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序・地球

 地球とは言っても数多存在する。

 第四次元に存在する初代とも呼べる地球を管理する神は、自分の思惑とかけ離れた進化をしてしまった地球を放置することに決め、他の神々によりこの地球を参考にした地球モドキや内部で思案されたゲームなどの世界観を模した世界も作られ始めた。


 そんな地球にある日本という国は、日本政府を駆逐する勢いで日本を席巻した秘密結社ラナリアの支配下にあった。

 といってもラナリアの首領と裏の首領は既に異世界に行っており、実質崩壊した秘密結社と言っても差支えはなかった。

 ラナリアのブレーンである機械兵インペリアがシステムを構築し、首領が居らずとも問題無く仕事が回るようにしているため今のところ綻びはない。

 ラナリアに高額で雇われた為にそのままラナリア新首領に就任することになった存在がてきぱきと指示をだしていることも大きな理由である。


 ラナリア首領の恐怖政治で現場の暴走が引き締まっていたのも、新首領の能力・解体の御蔭で問題無く引き継げているし、量産型ハルモネイアや量産型インペリアによる粛清も使えるため組織自体が瓦解することはまずないといえる。


 ラナリア新首領に就任した武藤薬藻のクラスメイトが一人、赤城哲也は同じくクラスメイトの渡有譜亜と日本毅と共に、本日ラナリア最上階で落ち合っていた。

 哲也が二人を呼び寄せたのだ。

 本来学業に忙しい大学生の筈なのだが、毅は度重なる有譜亜の妨害により落第していた。


 苦学生となった毅は仕方なく就職を選び、有譜亜とともにここ、ラナリア最高幹部の一人として働くことになってしまったのである。

 しかも、この闇医者赤城哲也の下で下働きである。なぜこうなったのか今でも自分の人生を悔やんでも悔やみきれない。折角二度目の人生だというのに失策であった。

 そもそもが母親が有譜亜を彼女だと勘違いして事あるごとに家に呼び込み外堀を埋めて来るせいだ。その誤解を解こうとやっきになっていたせいで勉強が疎かになり大学進学をあきらめることになったのである。


「すまんな。緊急招集を掛けさせて貰った」


「分かってる。駄女神が天の声使ったからだろ」


「マスター。自分の知り合いやラナリア所属の怪人、正義の味方たちに連絡していると桃栗マロンが言っておりましたが……」


「ああ。確認したが確かにこの世界に邪神の手先が来ている。先程八神経由で天使たちとの共闘を取りつけた。また聖の知り合いらしいブエルという魔王経由で魔族共の協力ももぎ取った。今回の闘いは前回闘った天使と悪魔を味方につけての総力戦だ」


「それ、女神の勇者とかいうのが可哀想になる戦力だな。大天使とかソロモン72柱の魔王が人間と協力して襲って来るんだろ?」


「そうなのだがな。流石に一筋縄ではいかんらしい。見ろ」


 部屋の中にある巨大モニター画面に二人の視線を向ける。

 インペリアが彼らの動きを感知してモニターを操作。

 そして地獄がモニターへと映し出された。


「これは?」


「この世界の現状。つまり、アレが女神の勇者共だ」


 モニターに映っているのはどこかの街だった。

 黒い靄が楕円に広がり、その横に男が一人。

 見るからに異世界人丸出しのルックスである。

 草臥れた靴によれよれの服。どこかの村人か物乞いといった少年と、現代人と思しき服装のメガネ男が何やら話をしている。

 その横にある黒い靄から、一体、また一体とこの世の者ならぬ亡者たちが這い出て来る。


「お。おいおい、アレって……ゾンビ?」


生物災害バイオハザードですね」


「全くナーガラスタと同じことを考える奴が地球で死人返りを使って来るとな」


「被害は?」


「分からん。正義の味方の数人から見せられたこの映像は一時間前のものだ。今はどれ程被害が拡大しているか。それに勇者はこいつらだけじゃない。この地球に10体。まったく嫌になる。金にもならん敵など害虫でしかないぞ」


「おかしいですね。私の知る未来ではこのような勇者たちは存在すらしなかった筈ですが」


「お前の来た未来はクラスメイトの生き残りが俺と聖だけだっただろう渡。だったら問題はない。これはジャスティスセイバー。河上誠の奴が生存したからこそ起こってしまった現象だ。恨むならあいつと駄女神に……そうだな。この被害は全て駄女神のせいだと公表しておくか」


 ―― ちょ、風評被害、ダメ、絶対! ――


 天から慌てた声が聞こえたが、三人は完全に無視することでスルーした。


「とにかく、皆と密に連絡を取るにしてもラナリア社員に指示をするにしても手が足りんのだ。お前達には今日からしばらく缶詰化してもらうぞ」


「臨時給金は?」


「マロンに頼め。俺はビタ一文出さん」


 金にがめつい哲也に呆れた溜息を吐き、毅は有譜亜に視線を向ける。


「……やるか」


「はい。邪神の手先等にマスターの愛する地球は壊させません」


「別に、地球を愛してはいないんだが……」


 哲也の呟きは当然ながら二人にスルーされた。

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