マロムニア・隕石落下2
「そら、二撃目行くぞ!」
魔力回復薬を無理矢理呑ませたメンバーと共にミシャンドラが魔法を詠唱する。
遠くに迫る巨大隕石はには、まだ一撃目が到達出来ていないのだが、いつでも二撃目を放てるようにしておくらしい。
慌てて魔力を溜める魔族たち。
「ふはぁ。ちょっと二連撃は辛いなぁ」
「ふふ。それでも頑張ってくださいイチゴさん」
「いや、頑張りますけどねクラシカさん」
イチゴはあははと笑いつつ、魔法詠唱に入る。
イチゴの魔法はハンドレッドマジックという次に唱える魔法を1.2倍の魔力を消費して一瞬で百連射するという鬼畜魔法である。
魔法を百回唱えるよりも全然速く強烈な魔法を叩き込めるため、今回の闘いではメインと言っていい火力を誇る。ミシャンドラもそれは理解していたため、イチゴの魔法を収束することに一番の神経を注いだそうだ。
「全く、自分が魔王としてイチゴと敵対していたらと思うと怖気が止まらんな」
「全くです。心底味方でよかったと思いますよ」
魔法詠唱中の為、菜七とクラシカの会話に混ざれないイチゴは視線だけで訴える。私そんな恐くありませんよ? と。
しかし、唱えている膨張する雷撃は一撃だけでも凶悪な魔法であるのに、それが100連発で襲って来るのだ。敵対したら地獄絵図を見せられるのはほぼ確定だろう。
「我と敵対中はまだトリプルマジック程度だったと思うのだがな。末恐ろしい女よな」
魔法詠唱中は反論すら出来ない。ミシャンドラの言葉に思わず目で抗議を送るイチゴ。しかし、その抗議が伝わることは無かった。
「そろそろだ。一撃目が着弾するぞ!」
隕石自体そこまで距離が無かったらしい。
数光年先ではなく数万メートル先程度の距離だったがために隕石自体の速度との相乗効果で全員の威力を乗せた一撃が隕石へと衝突した。
ミシャンドラたちからでもよく分かる爆発が隕石を覆う。
しかし、爆発は隕石の一部分にぶつかっただけであり、隕石全てを破壊するには……否、びきり、亀裂が走った隕石が内側より膨れ上がる100の雷撃により膨れるように破裂した。
「い、いかん。粉砕するだけのつもりが内側から爆散したぞ!?」
「アレ、イチゴの魔法の特性ではないか?」
「い、イチゴさーん」
クラシカの怨みがましい顔に慌てて首を振るイチゴ。自分じゃないと目で訴える。
「いかんな。小型化したが流星群として急速接近を始めたぞ!」
インフレーションサンダーボルトにより爆散した小型の隕石が無数に星へと降り注ぐ。
「全員、二撃目は無しだ! 各自落下する隕石を撃ち落とせ!」
「ミシャンドラさん、魔法整いました!」
「拡散でデカイのから優先して撃ち落とせ!」
「そんなむちゃくちゃな!?」
「黙れ! 貴様のせいだろうが」
「酷い!? 私じゃ無いのに!?」
そもそもが皆の力を合わせようとしたミシャンドラの予想不足だといいたいイチゴだったが、他のメンバーもイチゴのせいだと思っているようで言われない中傷が視線となって届く。
泣きそうになりながらも魔法を打ち放ち、隕石の群れを破壊する。
「いいもん。あとで薬藻さんに甘えてやるんだからっ」
半泣きで半ば自棄になりながら、イチゴはさらに魔法を唱えて行く。
「ハイエンドストリーム! ライトニング・フォレスト! エルダー・ハリケーヌ!!」
無数の広範囲魔法が空より来襲する無数の流星群を粉砕していく。
「そら、急げよ者ども! あの岩の攻撃を防がねばこの国が終わるぞ。魔国一帯のみで済んでよかったがな!」
ミシャンドラの言う通り、割り砕かれた破片たちが襲いかかったのはこの魔国周辺だけらしい。
大きさも大気圏でほぼ燃え尽きた御蔭で巨大隕石もそこまで大きくは無くなっている。
速度はあれども来ると分かっていれば迎撃は可能だった。
「しまった抜けた!?」
クラシカの攻撃をすり抜けた隕石が城に激突。幸いにも大した大きさではなかったので突き抜けるだけで終わったようだ。
「クラシカ、前を見ろ、まだ来るぞ!」
「む、無効之拡盾!」
「飛び交う焔鳥」
菜七は魔法を唱えながら迫る流星群を見る。
巨大な隕石はイチゴとミシャンドラが請け負ってくれているので他のメンバーは小型の隕石を相手取るだけでいい。
といっても割り砕かれた隕石たちは数千数万の大軍勢。
さすがに魔族の精鋭たちといえども空から迫る超高速の岩の群れ相手となると苦戦は必至だった。
何名かが迎撃しきれず一撃を喰らい身体の一部を失う者が出始める。
それを見たクラシカが後方待機させていた回復部隊に指示を送る。
今のところ致命傷を受けた者は見当たらないが、何しろ相手は空から高速で襲いかかる硬質物だ。
一撃でもくらえば人型生物など致命傷。
事実、魔国周辺以外では魔物が打ち抜かれて倒れる姿が散見されていた。




