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マイノアルテ・モルディアノ家2

「ちょっと! 入れないってどういうことよ!」


「申し訳ありません。この国は既にアリアンヌ領ではありませんので」


「はぁ!?」


「主の許可なく屋敷に入れる訳には参りません」


「ちょっと、私が主でしょ!? ロール・メルザンツ・アリアンヌ。あんたたち私の顔毎日見てるよね!?」


「わかっております。我々も戸惑っているのです。ですが、かの方が王族証明証を書き変えてしまわれた以上ここはすでに、モルディアノ領となっております」


「……モル……ディアノ?」


 真奈香とエンドはロールの呟きに二人の人物を思い浮かべる。

 確か、あの二人は屋敷に残っていた筈だ。

 つまり、残った二人がこの領地を乗っ取ったということになる。


「一つ聞きたい。ラナエ、王族証明証というのはなんだ?」


「私達魔女の身分を証明する王家の証、かな。最終的に奪われると王侯貴族としての権威を剥奪されて魔女の資格も……まさか、モルディアノはそれを狙って!?」


「オイコラテメェら! アリアンヌ家だろうが、他の領地に奪われて従ってんじゃねぇぞ!」


 護衛兵の服を掴み上げたのはボルガナザ。しかし、腕力を奪われた彼の拘束など直ぐに解かれてしまった。

 失った腕力と速度は戻ってはこなかったようだ。

 ボルガナザは自分の腕力が消えたことに今更ながら気付いて愕然としていた。

 変わりに、エンドが護衛兵の顔を掴み上げる。


「モルディアノの魔女は危険ね。今ここで潰すか明日まで拘束してから滅ぼすべきだわ」


「同感だな。証明証剥奪されれば魔女でもいられぬとなれば皆が領地から動けなくなる。手伝うぞエンド」


 護衛兵を投げ捨てアリアンヌ邸に飛び込むエンドと龍華。

 彼らは忘れているようだが、自分たちの魔女の護衛はどうするつもりなのだろう。

 溜息を吐いたヌェルティスの横を、シャロンが駆け抜ける。


「何をしているのですヌェルティス、行きますよ」


「お前が突出してどうする」


 呆れながらも後を追う。他のメンバーもこれは一大事だと気付いてアリアンヌ家へと突撃。

 ロールとボルガナザだけが屋敷の入り口前に取り残された。


「大丈夫、ボルガナザ?」


「いや、全然大丈夫じゃねぇな。お前はどうだ?」


「あはは……かなりショック、かな。これからどうしよう?」


 既に魔女としての権威を剥奪されている以上、魔女戦争に勝利しようと願いは叶わなくなる。

 しかもボルガナザは力を失い一般人以下の能力しかないントロとなった。

 これでは魔女戦争に参加など出来るはずもない。


「んー。流石に、無理かぁ」


「そもそもお前は何がしたかったんだ? 全員を殺して願う程の願いとか、お前の性格上なさそうなんだが」


「んー。いや、この魔女戦争のシステム破壊しようかなって。後世に残したいシステムじゃないでしょ、殺し合いなんて……」


「はっ。俺にゃ理解できねぇ願いだな。だが、お前らしいか……はぁ、悪りぃな、こんな弱っちぃントロでよ」


「んーん。あなたこそ。こんな騙し打ちされてるお人好しな魔女でごめんね。はー。貧乏くじひいちゃったなぁ」


 くるり、踵を返したロールはアリアンヌ邸入口から少し横にそれた壁に向かうとくるりと身体を入れ替え壁に背持たれる。

 そのまま俯き泣きだした。

 ボルガナザはそんな彼女に何もすることが出来ず、ただ近くの壁を殴り壊すしかできなかった。

 当然殴り壊すつもりではあったが、腕力が無さ過ぎたためにぺちんと音がなるだけ、むしろボルガナザの腕の方が痛かった。


 ローアたちが失意に暮れている時、ヌェルティス達はアリアンヌ邸を隈なく探索していた。

 といっても先行する龍華とエンドが手早くドアを開いて中を確認していくだけだが。

 御蔭でヌェルティスたちはぱっと室内を覗き見るだけで先へ行くことが出来る。


「兵士達が打ちかかってこんな。入口を封鎖しておったからてっきり攻撃して来ると思ったが?」


「ヌェルティス。それよりも最悪な結果になった場合の事を考えているか「あー、レウちゃん茉莉の口ーっ」煩い、一つしか口がないのだから喋るにはお前の口使うしかないだろう。少し黙れ。今大事な話をしているっ」


 館内を駆け抜けながらヌェルティスの隣に並んだ茉莉の口を使ってレウがさらに告げる。


「もしかしたら既に居らんかもしれんぞ」


「逃げたのか? だったらここを占拠する意味が……んん? 待て。奴らはアリアンヌ領を手に入れるのが目的ではないのか?」


「王族証明証。もしも、自分たち以外の魔女のそれを破棄できれば?」


「残る魔女とントロはモルディアノ家のみ……おいおい、奴等の目的はそういうことか!?」


「今までは暗黙の了解で奪おうとする者がいなかったのだろうな。随分杜撰に管理していたようだ」


 最後のドアを龍華が開く。しかし、そこで彼女は足を止めてしまった。


「ちょっと、何止まってるのよ! モルディアノの奴等いるんじゃないの!?」


 少し遅れていたエンドが追い付き室内を覗く。


「……いない?」


「既に脱出した後のようだ。後手に回ったな。そして……」


「どうやら最悪の予想が当りらしいな。アリアンヌ家から脱出するぞ」


 別の領地へと向かったモルディアノ家の二人にヌェルティスたちは新たな脅威を覚えるのだった。

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