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地球・疫病の勇者2

 有譜亜は右腕をセイバー、左腕をショットガンに換装し仮面ダンサーアンと対峙する。

 既に疫病の勇者の背中すら見えない状況で、追うのは絶望的だろう。

 アンはそのことをどう理解しているのだろう?


 疫病のせいで人々が死んだ時、この正義の味方はどう思うのだろう?

 それとも本人が言うとおり、本当にただの怪人としてどうでもいいと思っているのだろうか?

 そうであるのならば。


「見損なうぞ仮面ダンサーッ」


「巨悪がある。それを前に小悪党になど構っていられんのだよ」


「貴賎を説くか!」


 巨悪とは何か、有譜亜は激高しながら考える。

 こいつは曲がりなりにも正義の味方。ならば彼女が動く意味は必ずある。

 ラナリアに敵対すると言うのならば、ラナリアに敵が居るのだろう。

 その巨大な悪を倒すため、この勇者襲来という状況を利用したのだ。


 ラナリアに所属する怪人、正義の味方、かつての仲間である仮面ダンサーの姉妹たち。その全てを敵にして。

 だが、今のラナリアは赤城が指揮を取っている。残党狩りなどする意味が無いはずだ。

 他に何がある?


 毅や哲也が巨悪の肩棒を担いでいる? それはまず無いだろう。

 ならば何が……

 いや、それがたとえあったとしてもだ。目の前で人々に病魔を振りまく疫病の勇者を放置してでも自分を無力化しようとする意味が分からない。

 いや、それよりも、説得すらしようとしないということは、有譜亜を納得させられるだけの根拠が無い。ということだろうか? それかおおよそ納得できない理由で動いている?


「どちらにせよ、敵対してきた以上、後で冗談でしたでは済ませません」


「こちらも相応の覚悟は出来ている」


「では、ラナリアとエレナークの全面戦争。地球から正義の味方と怪人が消えかねませんよ?」


「むしろ問題はあるまい? 正義の味方も怪人も、全てが無に帰れば普通の人間の世が訪れる。人に過ぎた力は本来必要無いだろう」


 跳躍して来たアン。空中で身体を入れ替え有譜亜向けてダンサーキックを披露する。

 ショットガンで撃墜を試みるが散弾銃を弾きながら鋭い蹴りが襲って来る。

 バーニア噴射で緊急回避。

 前方に身を低くして加速し、旋回しながらさらにショットガンを打ち放つ。


 アンの装甲を破るのは難しいようだ。

 舌打ちしてガトリングランチャーからメガランチャーへと切り替える。

 セイバー状の右腕も換装。

 どうせ相手にダメージを与えられる武装ではなかった。

 セイバーからレーザーソードに。離れた場所から切り裂いてみるがアンに切り傷が付くことはなかった。


「データベースにも登録されてましたが、デタラメな能力値ですね。ただの機械ではないのですかアン」


「ただの機械だったのは破壊される前だ。天魔大戦時に破壊されたからな。仕方なく協力者が持って来た素体でこの身体を作ったよ忌々しい」


「協力者?」


「リディウと名乗っていたよ」


「首領ではありませんか」


「奴は死したあとも無数の自身を異世界に放っていてな。もはや駆逐も不可能と判断した」


「何をしているのよあの人は……」


 まさかエレナークを支援したのがレウコクロリディウムの一人だとは、思わず有譜亜は頭を抱えるのだった。

 だが、そうなるとこのラナリアとエレナークの激突に違った意味が現れてくる。


「そう、つまり、未だ世界はあの人の手のうち、我々は盤上の駒と言う訳ですか」


「そういうことだ」


「何を目的としているのか、我々と闘う必要はあるのですか?」


「当然だ。敵の黒幕を引き出さなければならんからな。表に出て来て貰うには完全にラナリアを壊滅させる必要がある」


「……その話、信用してもよいので?」


「信用するかどうかはどうでもいい。ただ、お前には死んでもらう。それは確定しているだけだ」


「そうですか、残念です」


 理由は不明、目的は理解はした。

 それでも有譜亜を破壊するというのならば、有譜亜も黙ってやられる訳にはいかない。

 それに、どんな理由があろうとも正義をなさなくなったアンを許せるわけがない。


「仕方ありません。任務中断。最優先事項を仮面ダンサーアンの破壊。及び本体の撃破。申し訳ありませんが、貴方に出張って貰いたく思います、疫病の勇者は、貴方に託します。あなたの愛するこの地球を、救ってください古き神」


 ターゲットをアンに変更した有譜亜は不意に虚空に視線を向け告げた。

 返答は無かった。ただ、空に出来た小さな亀裂が、ゆっくりと消えていったのだけを見届ける。

 有譜亜は視線をアンに向け、対仮面ダンサーアン用の戦闘パターンを組み上げる。


「マスターからは貴女とは闘うな。万一敵対した場合、これで闘えば勝つ可能性は出てくる。そう教わっております。勝負と行きましょう。現世最強のヒーロー」


「良い顔だ。沈め未来の機械。貴様が生きるにはこの世界は早過ぎる」


 構えるアン。相手の気迫が自分に向けられたことで改めて気合いを入れ直す。

 双方相手を破壊すると決め、必殺の一撃を叩き込むため突撃体勢に移行する。

 だらだら続ける気はない。決めるのは一撃、最大級の一撃で破壊してみせる。

 有譜亜は脳裏に一瞬毅を思い浮かべ、必ず帰ると誓いを立てるのだった。

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