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地球・疫病の勇者3

 疫病の勇者は走っていた。

 後を振り向くが追って来る気配はない。

 有譜亜も仮面ダンサーアンも彼を襲って来る様子はないようだった。


「はっ、何だあいつら、勝手に潰しあってんじゃねーか」


 鼻で笑いその場に立ち止まる。

 荒くなった息を整え、周囲を確認。

 見知らぬ街、見知らぬ世界。

 彼にとっては異世界だ。この世界を疫病で壊滅させる。その為だけにここに来た。

 世界を壊滅させれば女神を自分の世界に戻してくれるという。それも疫病の勇者としての能力も持ったままだ。


 だから、世界よ死んでくれ。

 俺の復讐の為に滅んでしまえ。

 笑う。疫病の勇者は異世界で嗤った。

 この世界を壊滅させる。

 誰も知らない場所まで逃げて、ただ能力を発動し続けていればいい。それだけで地球は死の星と化すだろう。


「うん。まぁそう言う理由からね、君を生かしておくわけにはいかないんだ」


 ゾクリ。

 突然誰かの声が聞こえた。

 驚き周囲を見回す。しかし何処にも誰もいない。


「だ、誰だっ!? 何処に居る?」


「何処にでも。私は何処にでも居て何処にも居ない。世界の隅の隅に追いやられた古き神のなれの果てだよ」


 背後から聞こえた声に、彼は振り向く。そこには、人型の黒い靄があった。

 さらに背後に空間自体に亀裂が走り、裂け目から世界の先が見えている。

 漆黒。何も無いそれを見て、彼は全身を硬直させる。


 何だこれは? ナンだこいつは? 一体いつ何処から、どうやって現れた?

 それよりも何よりも、身体の奥底から湧き上がるこの恐怖感はなんだ?

 疫病の勇者は得体の知れない黒い靄の人型に畏怖を覚える。


「初めまして、そして地球にさようなら疫病の勇者。私はラスト。この世界の神の一人だ」


 大仰に、荘厳に、ラストと名乗る人型が告げる。

 逃げる等という思いは湧きおこらなかった。

 抗おう、等と言う思いは欠片もなかった。

 ただ、下された命を嫌だと思っても受け入れざるを得ない。自分が逆立ちしたところで絶対に敵う筈の無い存在からの除命宣言。


 ゆっくりと伸ばされたラストの腕が彼を掴む。

 世界に亀裂が走る。

 彼を飲み込む口のように、バクリと避けた裂け目に押し込まれる。


「やぁ、我が家へようこそ。歓迎するよ疫病の勇者」


 黒い人型がニタリと笑みを浮かべた。二日月のように裂けた口はまるで生者を引きずり込む邪神のようであった。


 ……

 …………

 ……………………


「これは、一体?」


 疫病の勇者は呆然としていた。

 目に映るのは漆黒の黒。

 その中にちゃぶ台が一つ。

 湯呑が人数分存在し、白い蛇頭の男と顔しかない風の邪妖精、黒い靄の人型が座っている。


「これは、一体……」


 もう一度、疫病の勇者は意味不明な光景に疑問を提示する。

 彼に応えたのは唯一ちゃぶ台から距離を取って存在する巨大過ぎる異常な生物。

 見るだけで正気度を削られるようなバケモノが巨大な爪で湯呑をつまみ、グガァァァァと意思疎通不可能な声を返して来たのだ。


「初めまして、僕はナーガラスタ。そっちのがアザトース。こいつはエスカンダリオだ」


「これは、何の集まりで?」


「世界から爪弾きにされた者たちさ。ラストが飽きるまではでることもできないだろうね」


「飽きる訳が無いだろう。なんてったって今まで数千万年一人で暮らして来たんだ。向こう数千万年は友人がいる生活を満喫したいものさ」


「ま、待て……じゃあ、じゃあ俺はっ」


「言っただろ。諦めろ、と」


 白い蛇がニタリと笑った。


「ま、ラストが暇潰しに作ったらしい寄り代の生活でも観とけよ。テレビみたいでこれはこれで退屈はしないもんだ」


 何しろ人の一生がリアルタイムで流されているのだ。気になる存在の生活を見て楽しむという娯楽はこの何も無い世界においては唯一の楽しみであると思われる。


「ま、座れよ新入り」


「ふ、ふざけんなッ! 俺は女神に選ばれた勇者だぞ!? こんな辺鄙な場所に連れて来られるいわれは……」


「我は魔王四天王の一人エスカンダリオであるぞ女神の勇者」


「僕はその女神と同じ神様のナーガラスタだけど?」


「私は地球の神の一柱ラストだな。ちなみにあそこのアザトース君も古き神の一人らしいよ」


「そ、そんな事聞いているのではないッ。俺を罵った奴らの世界を滅ぼすために俺は……」


「ね、ね。言った通りだろナーガラスタ君。彼絶対話が合うって」


「ただの傷のなめ合いじゃねーか。まぁ暇だから話聞いてやるけど。僕やラストが受けた迫害より下回ってたらどうなるかわかってるよな?」


「な、何を言って……」


 戸惑いながら、疫病の勇者は身の上話を彼らに告げた。

 そしてお返しとばかりに彼らの身の上話を聞かされ、そしてラストのお友達がまた一人……増えた。 

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