???・最後の勇者1
「やはり、ここにいましたか」
「ほぅ、まさか俺の存在に気付いた奴がいたとはな。場所まで特定されたか。なかなかにやるな」
そいつは何も無い世界にたゆたうように存在していた。
瞑想していた彼は背後から掛かった声に瞳を開き、背後を振り向く。
「やぁ、初めまして女神の勇者」
「ああ、初めまして、異世界の神」
男の目の前に存在するのは銀色の肌を持つ人型の生物。アーモンド形の大きな瞳をメガネで隠し、男を静かに睨み据えている。
「グーレイと呼ばれている。君は?」
「檀崎智勇。さとる。なんて普通の名前過ぎて落胆したか?」
「いいや。名前などどうでもいいさ。それで。君でいいのだね。サンニ・ヤカーから能力を奪い取った犯人は」
「奪い取る? おいおい、人聞きの悪い事を言わないでくれないか? こいつは正式に女神から譲り受けた権能さ。あいつがお前らに一泡吹かせたいつーから俺がわざわざこんなことをしてやってるんじゃないか。見ろよ。お前らの世界。女神が選んだ勇者はほぼほぼ全滅。残りももう終わりだろう。三人も裏切ってるしな」
彼の後ろにモニター画面が映り、各世界の現状、そして神界の映像が映る。
「なるほどね。ここからならわたしたちも見放題という訳か」
「そうそう、神々が一喜一憂する姿見てたらよぉ、自分等の理解が及ばなかった神々があまりにも自分たちと一緒過ぎて笑っちまうよな? 俺が辛い思いしてる姿をよ、こうやって高みから見つめて笑ったりしてやがるんだぜ? これが……神? クク、ふざけんなよ?」
自虐的に笑った男は一点、憎しみ浮かべてグーレイを睨み返す。
「神ってのはもっと理解の及ばねぇもんだと思いたかったよ、人知を超えた存在だってなぁ、なのになんだよこいつらは!? 頭の悪いアホばっかじゃねーか! こんな奴等に今まで管理されてたかと思うと反吐が出る。あの女神もアホだったがお前ら全員アホだろう!? だからよぉ。とりあえず全ての世界破壊しつくして俺が全部管理し直してやろうと思ったんだよ。だから、女神に願ったのさ、お前の権能全てくれってな。まぁ貰ったのは吸収っつースキルだがな」
「それで女神の能力全てを吸収した訳か」
「ふふ。アイツ全部吸い取られてから気付いてやがんの、やっぱり神という力を持っただけのアホだったと証明出来ちまったぜ。俺が神やった方がぜってぇ上手く行くだろ」
「ふむ。おかしいな。それでも21もの次元を理解出来るとは思えないのだが」
「この時間までかかっちまったが、煩わしいものはここにゃなかったからな。能力を理解するには丁度良い世界だぜ。この二十二次元はな!」
第二十二次元世界。グーレイ達の住む世界よりも一次元多いここは、上位次元へとアセンションしようとしたモノ達が二十三次元の住人たちの怒りに触れ世界ごと消された次元世界であった。
その為この世界には何も無く、ただただ透き通った透明だけしか見えないせかいである。
暗闇さえも消え去ったこの世界では上も下も存在しない。
常人ならば数分と持たず発狂しかねないこの場所に、最後の勇者はずっと居たのである。
この世界はグーレイ達より高位次元のため、彼らが勇者を捜索する範囲外の世界でありながら、グーレイ達を自由に監視出来る世界でもあった。
「とりあえず。俺がいるってことを知らせるためにお前らの全ての世界に隕石送ってやったんだが、見ろよ、慌てふためいてやがる。たった一発の隕石でだぜ?」
「星くらいある巨大隕石だからね。しかも神意で消せないとなれば我々も焦るさ」
「当然だ。女神の権能で俺も同じ次元の能力を扱えるんだ。テメーらの能力が及ばないようにするくらい出来るに決まってんだろ。俺は天才なんだぜ?」
くっくと笑う智勇。下卑た笑みにグーレイは思わず顔を顰めた。
「ちなみにな? 隕石なんざコピー&ペーストって感じにいくつだって送り込める。一個でこれだけ大騒ぎ、百個に増えたらどうなんだろうな?」
「させると思うか?」
「なんとかできると本気で思ってんのか? 俺は吸収スキルも健在だ。近づきゃお前の能力も吸収しちまうぜ? アホ共。折角の能力も頭が足らないせいで満足に使えねぇテメーらとはココの出来が違うんだよッ」
頭を指差し智勇は高笑いを浮かべる。
絶対的勝利への自信。彼は自分が負けるなど考えもしていなかった。
それはそうだろう。事実、グーレイが認識出来ている二十一次元の現象よりも、彼が理解した二十一次元の方が遥かに過密なのは確かなのだから。
だから、グーレイが及びもしない方法で効率よく能力を使うことだって智勇には可能なのだ。
グーレイはただ指を咥え、彼が世界を破壊する様子を見ていることしか出来ないのである。
グーレイもそれを理解したのかぐっと唸りをあげる。
「貴方は、何処まで狂って……」
「狂う? この狂いきった世界で狂ったならむしろ俺が正常じゃないのか? ふふ。そうかそうか。神様からお前は正常認定されるとはな。褒美に神様よ、あんたには全ての世界が滅ぶ姿を見せてやるよ」
この、隕石連続投下でなぁ! そう叫ぶ智勇に、グーレイは歯噛みするしか術は無かった。




