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地球・翼の勇者5

 ふぅ。と息を吐くジャスティスセイバー。

 思わず勝利後の決めポーズを取ってしまったが、決め終わった後に気恥ずかしくなって頭を掻きながら後ろを振り向く。

 アンは完全に破壊出来たようだ。


「っしゃ、撃破できたな」


 近づいて来た翼の勇者と思わずハイタッチ。

 テンションのままに動いた後で同時に自分達も敵同士だったことに気付く。


「って、何テメーはハイタッチしてんだよ!?」


「お前が手を出して来たからだろ。つかなんで地球破壊しようとしてんだあんたは」


「あ? そりゃチート能力くれた女神に頼まれたからに決まってんだろ。俺としては空飛んでみたいって思いが強かっただけなんだが、いやー、満足満足」


 どうやら自分の願いが叶った翼の勇者は地球壊滅は二の次だったようだ。


「それよりあの仮面なんとかいう奴等、放っといていいのか? あっちにもいるんだろ」


 そうだった。

 ユクリたちに突っかかって行った奴らがいるのだ。自分の敵が片付いたなら急いでいかないと。

 と、思ってふと気付く。

 もともと自分たちがここに来たのは翼の勇者を撃破するためだ。

 その翼の勇者を放置して仮面ダンサーアンを撃破しに行くのは本末転倒ではあるまいか?


 ユクリ達を見る。五体のアンに群がられて苦戦中のようだ。

 一人一体を相手にしているようだが、ゾンビと組まれると危うい場面が何度もあった。

 あまり時間を掛けておくわけにはいかないようだ。

 しかし、翼の勇者を放置するわけにも行かない。


「ん? なんだジャスティスセイバー……ああ。そうだった、お前の目的って俺を倒すことだっけか」


「今更過ぎるだろ。だが、そういうわけだ」


「いいのか? お前の知り合いが苦戦してるぞ?」


「それでもお前を見逃すわけにはいかないんだよ」


 バサリ、翼の勇者が翼を広げる。


「ンじゃあ、俺がここから退避すりゃ問題無いな」


「逃すと思うか!」


「おっと、ユクリとか言うのがヤバいぞ」


「何ッ!?」


 言われ、思わず振り向くジャスティスセイバー。

 ユクリはアンに魔法を打ち込んでいるところで、危険な様子はない。


「何処が危険……しまった!」


 気付いた時には遅かった。

 既に翼の勇者は空へと舞い上がったあとであり、ジャスティスセイバーが追うには遠過ぎる距離まで飛翔してしまっていた。

 彼を追おうとすれば、ユクリ達は自然見捨てなければならないだろう。


「クソッ。仮面ダンサーアン。あんたらのせいでもあるんだぞ、どうするつもりだ!」


 思わず毒づきユクリ達に向かうジャスティスセイバー。

 それを見た百乃が思わず叫ぶ。


「ちょぉっと!? こっちは無視ですか!?」


「スマンなんとか撃退してくれ。大天使ならなんとかできるだろ地上の最強くらいさ」


「力天使、あたしは力天使だからっ! 大天使より位低いからっ」


 叫ぶ百乃を無視してジャスティスセイバーは聖戦士たちの激闘場所へと乱入するのだった。




「ふぅ、なんとか脱出成功、だな。ジャスティスセイバーの野郎も追っては来ないらしいな」


 翼の勇者は安堵の息を吐く。

 既に時刻は夜になっていた。

 月明かりに照らされた彼の影が地面に長く伸びて見える。


「さて、地球壊滅を、とか思ったりもしたが、なんか俺が手を下す必要無く滅茶苦茶になってっし、俺は空の旅でも満喫しとくかな。つか地球破壊したら空飛ぶ意味がなくなるっつーの」


 もともと乗り気でも無かったので翼の勇者は地球破壊を放置して空を飛行する爽快さを楽しむことにし……


 パァン


「……あ?」


 自分の頭から何かが聞こえた。

 彼が認識出来たのはそこまでで、あとは空を飛ぶ事すらできず地表へと落下していく。

 撃ち落とされたなどと、彼が気付くことすらなかった。


 翼の勇者が落下したのを確認し、そいつは覗いていたスコープから眼を離す。

 漆黒のアーマードスーツに身を包んだ特殊部隊風の男は、肉眼で翼の勇者が飛び上がって来ないことを確認し、息を吐いた。


「任務完了……だな。本来であればラナリアに伝えておくところだが、乗っ取られたとなるとどうにもならんか」


 スナイパーライフルの解体を始めながら、暗殺者御影祐一は天へと視線を向ける。


「どうせ聞こえているだろうマロン。翼の勇者暗殺成功だ。残りを教えろ」


 ―― おお、祐一っちじゃあーりませんか。どこに居るのかと思えばそんな場所に。麁羅と一緒じゃなかったの? ――


「あいつも機兵乗りだからな。巨大化の勇者迎撃に向かったよ。それで、残りは?」


 ―― その巨大化の勇者だけかにゃー ――


「そうか。ならば俺はラナリア本部に向かう。シクタとやらが赤城達をどうしたか分かるか?」


 ―― あの二人は追い出されたっぽい ――


「そうか。無残に殺されたり幽閉された訳ではないのか。ならばまだ交渉の余地もありそうだ。日本政府の依頼で俺は行く。後のことは別の奴等に任せるぞ」


 ―― 了解ですにゃー ――


 天からの声に答えを返さず、スナイパーライフルの解体を終えた御影は暗闇に紛れるように消え去った。

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