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モルグドラハ・機械兵団の勇者3

「そーれ、チェックメイトだ」


 首領が最後の一機を破壊し、目の前に現れた機械兵団の勇者を見据える。


「あ……う……まだ、まだよ!」


 気合いを入れてスキル解放。

 土塊からせり上がってくる新たな機械兵団。

 しかし、出現と同じくしてハルモネイアが切り裂き、ヘスティが怪光線で破壊し、アルベリカが魔法で纏めて破壊する。


 残っていた機械兵も夜叉丸やバグソルジャー、首領たちにより駆逐され、もはや数えるほどになっていた。

 新たな機械兵も一歩も動けず処理されてしまえば、機械兵団の勇者は手も足も出ない状況に陥るしかない。

 ついさっきまでの有利が一瞬でひっくり返り、機械兵団の勇者はありえない状況にただただ愕然とするしかなかった。


「な、なんで……こんな?」


「ふっ。貴様は軍団のなんたるかを全く分かっておらんなぁ」


「な、なによっ! 私が悪いっていうの!? 私の機械兵団は無限に生まれるのよ! 最強なんじゃなかったの!?」


「阿呆め。どれほど無限に生まれようと生まれる速度より破壊する速度が勝ればこうなるに決まっておろうが。そもそもがこんな雑魚兵団でこの面子を押さえられると思うな。こちらはむしろ手加減しているくらいだぞ?」


「なっ!?」


 首領の言葉に絶句する機械兵団の勇者。

 認められるわけが無かった。自分が窮地に陥るなどと。

 確定させるわけにはいかなかった。自分の作りだした軍団が弱いなどと。


 別の要因がある筈だ。

 我が軍団に欠陥などない。

 あってはならない。

 ならばなぜ……こいつらに負けるのか?


「だが、機械兵団の勇者か。なかなか面白い能力だなぁ」


 ニタリ、首領が笑みを浮かべた。


「そ、そう、そうよね! 良い能力よね」


 相手に言われ、自分が選んだ能力は間違いなかった事を確信する。


「ああ、良い能力だ。ぜひとも……我にくれ」


「……え?」


 次の瞬間起こったことを、彼女は理解できなかった。

 首領、レウコクロリディウムのクロリが突然迫ってきたと思ったら、無理矢理唇を奪われた。

 驚く機械兵団の勇者の口内に、何かが入ってくる。


「っ!?」


 慌てて首領を突き飛ばす。

 抵抗なく、むしろ意識すら無くなったクロリがどさりとその場に倒れ込んだ。


「え? 死んだ……?」


 倒れたまま微動だにしないクロリに意味が分からず警戒しながら彼女を見つめるが、立ち上がって来る気配すらない。

 胸元に耳を当ててみる。心音はなかった。


「なんか偉そうなこと言ってくれたけど、なによ、ただキスして自滅しただけじゃない」


 なぜ死んだのか、そんなことはどうでもよかった。

 自分が敵を一人倒した。その事が重要なのだ。

 あとは他の奴らを新しい機械兵を使って……


「ほぅ、なかなか面白いスキルだなこれは」


 ふいに、どこか聞いたことのある声でクロリの口調が聞こえた。


「え?」


 思わずクロリの身体を見るが、死体となった彼女が動くことは無い。

 ならば、この声はどこから……


「そら、これでどうだ?」


 機械兵を作ろうと意識すらしてなかった。

 なのに土の中から何かが現れる。

 機械兵。否、量産型ハルモネイアと言った方がいいだろう。

 ハルモネイアの姿を真似た機械兵が多数出現する。


「おお、素晴らしい。これはいい。女神の勇者の力、これは集めるのもアリだな」


「な、なにこれ……」


 身体が勝手に動き出す。

 倒れたクロリの身体を抱き上げ、自分から口付けを交わす。

 何か気味の悪いモノが自分の体からクロリに移ったのがわかった。


 身体の自由が利きだしたので慌てて顔を離す。

 するとクロリが動き出した。

 慌てて突き飛ばす。

 死体だと思ったがどうやら違ったらしい。


「いや、すばらしい。量産型ハルモネイアを自分で作れるとはな。この能力があれば我が力はさらに強くなる。気に入った!『機械兵団の勇者。否、イルティオーネ・メーディス。貴様は今より我が下僕となれ。我と我が部下たちに危害を加えることを禁じる。我の許可なく死ぬ事を禁じる。我が乗り移りたい時は潔くその身体を捧げよ』」


 クロリがそう告げた次の瞬間だった。

 皆と闘っていた機械兵団が動きを止めた。敵対すべき存在が居なくなったため攻撃を止めたのだ。

 意味が分からなかった機械兵団の勇者は、突然動きを止めた機械兵たちに焦りを浮かべる。

 自分は今、どんな状態になった? なぜ、機械兵は突然攻撃を止めた?


「ちょ!? クロリだったか、貴様俺達への攻撃もやめさせろ!」


 バグカブトが思わず叫ぶ。

 バグパピヨンとほたるんを抜かしたバグソルジャーたちにだけ機械兵が向かっていたのだ。

 他のメンバーには攻撃が向かっていないのに、である。


「うむ? ああ、お前達は我が部下と認識していなかったな」


「あたりまえだ! 貴様の部下になど誰がなるかっ」


「あれ? 私攻撃されてないんだけどこれって部下扱いされてる!?」


「パピヨンはともかく部下になるつもりは毛頭ないぞっ」


「だろうな。だから、まぁ諦めろ」


「何がだ!?」


 バグカブトが思わず叫ぶ。しかし首領は彼らまで機械兵の攻撃非対象にする気は無かったらしく、その言葉を無視する。


「あーはいはい、『イルティオーネ・メーディス、私の友達たちにも攻撃はしないように』」


 見かねたラナが言霊を使う。

 そこでバグソルジャーへの攻撃を止めた機械兵達を見て、ようやく機械兵団の勇者は自分が敵に回した者たちの実力を理解した。

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