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序・女神の勇者始動

 話は少し前に遡る。

 女神サンニ・ヤカーがジャスティスセイバーにより敗北し、神々に捕獲される少し前、彼女は他の神々が手を出せない固有空間を作りだし、そこに適当な世界から彼女の目的に合う人物だけをランダムで50人、引っ張り込んでいた。


「初めまして皆様。突然のこと驚きでございましょう。ですが皆様は選ばれたのです」


 ざわつく異世界人たちに、女神然とした態度で優しく微笑む。


「私は女神サンニ・ヤカー。皆様にはご迷惑をおかけしますが、異世界で暮らして戴きたいのです」


 初めは呆然としていた異世界人たちだったが、その一部がサンニ・ヤカーの言葉を聞いてにわかに色めき立つ。


「女神? 異世界? え? これ夢?」


「もしかして、異世界転移!? なぁ、俺強えぇぇぇぇぇできんの!?」


 質問した少年に、女神はにこやかにほほ笑む。


「はい。あなたが思うチートという能力をお一人一つづつ。場所は九つの世界から一つお選び頂き、やりたいことを自由気ままに行っていただきたいのです」


 微笑む女神に後光が差し込む。まさに神を体現するサンニ・ヤカーに少年たちがまず、殺到した。


「お、俺、剣! 剣を振りまわしたいっす! すげー剣士も顔負けなくらいに凄い剣士になりたい!!」


「ではあなたは剣聖の勇者として向かう世界のあらゆる剣技を自由に扱えるように……」


「拳だ! 俺はこの拳で拳法使いになりたい!」


「ではあなたには拳法の勇者として向かう世界のあらゆる拳法を自由に扱えるように……」


 剣聖、拳法、剛腕、回復、蹴り、神速、狙撃、魔眼に闇に巨大化などなど、願うチートは勇者の数だけ存在した。


「あの、歌とかでもいいですか?」


「はい。構いません。音波を増強することで様々な事ができる勇者となるでしょう」


「私は料理、大丈夫ですかね?」


「問題ありません」


 一部内政チートを目指す者もいたが、大半は武器チートや魔法チートを選ぶ。稀に魅了や調教、絶倫といった何を目的にしているかまるわかりの勇者もいたが、着々とチート持ちが増えて向かう異世界を決めていく。


 そんな中、一人の少女は顎に手をやり何かを考え込んでおり、女神に何を言うでもなくただ立ちつくしていた。

 そんな少女に、少年は声を掛ける。


「どうした? チートとやらを貰わないのか?」


「……ええ。何かおかしいのよねあの女神。九つの異世界にこんな勇者たちが向かったら向こうの世界は滅茶苦茶になりかねないわ。何のために私達はあの世界に送られるのか、そこがぼかされてる」


「ふっ。なんだ俺だけかと思ったがまともな思考の奴がまだいたか。丁度良い見てろ。化けの皮を剥いで来る」


 少年は傲慢な笑みを浮かべサンニ・ヤカーへと向かう。

 チート能力を求めるとばかり思っていたサンニ・ヤカーが彼に気付き招くが、彼は一定距離を保って立ち止まると、サンニ・ヤカーにニタリと不敵な笑みを浮かべた。


「サンニ・ヤカーだったか。異世界でチート、大いに結構。俺としてもそれは望むところだ」


「それは重畳。けれど、何か不満そうね?」


「あたりまえだ。向かう理由も聞かされていないのに、勇者となって異世界転移? 後は好きにしていい? あんた……本当に女神か?」


 少年の言葉にサンニ・ヤカーの笑顔が固まる。


「お、おいおい、俺らチート能力貰ってんだぜ? 女神じゃなかったらなんなんだよ?」


 剣聖の勇者が呆れた声を出す。事実、彼は既にチートを受け取ったようで、剣を振るって自分が出来ることを探っている最中だ。


「サンニ・ヤカー。俺の世界じゃあんたの名前さ、疫病と災厄の魔神って言われてんだ」


 喧騒が止まった。

 探るような視線がサンニ・ヤカーへと集中する。

 顔を伏せた女神が不気味に見えた。


「大体九つの世界で自由にしていい? チートも調教やら魅了やら絶倫やらヤバいのいるじゃねーか。それってよ、向こうの世界むちゃくちゃにしてくれって言ってるようなもんじゃねぇの?」


