める幼馴染。火傷などするはずもない超越人種の彼女は、何を思ったかナートに隕石をぶん投げて来た。
「いてぇ!? 何しやがる」
「投げ合いっこしよう! お父さんたちみたいに」
「ふざけんな。何で俺がそんなもんしなきゃなんねーんだよ!」
「やだー。ナートと投げ合いっこしたい。したいしたいしたーいっ!」
「あ、ちょ、こら、それは普通の石だ。ああもう、これでも食らいやがれ!!」
隕石を思い切り投げ飛ばす。あまりの摩擦熱により火が付き燃えだした隕石。それを幼馴染は嬉々として受け止める。
「やった。ナートありがとー。行くよー」
「くんなっ!?」
思い切り顔面を狙ってやったのに相手はキャッチボールできると普通に受け止め剛速球で返す。
「この、クソ野郎ッ」
全力の反撃も、全く意に返さない幼馴染。結局強制的にキャッチボールをさせられるナートであった。
それは、隕石が摩擦熱で溶け消えるまで続き、降り注ぐ隕石の散弾の中、二人の少年少女は実に楽しそうにキャッチボールをし続けたのであった。
「だぁあ!! もう、なんで結局キャッチボールになってんだよ!」
「やーんもう、ナートいっつも嫌だ嫌だ言いながらも付き合ってくれるんだからぁ。す・きっ。やーん言っちゃったー」
「わはは。宇宙ってのぁ楽しい場所だなぁ!」
「ええ、ええ、あんな面白い場所が身近にあったとは。今度妻と一緒に月までピクニックでもしてきますかねぇ」
悶える幼馴染。そして宇宙から弾丸のように落下して来てクレーター作りながらおっさん二人がやってくる。摩擦熱で服が燃え尽き全裸になっているのだが、これはツッコミを入れていいのか、ナートは分からず天を見上げた。
「はぁ。もうやだこんな生活」
「しかし、あの隕石はなんだったのだろうな?」
「キャッチボール中に燃え尽きてしまったな。そう言えば燃え始めた辺りから君の服が燃えだして全身に炎を纏っているのがなかなかカッコ良かった気がするよ」
「そういう君こそ全裸になって闘気のような炎を纏っていたじゃないか。あれは惚れ惚れするような恰好良さだったぞ」
「きゃぁぁ!? ちょっとお父さん、おじさん、なんで全裸になってるの!?」
「おお、これは失礼。レディの前で失態だ」
「ふむ。宇宙というのは行く分にはいいが帰りで服が燃え尽きてしまうのか。要らない服で行き来するしかないかな」
「村長に話してみようか? 何かしら解決策をくれるかも?」
「むしろ絶対面白がって行くだろあいつ。下手したら村の業務放り出して宇宙に入り浸るぞ?」
「あー。そりゃありうるな。じゃあ黙っとこう」
「それがいい。そうしようぜ」
そしておっさん二人は予備の服を取りに自宅へと帰って行く。
「そっかー、宇宙行くと服がなくなるのかぁ。これお気に入りだから宇宙デートには着てけないなぁ」
ちらっちらっとナートを見ながらどうしよっかなー。でもデート行きたいなぁーとか言いだした。
相手の目的は明白ではあるが、ナートは無視して空を見上げる。
隕石は欠片すら見付けられなかった。
「マジでもうやだ、こんな生活……」




