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神々の経過報告3

「ふはー。なんとかなったねー」


 一息ついたアルテが思わず呟く。


「まだミルカエルゼと地球が済んでないでしょ」


 窘めたのはミルカ。自分の管轄世界の危険がまだ去っていないので未だに真剣な顔で世界を覗いている。

 だが他の神々は既に自分の世界は守られたと酒盛りを始めている始末だ。

 早くそちらに加わりたいミルカとアルテは焦っていた。

 しかもいち早くアルテの世界が勇者全滅。ミルカの焦りは極限に高まっている。


「なんじゃい、まだ終わっておらんのか?」


「時間の流れる感覚も違いますからねっ」


 ザレクの言葉にイラッとしながら告げるミルカ。


「一応女性陣は全員配下にしたっぽいけどね、猛毒の勇者が復活しやがったのよ!」


「こっちはまだ巨大化の勇者が健在っすわー」


「じゃあもう少しで終わるな」


 クオルの言葉にモルグも同意する。

 皆がそのつもりだった。最悪自分たちの世界の実力者を送り込んで被害無く終わらせようかと考え始めた時だった。


「まだ、終わってませんよ皆さん」


「うん? おお、グーレイか」


 どこかに行っていたグーレイが合流した緑の少女と共にやってくる。


「どういうことだ? 終わってないとは、ああ、まさかあの女神まだ画策してたのか?」


「いえ、人数の問題です」


 人数? ザレクが思わず首を捻る。


「マロムニアに最強、回復、蹴り、絶倫。アンゴルモニカに拳法、剛腕、人間爆弾、霊体、グレイシアに増殖、知識創造、鋼鉄、融合、料理、錬成、飛行、操船。合計16人」


「ふむ。ペンデクオルネは剣聖、破斧、神槍の3人、つまり19人」


 クオルがグーレイの言葉を引き継ぐと、ミルカがそれに習う。


「猛毒、大魔導師、歌、瞬間移動、爆炎、神弓、ボックス、錬金で8人だから……27人?」


「じゃー、私のマイノアルテは魅了、強奪、時間停止、神速、狙撃で5人だったから32人?」


「モルグドラハは多腕、防壁、機械兵団だから3人。35人か」


「ヘリザレクシアは幸運、魔人、暗殺、調教の4人じゃな。39人……かの」


「そして地球にカード化、調伏、魔眼、翼、巨大化、疫病、武器、虫、闇、ゾンビ化(時間転移)の10人で、49人っと……ん?」


 最後にマロンが告げる。

 その瞬間、違和感に皆が気付いた。


「「「「「「一人足りない!?」」」」」」


 そう、グーレイも気付くのが遅れたが、皆も自分の世界の危機に焦り、単純な計算を忘れていた。


「ま、待ってよ、え? 50人の勇者よね? 残り一人は?」


「どの世界にも居ないわよね?」


「バカな!? 見落としていたとでも?」


「いや、世界全てを精査しただろう。見逃すはずはない。それにあの女神の勇者が、既に動いてなければおかしいではないか!」


「じゃあ……何処に?」


 戦慄する神々に、その異変は追撃のように襲いかかった。


「ちょ、なによこれーっ!?」


「どうした駄女神よ」


「駄女神言うなしっ。ってそれどころじゃない。なんか地球に突然大質量の隕石が近づいて来て」


「待って。こっちもだわ。ミルカエルゼにも隕石が。ちょっと猛毒の勇者もまだなのにあんな星の外から星ごと壊滅させるなんて……」


「うわわ、マイノアルテにも隕石が!? ヌェルちゃん達なんとかしてぇぇぇ!!」


「待て。まさか、まさかっ!」


 神々が慌てて自分の世界を覗き見る。

 世界の中で見学の為に視点を合わせている星に向け、巨大隕石が迫り来ているのが直ぐに分かった。


「う、嘘であろう!? おい、アンゴルモア、なんとかせい!」


「W・B君一大事だ、あの隕石をなんとかしてくれ!」


「ペンデクオルネは!? 我がペンデクオルネはどうな……ウチもか!?」


「うっそ、マロムニアもアンゴルモニカにも隕石来てる!? どうなって……」


「それが、最後の勇者の能力だろうね」


 そう告げながらグーレイは自分の世界グレイシアを覗き込む。


「ほら、見て御覧アルセ。君が、いや、君達が守り通した世界は隕石などではビクともしないらしい。この世界は君の担当だ。やり方は既に教えた通り、後は好きにしなさい。私は……」


 言葉を切って、グーレイは虚空に視線を向ける。


「我々が感知出来ない場所にいるだろう最後の女神の勇者に会って来よう」


「ちょ、グーレイさんや。居る場所分かるの!?」


「特定はできてないけどね、予想は付くさ。あの女神が女神の権能殆どを失っていたことを考えれば、おそらくその権能全てを奪った奴がいる。その力を持つ勇者であれば、きっと私らと同格の力を持つ筈だ。ならば……我々の監視が来ない場所、あそこ・・・にいるだろうね」


 半ば確信したように一人頷くグーレイ。

 自分の世界をアルセに任せたからこそ自由に動ける彼だけがその場所の様子を見に行けるのだ。


「じゃあ、ちょっと行って来きますよ。もしもの場合は万全の用意を整えて第二十二次元世界に来てください」


 驚く皆を置き去りに、グーレイは一人上位次元へと向かうのだった。

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