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マイノアルテ・モルディアノ家1

「ふぅ、撃破完了、ですわね」


「すごいすごい。やるねーエっちゃん」


「あら、貴女だって魅了されながら相手を撃破するなんて凄いことをなさったじゃありませんか」


「えへへ。それ程でもないよぅ」


 思わず頭を掻く真奈香。


「なんだ。こっちは終わってしまったか」


「真奈香、無事なようでよかった」


「へ? あ、隊長!?」


 勇者撃破を終えた彼らの元へ、ようやくアリアンヌ領の街へとやってきたヌェルティス達が合流した。

 戦場跡の現場を見たヌェルティスが思わず腕を組んで不満げに呟く。

 龍華も敵性存在を探しているが、見当たらないらしい。


「あれ? 龍華ちゃん? なんで居るの?」


「真奈香か。白滝柳宮から聞いてはいたがお前も本当に来ていたんだな」


「うん。早く戦争終わらせて有伽ちゃんの元へ帰らなきゃ。んー。早く有伽ちゃん成分補給しないとアリカニウムがカツカツだよぅ」


「なんだそのなんとかニウムは」


「気にするなヌェルティス。お前で言う武藤薬藻と同じだと思えばいい」


「……納得した」


 納得したのか……思わず口から出そうになった柳宮だったが、日記に視線を落とすことで押し黙る。


「おいおい、どうするんだい真奈香、柳宮。ここに殆どのントロと魔女が集まっちまったぞ」


「ほんとだねぇ。皆仲良くなれそうだよ?」


「馬鹿を言うな。すでに勇者は全滅。魔女戦争再開だぞ。今この瞬間にでも殺し合いが始まったっておかしくない」


「……あ」


 ステラの言葉に全員が気付いた。

 互いに視線を向け、ントロは魔女の護衛に入る。

 ヌェルティスはシャロンを、ピルグリムはアルジャーノを、龍華はラナエを、フラグニアがメルフィーナ、ロールをボルガナザ、エルフリーデを伯爵、シャルロッテを茉莉が、ジルベッタをエンドが、ステラを真奈香と柳宮が守り、互いに相手の出方を伺いだす。


 ―― はーい。皆ありがとー。魔女戦争を再開しまーす。って言いたいとこだけど、流石に一所に集まり過ぎてるので今から始めるのは面白くなりません。ってことで明日までは殺害禁止状態のままにします。今日一日はゆっくり友好的に過ごしてくださーい ――


「正気か駄女神!?」


 思わずヌェルティスが叫ぶ。

 皆の思いも同じだったが、犠牲者はヌェルティスだけで、皆が押し黙る。

 ヌェルティスは謎の衝撃を頭に食らい、目が飛び出そうな一撃にもんどり打って転げ回る。


「あいだぁっ!?」


 ―― 駄女神はマロンの称号だから私いらないっ。同じにすんなーっ ――


 見えない何かに拳骨でも落とされたような一撃に沈んだヌェルティス。

 起き上がった時には皆から敵意は消えていたモノの、何とも言えない空気が漂う。


「はぁ。とりあえず、皆様アリアンヌ家へとご案内いたしますわ」


「あら、既に協力する必要性がなくなったのに、仲良くする意味がありますの?」


「もー、シャルロッテちゃん、意地悪言わないの。仲良くできるなら無理に敵なんてつくらなくていいんだよぅ「茉莉、お前はもうちょっと人との距離を置くようにしようか。押し隠された敵意くらいは察知できるようになれ。ダメ天使でもできたぞ」」


「とりあえずの落ち付ける場所が我が家しかありませんもの。嫌ならこの国出てさっさと別の領地に行きなさいよ」


 ロールの言葉に憮然としながらもシャルロッテが押し黙り歩き出す。


「あ、ちょっとどこ行くのー?」


「アリアンヌ家の家に向かうのでしょう。さっさと行くわよ茉莉」


「はーい。もう、シャルロッテちゃん素直じゃ無いなぁ」


 先行して歩き出したシャルロッテに付いて行く茉莉。その後ろ姿をシャロンがじぃっと睨みつける。


「シャロンよ、儂らも行くぞ」


「ええ。ヌェルティス、一つだけお願いがあります」


「ん? なんだ?」


「姉を討つのだけは、私にやらせて下さい」


 冷えた言葉で一言呟き、シャロンが歩き出す。

 あまり他人のいざこざには口を挟みたくないのだが、今回ばかりは深入りせざるをえないらしい。また面倒な相手に召喚されたな。と頭を掻きながら、隣に来た龍華と共に歩き出す。


「そう言えば聖よ」


「なんだヌェルティス」


「うむ、あちらの二人と知り合いのようだが、奴らは何者だ?」


「お前よりも未来に出会った妖使いの面々だ。少々失敗してな。シクタを放置したために地球から……そういえば今ぐらいの時期ではなかったか?」


「ん? 何がだ?」


「いや。もはや結果はかわるまい。それで……ん? どうした?」


 ヌェルティスと会話を続けようとした龍華に、エンドが寄って来た。


「いや、ちょっと知り合いッぽかったから、一応聞くけど、聖龍華でいいの?」


「うむ。そうだが、そちらは?」


「エンドよ。エンド・オメガ。そう。やっぱり貴女なのね。最初に会った時に凄く懐かしそうな顔をして来たから何者かと思ってたけど、そうかぁ。この時に初めて会ったのね」


「ふむ。私の記憶には無いしその話方からすると未来の私と出会っているのかな?」


「そうみたいね。なんかややこしいけど……そう。妙に優しくて、助けてくれたのは……」


「またぞろお人好しにも事件に関わったようだな聖。お主何年先まで生きるつもりだ?」


「トト様と再会するまでは生き続けるさ。……と、どうしたアリアンヌの魔女」


 アリアンヌ邸前で呆然と佇んでいるロールたちに気付き、歩みを止める。

 そのロールは、なぜかアリアンヌ邸の護衛達に侵入を止められているようだった。

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