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マイノアルテ・アルテンリシア家2

 外の光景を見て龍華は安堵を覚えていた。

 ヌェルティスが見えた際、彼女に迫る蔦に気付いて叫んだが、ヌェルティスには届かなかったようで、流石の龍華も焦ったのだが、マグニアが何かを叫んだことでヌェルティスが気付けた。


 柳宮が指示出しを行い、危険な蔦を優先的に破壊しながらヌェルティスの魔法が龍華達の元にまで現れ蔦を粉砕していく。

 予想外のフォローに龍華とエンドは顔を見合わせ、好機とばかりに霧雨を解く。


「丁度良いですわ。今のうちに近接でやってしまいましょう!」


「私が突出する、援護は任せる。それとガルニエ、お前はエンドの近くに居ると良い、咄嗟の時は防壁で守ってやれエンド」


「了解ですわ」


「ま、待ってくれ、私は守られなくとも……」


「つべこべ言わない。さっさと行きますわよ!」


 守られる気はないと反論したかったガルニエだが、エンドに促されしぶしぶギルガナッザ向けて走り出す。

 無数の蔦が蠢き彼らに襲いかかるが、暗黒魔力で形作られたリスの体当たりで吹き飛ばされ、犬の自爆に粉砕され、刃の角を持つ鹿に切り裂かれる。

 ヌェルティスの魔法がエンド達をフォローし、守り、ギルガナッザの邪魔をしてくれていた。


「やるじゃないあの金髪」


「ヌェルは言動はおかしいが実力は折り紙つきだぞ。しかもまだ余力を残している」


「あ、アレでまだ先があるのですか!?」


 一度敵対しただけに、ガルニエは肝を冷やす。

 ちょっとだけの闘いでもかなり厄介なントロだと思ったが、予想を上回る存在だったようだ。あのまま闘って居ればあるいはこの魔法以上のモノを自分が食らっていたかもしれない。

 ガルニエは一人ぶるりと震えるのだった。


「しかし、ントロは凄いな。キス一つで覚醒か」


「元々使えた能力が封印されてるのだから、龍華も何かできるんじゃないの?」


「想像つかんな。自分はいつも通りのはずだからな。封印されたモノすら想像がつかん。エンドはどうだ?」


「私は多分複合スキルね。もともと全てのシンキングセルの力や特性を統合するために作られたのですもの、今は一つの属性ごとに区切ってしか使えてないですから」


「末恐ろしい気がするな」


「そんな存在すら斬り伏せた癖に良くおっしゃる」


 呆れた口調のエンド、龍華と同時に側面からギルガナッザ本体と思しき玉座に迫る。


「青龍乱舞!」


焼け恋がれし舞踊ブレイズ・ロンド


 龍華が玉座を切り刻み、エンドがその全てを焼却する。

 投げ出されたカルメラを、真正面から迫っていたガルニエが慌てて受け止めた。


「ご無事ですかアルテンリシアの魔女殿!」


 カルメラの状態を確認しながら声を掛けるガルニエ、その目の前では、玉座が完全に解体されていた。


「これで終わり?」


「その様子は無さそうだな。本体は何処だ?」


「ちょっと待って……ねぇ、その女の人から、蔦でてない?」


 座ってたせいで分かっていなかったが、カルメラの服から蔦がはみ出ている。そしてそれは、地面に伝っており、城全体にはびこる蔦の群れに繋がっていた。


「ッ! 付き離せガルニエ!」


「……え?」


「終わりだ馬鹿が」


 突然動きだしたカルメラ。その口が開かれ、無数の蔦がガルニエに襲いかかった。

 ガルニエは動けなかった。

 ただ、何が起こったのか理解できないまま、無数の蔦が突き刺さるに身を任せ、しばし呆然。

 助けようとした存在こそが敵だったと理解出来ないまま倒れ伏す。


「愚か者がッ」


 舌打ちと共に振るわれた鎌をやすやす避け、カルメラが人とは思えない跳躍力で距離を取る。


「本体は魔女に寄生して操る、か。なかなかに厄介ね」


「真空波斬!」


「あはっ。愚か者は貴様等だ! ここは我の体内も同意だぞ!」


「っ!? そういうことか!」


「え? なに、どういうこと!?」


 察した龍華がエンドの首根っこを引っ張る。

 意味が分かっていないエンドを思い切り放り投げた。

 ヌェルティスが開いた穴から投げ出されたエンドが慌てて振り向くと、龍華が蔦を足場に切り裂きながら彼女に迫っているのが見えた。


「先に脱出しろエンド! この城自体がギルガナッザ、本体はおそらく魔女自身だ!」


「げっ! この城って……うわっ、よく見ればこの城蔦で出来てるじゃない!?」


 それこそが事実。ギルガナッザはアルテンリシア家を覆うように蔦を這わせ張り巡らせ、自分で作った蔦の城に変えていたのだ。

 気付かれたことに気付いたギルガナッザにより、城が解体され、巨大な妖樹へと姿を変えていく。


「お、おおお? なんじゃこりゃぁ!? 城が木になった!?」


「ヌェルティス、コレが魔王ギルガナッザですわ」


「うわぁお、巨大獣は何度か見たが、こういうのは初めてだな。木の魔王か」


「エンド!」


 妖樹の合間から飛びだした龍華が手を伸ばす。

 エンドはそれをなんとかキャッチした。


「ギリギリですわね。無茶しないで下さる?」


「すまんな。不死身なのでこの程度は無茶にならんのだ」


 軽口答えてエンドの肩に片手を掛け身体を固定する龍華。


「改めてバケモノだな」


「どうやって倒そうかしら?」


「図体でかくなっただけの木であろう。燃やしてしまおう」


 ヌェルティスの身も蓋も無い言葉が即決で採用されるのだった。

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