 ごくり、誰かの喉が鳴った。

 不気味に沈黙する女神からの返答はない。

 しばし、静寂が周囲を支配する。

 だが、不意に、女神の口がニィと歪んだ。


「フフ……ククク……アハハハハハハッ! 御名答~ッ。頭の回る人は好きよ。私の思い通りに動いてくれる奴はもっと好き。そう、その通り、あなたたちは私の勇者。九つの世界に壊滅的打撃を与えてほしくて呼んだのよっ!!」


 いいわけなどするつもりもなかったらしい。嗤いだした女神は少年に視線を向ける。


「ええ、ええ。私を虚仮にしてくれた神々が管理する世界にね、貴方達を送り込んで、奴らの慌てふためく顔が見たいのよっ!」


「俺らに神に殺されろって?」


「まさか? やるなら徹底的に。あなた達には神殺しの力を与えて送るわ。つまりその世界の神は直接あなた達を殺すことは不可能。降りてきたら逆に殺してもいいのよっ! だから神を気にする必要などなし。異世界で好きなように力を使えばいい。毒殺虐殺何でもござれ、ハーレム展開? もちろんありよ!」


 女神の変貌に皆が付いて行けていなかった。

 だが、少年一人はククと肩を振るわせる。


「そうかよ。そういうことかよ女神様ッ! いいね! あんた最高だっ」


「そうでしょう? 異世界からどうしようもない屑と言われてるあなた達をわざわざチョイスしたのよ。別世界で自由に人生を謳歌できる。前の世界のように虐げられることもない。身分の違いに嘆くこともない。公権力に屈する意味もないっ!! 気に入らない者は全部破壊してしまえばいいのよ!!」


 そう、女神の勇者として召喚されたこの50人。ただの民間人ではない。

 鬱屈した思いから弾けられる場所を常に探している、ちょっとの誘惑で悪に転がる人種ばかりなのだ。だから、女神の行いに対し、そんな事はダメだ! なんていう奴など居はしなかった。

 全ての勇者たちが女神の願いを受け入れ、むしろやる気を見せ始める。


「すげぇ。いいじゃないか。俺は最後でいい、考えさせてくれ」


「構わないけど時間は少ないわ。出来るだけ早めにね。それと女神の勇者同士では争えないようにしてあるから、味方殺しのスキルは無理よ」


「ふふ。私も疑問が氷解してよかったわ。じゃあ女神様、私には時間停止チート、お願いできる?」


「ええ。喜んで」


 こうして女神の勇者50人が神々の世界へと放たれたのだった。


 -------------------------------


 世界:マロムニア

 勇者:最強、回復、蹴り、絶倫


 世界:アンゴルモニカ

 勇者:拳法、剛腕、人間爆弾、霊体


 世界:グレイシア

 勇者:増殖、知識創造、鋼鉄、融合、料理、錬成、飛行、操船


 世界:ペンデクオルネ

 勇者:剣聖、破斧、神槍


 世界:ミルカエルゼ

 勇者:猛毒、大魔導師、歌、瞬間移動、爆炎、神弓、ボックス、錬金


 世界:マイノアルテ

 勇者:魅了、強奪、時間停止、神速、狙撃


 世界:モルグドラハ

 勇者:多腕、防壁、機械兵団


 世界:ヘリザレクシア

 勇者:幸運、魔人、暗殺、調教


 世界:地球

 勇者:カード化、調伏、魔眼、翼、巨大化、疫病、武器、虫、闇、ゾンビ化


 ???

 勇者:???

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