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地球・時空転移の勇者3

「待っていたぞ小僧」


「またかよ!?」


 何度目の転移だろうか?

 過去に何度も戻り明治、江戸、安土桃山、鎌倉、飛鳥と時代を遡る時空転移の勇者。しかし龍華はその度に彼の転移場所で待っていた。

 まるでその時代。その瞬間に彼がそこに現れる事を理解しているように的確に彼の出現と同時に斬りかかってくる。


 安土桃山時代では信長が背後にいたし、義経や弁慶と連携を組んで攻撃して来た時もあった。

 厩戸の皇子と呼ばれる後に聖徳太子と呼ばれたらしいおっさんと一緒に居た時もあれば、空海とかいう僧侶が御経を唱えて来てその横で龍華が呆れた顔をしている時間帯もあった。

 それでもどんどん時間を遡る。


「ここならどうだ!」


「残念。奴に告げられた貴様を倒す者はここにいる」


 背後からの声に振り向く。赤子を片手に抱えた龍華が立っていた。


「お、おいおい、ここ邪馬台国とかそんな時代だぞ? なんでいんの?」


「なぜ? と言われても。黒の聖女を名乗る女がお前がここに来るから倒せと言われたから来たのだ。時間的に間に合わんかと思ったので先行して来させて貰った。ほら、仲間が追い付いたぞ」


 龍華の言葉通り、彼女の背後から幼い少女が息を切らせてやってくる。


「はぁっはぁっ。龍華殿、早すぎます。それに壱与ちゃんまで抱えたままは駄目ですよ。お子さんは私が預かります」


「そうか? では頼むぞ日向」


 やってきた巫女服の少女に赤子を手渡し、赤き鎌を振り被る龍華。

 赤子の泣き声が響く。

 渾身の一撃。時空転移の勇者は「ふざけんなっ」という言葉だけを残してさらに時間を転移するのだった。


「むぅ、逃したか?」


「これで、この時期の敵とやらは消えたのですね」


 らしいな。龍華は告げて息を吐く。


「全く、トト様の指令でなければわざわざ倭国まで来たりはしなかったぞ。曹操に拝礼などすることになろうとはな」


「私は龍華と会えて嬉しいけど? 壱与ちゃんも可愛いし」


 日向の言葉に頭を掻いて龍華は息を吐く。


「だが、やるべきことはやった。あの女の言う通りの敵は撃退したからな。後のことは知らん」


 龍華が踵を返し日向から赤子を受け取ると、彼女と共にその場を去るのだった。


 一方、さらに時代を遡った時空転移の勇者は、原始時代へとやって来ていた。

 さすがにここまでくると龍華も存在していないようで、周囲を見回しても誰も存在していなかった。

 直ぐ近くでは原人と思われる男が一人うっほうっほと歩いているくらいだ。


「ふっ。はは。どうやらさっきのが最後だったみたいだな。聖龍華。まったくもって面倒な相手だ。だが、この時代でゾンビ共が原人を駆逐すれば……」


「残念ですが、そこまでです!」


「は?」


 不意に、声が掛けられた。

 龍華に似た声に思わず背筋が凍る。

 後ろをゆっくりと振り返る。そこに居たのは龍華……ではなかった。


「こいつか、壱与?」


「はいっ。黒の聖女さんが言ってました。この時代は母の代わりに私がなんとかしてくれと!」


 何だこいつは?

 いや、こいつら、なぜか見覚えがある?

 時空転移の勇者の前に現れたのは四人の男女。そしてなぜかトリケラトプス。


「鎖無、無茶しちゃダメよ。時空王にも警戒しなきゃいけないんだからっ」


「分かってるよ郁。でもこの無双君Zなら相手も無力化できるはずだ」


 なぜ? 人間がここに居る?

 時空転移の勇者は相手の話を聞かず、ただただ呆然としていた。

 この時代は原始時代。断じて日本語を話せる存在がいるはずがないのだ。


「時空転移、あんただけだと思うなよ」


「チッ、まぁいい。貴様等程度ゾンビ共で……」


「残念。そこまでだ時空転移の勇者君」


 ゾンビを召喚しよう。そう思った次の瞬間、後頭部に冷たい鉄の塊が押し当てられた。

 カリチ、安全装置が外される。


「お、おいおい。まだ居たのかよ」


「初めまして。私の名は時空王。悪いがそちらの女性は訳ありでね、君のような腐った輩に攻撃される訳にはいかないんだ」


 このままではまずい。

 時空転移の勇者は慌てて転移を発動させる。

 その場から消えた時空転移の勇者を確認し、タキシード姿の男はふぅと息を吐いた。


「壱与。我が愛しき妻よ。あまり無茶をしないでくれないか? そんなだから君はあの時代で死んでしまうのだ」


「そんな先のことなど知りません。日向姉様と卑弥呼様の仇、貴方は絶対に許しませんッ」


 時空王と名乗る男は壱与の言葉を聞いて押し黙り、反論しないままその場から消え去った。


「鎖無様、時空石を。次の時代に飛びましょう。時空王の横暴、これ以上許すわけにはいきません」


 そして彼らもまた。金色の石を取り出し掲げると、その場から消え失せるのだった。

 その光景を見続けていた原人の男は意味のわからないモノを見たようで、しきりに小首を傾げ眼をしばたたかせていた。

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