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マイノアルテ・強奪の勇者1

「……はぁ?」


 強奪の勇者はうすら笑いを浮かべていた顔を驚愕に歪ませた。

 ボルガナザとエンドを相手にしようとした矢先の出来事だ。

 また魅了の勇者が女をゲットしやがった。と内心舌打ちしたのだが、その魅了の勇者の身体を少女の腕が突き破ったのだ。


 魅了が効かなかったことにも驚きだが、むしろ肉体をやすやす破壊する少女にも絶句である。

 魅了の勇者には靡かないよ。勇者様大好きです。そんなことをいいながら、彼の心臓を食べようとするかのように口元に持っていく少女。

 崩れ落ちた魅了の勇者はどうみても死んでいる。


「ちょっと真奈香! 何食べようとしてんのよ!?」


 慌てて彼女の手を蹴り上げたエンドにより恐ろしい捕食場面こそなかったものの、放置していれば恐ろしい光景が待っていたことは明白だった。


「あんっ。何するのエっちゃん。有伽ちゃんの心臓……あれ? 有伽ちゃんがいない? ついさっき全裸でボクの全て、真奈ちゃんにあげるねって、言ってくれたのにっ! 私思わず心臓奪っちゃって。食べようって、あれ? あれれ……?」


「あー。うん。一応魅了には掛かった訳ね。真奈香がかかって私達的にはラッキー、だったのかしら?」


「え? 魅了? あー、なんだぁ有伽ちゃんじゃなかったのかぁ。私、魅了に掛からないと思ってたんだけどなぁ。私の有伽ちゃん愛が魅了なんかに負けたのはショック」


 魅了が切れたようで、正気に戻った真奈香。

 魅了チートにより正気を失っていた女性陣も我に返ったようで、絶望に沈むモノ、泣き叫ぶモノ、自殺に走ろうとするモノが出始める。

 しかし、自殺時に走ろうとした女性を、冒険者が気力を振り絞り羽交い締めにして押し留める。

 離して、離すか。汚されても愛してるんだ。とかドラマ的な光景が生まれていたが、エンドと真奈香はそれを無視して闘いを始めたボルガナザと強奪の勇者に視線を向けた。


 強い。なんてもんじゃない。

 直進して腕力のまま力を振るうボルガナザを軽々上回る力で強奪の勇者がカウンターを叩き込む。

 彼がボルガナザに触れた瞬間、ぱぁっと光が一瞬灯る。


「ぐあっ!? な、なんだ? 触れられただけで動きが……」


「はは。今テメーから速度のパラメーター全部奪ってやったぜ。次はどのパラメーター奪ってやろうかぁ?」


「はぁ? 速度? 訳わかんねぇこと言ってんじゃねぇ!!」


「……あー、アレは駄目ね」


「触れたら強奪かぁ。私との相性は悪いなぁ」


「そう。ならあの三人娘の護衛してなさい。私がやるわ。霧雨の隔壁ミズル・ウォール


 真奈香に見学を促し、エンドは自身を包む結界を張り付ける。

 その間に動きが遅くなったボルガナザに触れ、何かを強奪する強奪の勇者。

 どうやら腕力を奪ったようで、見せつけるようにワザと攻撃を喰らってぺちっと頬にボルガナザの拳を受け、ニヤついた笑みで嘲笑う。


「ひゃはっ。すっげぇ気合いの入ったパンチだなぁオイ?」


「な、なんだこりゃ。俺の攻撃が、こんな……」


「次は体力か、防御力か。そんなに鍛えた肉体持ってんのにほぉら、紙装甲になっちまえや」


駆け抜ける閃光フラッシング・レーザー


「ッ!?」


 咄嗟に反応したのは称賛すべきだろう。

 エンドは感心しながらも次手を打つ。

 掌から生まれた光の筋が一度、二度と強奪の勇者に襲いかかる。


 慌てて避ける強奪の勇者。今まで手に入れた能力の御蔭で随分楽に避けられるし、危機察知も高いので避け損ねることもない。

 しかし、遠距離攻撃は厄介だ。


「次はテメーが相手か! いいぜそこの腕力バカより闘いがいがある。その便利能力、全て奪わせて貰うぜぇ!!」


 魔術師から奪った魔法を無詠唱で唱える強奪の勇者。さらにスキルを上乗せして身体強化。剣を引き抜き属性魔法を剣に乗せ、加速しながらエンドに迫る。


「食らえ、マクスウェルストラッシュ!」


「何番煎じの技よ。遍く全てを防ぎし壁よトランス・ルゥセントウォール


 防壁を生みだすエンド。飛んで来た一撃が一瞬で霧散する。


「なんだ? 防壁張ってんのにまた防壁?」


「用途が違うのよ。ほら、どんどん行くわよ! 真空の鉤爪エア・スラッシュ


「風か!」


 魔力障壁を展開し、強奪の勇者もこれを回避する。

 次第近づく二人。同時に近接戦闘の用意を行う。


「行くぜ!」


「こっちがね! 優雅なる火炎の灯エクセレンス・フレア


火炎弾を生みだし強奪の勇者に打ち込む。さらに……


焼け恋がれし舞踊ブレイズ・ロンド


 両腕に炎を纏わせ迎撃態勢を整えるエンド。

 そんな彼女へ、ついに強奪の勇者が辿り着く。


「そら、貰ったぜ! まずは防壁からだ!」


 ミズル・ウォールへと手を伸ばした瞬間だった。

 危機察知が彼に警鐘を鳴らすが既に遅く、結界に手を当て強奪しようとした強奪の勇者の手が削り飛ばされた後だった。

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