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モルグドラハ・隕石落下1

「なるほど、ラナの言ったことはこれか……」


 クロリは空を見上げて感慨深く呟く。


「いや首領、ゆったり見上げてる場合じゃ無くててですね……」


「神々の世界もそろそろ気付くだろう。それで消去出来ればよいが、無理ならばこちらでなんとかせねばな」


「んー。私たちの言霊じゃどうしようもないかなぁ」


「どうやら私達よりも高位存在が生みだした隕石みたいね。言霊じゃ破壊不能になってるわ。物理や魔法は効く普通の隕石なのに高位存在による攻撃だけ防げるようにしてある。何この歪な設定?」


「とりあえず、俺らじゃお手上げってことか」


 王利の呟きにラナとクルナが頷く。

 しかし、ラナたちが何も出来ないとなると宇宙にまで行ける人材の居ない王利達は完全に詰んだ状態になってしまう。


「ふむ。今回ばかりは私も頭を下げねばなるまいな」


 溜息を吐き、クロリが王利へと向き直る。


「え? 首領?」


「頼む、この通りだ。アナタだけが頼りだ。あの隕石、なんとかしては貰えんか?」


「ちょ!? 首領!?」


「私からもお願いします。この世界の生態系を守るためにも、お願いしますっ」


「ラナちゃんのお願い叶えてください。私も、お願いするわ」


 ラナとクルナが頭を下げ、他の面々も王利へと頭を下げる。

 王利からすれば意味不明である。むしろ無茶振りとも言える。


「いや、皆、俺に隕石どうにかする術なんて……」


「まぁったくしょーがないなー。おねーさんがやってあげようじゃないか」


「……はい?」


 王利の肩に止まっていたエアリアルが胸を張ってふんすと気合いを入れる。


「……あれ?」


「ん? どうしたの王利?」


「W・Bお前からも頼んでくれるか。今は、エアリアルだけが頼りだろう? 何しろ彼女は第二十三次元の住人だ。おそらく隕石に掛けられた高位次元用の防壁も意味を成さずに破壊できるだろう」


「そんなこったろうと思ったよちくしょうっ」


 心の叫びを空へと飛ばし、王利は肩に乗っかっていたエアリアルに視線を向ける。

 そう、ずっと彼の肩に乗っていたこの小さな妖精は、高位次元の存在だ。

 王利の居る次元は点、線、面の三次元と、時間という次元で構成された第四次元であり、エアリアルはさらに多くの事象を持つ第二十三次元に生息する存在だ。


 そして彼らが今居る世界は第二十一次元の高位存在達により作られ、勇者を送って来た女神もその世界の住人だ。つまり、隕石を落とそうとしている存在は二十一次元以下の存在であることはほぼ確定していると言っていいのである。

 となれば、エアリアルが動けば確実にこの世界の安全は守られるといっても良かった。


「ね? 私達もう少し残ってて良かったでしょ」


 ラナの言葉に頷く王利。

 その肩から飛び上がったエアリアルが王利の頭に着地し、仁王立ちしながら隕石を見上げる。


「ふむふむ。構成自体は二十一次元のモノね。二次元分使われてない構成があるから私からすれば楽勝ね。穴だらけよ穴だらけ。スポンジ構造ね。すっかすか。……すっかすかッスか。ぷふ、うふふ」


「エアリアル?」


「はっ!? な、何でもないわ王利。んじゃやってきます!」


 自分で言った言葉に反応して含み笑いしていたエアリアルが慌てて空へと舞い上がる。

 本当にあいつに任せて大丈夫だろうか?

 王利の心配を他所に、唯一高位次元のエアリアルが隕石破壊へと向かって行くのだった。


「さて、これであの岩は問題なしだな」


「しかし、元を立たねばアレ一つ消しても意味は無いだろうな?」


「え? 首領それってどういう?」


「神とやらが言っていただろう? この世界に来ている女神の勇者は三人。多腕、防壁、機械兵団。ならばあの隕石は何者の攻撃だ? 神が感知できない勇者がここに居た? 否。この世界一つには留まるまい。ならば別の世界からの攻撃。神も感知できない場所から何かしらの方法でこの世界に隕石を落としたのだろう。ならば元を叩かねばアレを破壊しても次の隕石が降ってくるだけだ。今、その誰かが遊んでいる内に何とかしなければ、隕石一つならともかく何十何百と落とされればどうにもなるまい?」


「た、確かに。いや、でも首領。この世界で感知されずにいるだけって可能性だって……」


「私が思うにほぼ0%だな。まだ自然現象で落下して来たと言われた方が可能性が高い」


「ほんとですかぁ?」


 不安げに呟く王利に、ラナとクルナまで首領の肩を持つ。しかしながら現状打つ手の無い彼らができるのは、神々に報告を行う程度であった。


「うわ、見て見て王利きゅん。隕石消えたよっ」


「ちょ、葉奈さん!?」


 抱きついて来たバグパピヨンが空を指差してはしゃぐ。頭を掻く王利も満更でもないようで、バグソルジャーの皆がリア充爆死しろと白い目を送る中、パピヨンに抱きつかれるままに空を見上げるのだった。

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