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地球・時空転移の勇者4

「クソッ、なんなんだよ。ここ地球だろ。滅茶苦茶にするってどんだけ遡らなきゃいけねぇんだよ!」


「成る程、恐竜時代まで逃げて来たか」


「マジか!?」


 折角逃げたというのに、目の前にはタキシードを着た自称時空王を名乗る男。

 手にはピストルのようなモノを持っている。

 仮面舞踏会などで被る仮面を装着しているためその容姿はよくわからないが、自分にとって敵対する存在であることは時空転移の勇者にも理解できた。


「しかし、この時代は不味かったね」


「どういう意味だ?」


「恐竜絶滅の時代だよ。そら、空を見てみるがいい」


 言われるまま、思わず空を見上げる。

 黄金に輝く巨大な石が地上へ向けて降り注がんとしているのが見えた。


「時空鉱石エアメタルの塊、通称神の箱舟による隕石衝突だ」


「あ、なんだそりゃ」


「メルト、そしてルストと呼ばれしウイルスが到着したのさ。さて、私はさっさと逃げさせて貰うよ。感染したくも無いのでね」


「どういうこ……おいっ!?」


 言うが速いか時空王は時空を転移したようで目の前から消えてしまう。

 遥か遠くで隕石が落下した。

 物凄い音と衝撃波が世界へと広がる。


「マジかよ。すげ……おい、おい何だありゃ?」


 水蒸気のような靄が噴き上がる。遠目に、その靄に触れた恐竜の身体がさらさらと消失していくのが見えた。

 あるいは、逃げる首長竜が溶け出し、やがて地面に水溜りのように沈んでいった。

 よくは分からない。しかしここに留まるのはヤバい。

 時空転移の勇者は迫り来る靄の群れに、慌てて時空転移を行った。


「ダメだ……過去はダメだ。地球の過去だと龍華や時空王やらよくわかんねぇ靄が出現して危なすぎる。やるなら、ああ未来。あの時代より未来しかねぇっ!」


 そして彼は飛ぶ。時代は21××年頃。あの時代からは二世代程先の時代だ。

 龍華はいるか? いるかもしれないが徐々に時代を上げて行けば奴が居ない時代もある筈だ。そこで地球を滅ぼす。その後は彼がやりたいように世界を改変すればいい。

 たとえば気に入った女を時空転移でそこに連れて来てハーレムを作るとか。気に入らない誰かを連れて来てサバイバル生活をさせてそれを見て楽しむとか。

 欲しい食料は好きな時代から手に入れて来られる時空転移最高である。


 転移が完了する。

 ここはどこだろう? 日本であることは確かだが……

 時空転移の勇者が周囲を見回す。

 アスファルトではなく煉瓦で埋め尽くされた道を一般人だろう無数の人々が歩いている。

 周囲の建物にオシャレ感があるので街自体の景観を楽しむ場所なのだろう。

 近くにはカフェテラス。

 優雅に紅茶カップを傾けている龍華がこちらを見つめていた。


「やはり居るのか聖龍華……」


 彼女は連れといるようで、赤髪プチツインテールの少女が龍華の視線の先を追って時空転移の勇者に気付く。


「龍華、アレ知り合い?」


「今回ここに来た目的だ。有伽はここで待っておくと良い。それとも何か用事はあるのか?」


「まぁ、夏季休暇中だから暇ですけどねー。あーレモンティおいひぃ」


 両手で頬を支えてストローを口に咥えた有伽が至福の顔をする。

 そんな彼女を一瞥したあと、龍華が立ち上がった。


「さて、どうするかな時空転移の勇者。どのくらいの転移をしたかは知らんがこの時代で好き勝手はやらせんよ」


「こちらこそ、テメーが居る時代は放置だ。さらに未来に転移させて貰うさ。じゃあなぁ!」


 結局敵対することすらなく転移する。

 2000年代はまず奴がいるだろう。ならば少し時代を送って3000年代だ。


「クク、どうだ龍華め。この時代なら貴様がいることはあるまい」


「残念だったな。後ろに居るぞ」


 声は直ぐに掛かってきた。

 もはや何度目の邂逅となるだろう。

 各時代、彼が行く場所行く場所必ずと言っていいほど龍華が先回りしている。

 振り向けば、そこには龍華だけでなく金髪の小柄な少女が立っていた。

 憮然と佇む彼女は不満げな顔で時空転移の勇者を見て来る。


「コレが最後の勇者? 全く魔女戦争とかいうのが終わったと思ったらお前と一緒にまだ勇者退治とか、お兄様とラブラブ生活送りたかったのに。本当に邪魔だわ女神の勇者共」


「そういうなエンド。こやつらが地球にとって邪魔者なのは今に始まったことではないからな」


 この時代でもまだ存在するのか。思わず呻く時空転移の勇者。仕方ない。こうなればさらに1000年時代を越えてやる。

 幾ら不死とか言っても毎回毎回自分の出現位置には居ない筈だ。4000年代が駄目なら5000、次は6000。1000年単位で転移していけば龍華の居なくなった世界があるかもしれない。こちらはいくらだって時間を転移出来るのだ。焦ることはない。

 エンドが掌を向けて来たので攻撃が来る前に退散する時空転移の勇者だった。

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