表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
165/223

ペンデクオルネ・隕石落下1

「うわぁぉ……」


 信太はただただ見上げていた。

 空から迫る虚だな天体。

 もはや自分たちの手に負えるモノではないそれに、思わず万歳状態になる。


「ど、どうすんのよアレ! 折角勇者とかいうのの脅威無くなった筈なのに」


「んっ」


 サイルに同意するルーフィニ。

 しかし信太にとってはこの脅威すらやるべきことは一つである。

 誰かがやらなきゃ星ごと壊滅する。ほっとけば他の誰かがやってくれるかもしれないけれど、自分にはその方法があってしまうのだ。


「しゃーねぇ。サイル、ルーフィニ、悪いけどもいっぱつ行くぞ」


「また?」


「んっ」


 しぶしぶながら頷くサイルと即答するルーフィニ。

 早速二人にキスをして、信太は呪文を唱え出す。


「地の底より這いで来て、処へ集え」


 自分だけの魔道書を広げ、空から迫る隕石に手を向ける。


「我らが前を阻みし、絶死の脅威なる者へ」


 正直この魔法でアレが向かう先がどうなるかなど彼には良く分からない。それでも……


「我等が求め訴えるは、追放なりッ」


 自分の居る世界が守れるならば。


異世界転送まるなげッ!!」


 世界の理すらも書き換える大魔法が炸裂する。

 魔力が迸り迫る隕石へと向かって行く。

 ありえない程に離れた距離へと魔力が向かう。

 ぐぅっと信太の身体に負荷が掛かった。


 予想以上に寿命が持っていかれる。

 寿命掛けてまでやることか? ふと疑問が鎌首もたげるが、被りを振るって隕石を睨む。

 この世界には必要の無いモノだ。


「消えちまえ、この世界からっ!」


 空を越え、宇宙へと飛びだし、信太渾身の魔法が隕石を包み込む。

 光り輝く巨大隕石。

 そして、隕石が世界から消え去った。


「ふぅ、焦った」


「焦ったじゃないでしょ。勇者もだけどアレどこ行くのよ?」


「さ、さぁ? もしかして星を滅ぼす大悪人になったかな俺?」


『どんまい』


「どんまい。じゃないわよルーフィニ。物凄い酷いことしたのよこいつ。いや、確かに私達は助かったけどっ」


『ぐっどらっく?』


「成る程、隕石が向かった先に幸運を。かぁ。俺も祈っとこう」


「送ったあんたが祈るなよ! この偽善者がっ」


 サイルが切れて魔法の連射が始まり、ルーフィニが打ち消し魔法の応酬が始まった。

 いつも通りの光景に、信太はさっさと退避して安全地帯から二人の暴走を見守る。


「ああ、今日も平和だなぁ」


 快晴となった空を見上げ、彼はただただ虚空へと言葉を投げかけるのだった。


 --------------------------------


「で、なんだありゃ?」


 自宅に戻ったナートは空に突然現れたソレを見上げて呆然としていた。

 直ぐ横では自分の父親と幼馴染の少女の父親が半裸になって組手をしている。


「ふんはっ!」


「どぇい!」


 一撃一撃真空波が発生し、地面を割り砕き空気が悲鳴をあげ、闘氣で石が持ち上がっては自然に割れて行く。

 そんなバックグラウンドで繰り広げられる男達の遊びから視線を逸らしたナートの眼の前には、この星に迫る巨大隕石が見えた。


「うむ? どうしたナート?」


 冴えないおっさんにしか見えない男がナートに声を掛ける。


「空になんかあるのかー?」


 幼馴染の親はどう見ても野獣にしか見えないおっさんだった。そんな二人は大の仲良しで、こうしていつも遊びと称した闘いもどきを行って汗を流している。

 バーコードな自分の父親に視線を向けるナート。将来俺も禿げるのかな? そんな事を思いながら再び空を見上げる。


「いや、なんか宇宙に巨大隕石が現れてこっち迫って来てんだけど」


「おお!? 本当だな。なんだありゃ」


「アレが当るとこの星滅ぶんじゃねーかな」


「むぅ? 宇宙とはなんだ?」


「呼吸できない空間だよ。あの空の先にあるんだ」


「ほほぅ!? そんな素敵空間があるのか!?」


「そんな良い場所があるならさっさと言い給えナート、おい、行くんだろ?」


「ああ。じゃあナートたち、留守番頼む、ちょっと宇宙に行って来る」


「は?」


 驚くナートを放置して、父親二人がはぁっと気合いを入れて飛び上がった。

 地面が抉れ飛び空気が悲鳴をあげ、音速の壁が次々に突破されて行く。

 瞬く間に見えなくなった二人の男が空の彼方へと消え去ってしまった。


「いや、ちょっと行って来るって、近くのコンビニじゃねーんだぞ……?」


「ナート、コンビニって何?」


 近くで地面に絵を書いていた幼馴染の少女が小首を傾げる。


「なんでもねーよ」


「んー? あ、ねぇナートぉ、二人っきりになっちゃったね?」


 ゆっくりと差を詰めて来る幼馴染の少女に喉突きを行い黙らせる。

 しかしダメージにすらならずにやーんナートに襲われるーと。少女は見当違いの身悶えをするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