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第5話

日常生活は繰り返しの日々。バイトを詰めた週は学校では寝てバイトして、帰ってきてからゲームを夜通しやる。これが日常だった。

他クラスの委員長は相変わらず昼休みになるとやってくる。柊介と絢とはすっかり仲良くなっていた。


付きまとわれ初めてから1週間が経とうとした頃だった。


「ねぇ。律花。さすがに可哀想だよ。なんでそんな頑ななの?」

「……そんな大したことしてない」

「大したことじゃん。律花のその……対人関係を広めたくないみたいのも分かるけど、もうそろそろさ?ルティナちゃんの気持ちも考えてあげなよ」

「……めんどくさい」


柊介が可哀想だからと説得してきた。律花の口から漏れた言葉は本音だ。

目立たず何もせず淡々と過ごして行きたいというのが律花の本音で。ゲーム以外のことはほとんどがめんどくさい。出来ればバイトだってしたくはないが自分だけの生活ではないためそうもいかない。


『めんどくさい』と言えば諦めてくれるかと思ったが悪い癖だと言われ委員長が可哀想だと2人で責め立てる。2対1は卑怯だろ。いや3対1かタチが悪いな。


仕方が無いのでOKを出した。

さっそくその日の放課後行きたいところがあると連れ出された。タイミングがいいのか悪いのかその日だけたまたまバイトがない日だった。


連れて来られたのはオシャレで雰囲気のいいカフェだった。女同士も多いがカップルも多い。


「……なんでここ?」

「デートスポットで有名で行きづらかったんだもん。1回来てみたかったんだよねぇ」


そんなに念願だったのかすごく嬉しそうにはしゃいでいた。写真映えするところをいちいち写真に収めては眺めている。こんな姿を見せられては嫌味のひとつも言えなかった。


「……来れてよかったな」

「うん、律花くんのおかげ!!あ、お礼なので好きなの頼んでね!!私払うから、遠慮せず」

「コーヒーだけでいい」

「なんで?……あ。甘いもの嫌い?」

「そうじゃないけど、こういうとこ慣れてない」

「そっかぁ……。あ、じゃあ私が頼んでいい?半分こしよ」


律花はルティナが2種類食べたいだけだろと思ったが口にはしなかった。もう好きに任せることにした。


ルティナが頼んだのはフルーツアイスティーとコーヒー、チョコレートケーキとベリータルト。それらが手元に運ばれるとルティナはさっそくベリータルトを口に運び舌鼓をうつ。

律花もチョコレートケーキを食べてみる。甘すぎなくてちょうどよく美味しかった。それにしてもケーキなんていつぶりだろうか。最後に食べた時期が思い出せない程久しぶりだった。


無言になるかと思ったがルティナからゲームの話を振ってきた。柊介たちから聞いたんだろう。


「私もねゲームするの。でもあんまり上手くなくて嫌になっちゃうからそしたら実況みてる」

「実況って人がやってるの見てるだけのやつだろ?」

「そうだよ」

「弟も見てるけどアレ面白いのか?」

「自分が出来ない分すんなりクリアしてるの見るとスカッとするよ。律花くんも実況あげればいいのに」

「やってるときたいして喋んないから向いてないだろうし何よりめんどくさい」


彼女は話をするのも引き出せるのも上手くてケーキやコーヒーが終わってもしばらく話していた。区切りのいいところで店を出てもうちょっと付き合って欲しいと言うので川辺の公園のベンチに座った。


「ねぇ、あの夜どうして急に魔術を使ったの?使ってくれなかったら気付かないままだったけどでもあの日の魔術はなんか暴走してた感じがした」

「……属性は破壊だ。危なすぎてずっと使ってこなかった。あれは暴走で間違いないらしい」

「らしいって他に誰かいたけどその人達に言われたの?あ。言い忘れてたけど私も魔力者だから」


ルティナは軽く発言したがこちらとしては力が抜けた。声をかけてきた時点で言って欲しかったと思う。


「……最初に言ってくれよ。……あの異生物を倒すための部隊らしい。その人たちが説明してくれた」

「ごめんごめん。へぇーそんなのがあるんだ。きっと選抜された人達なんだろうね」

「いや人手不足らしくて募集はしてるらしいぞ」


募集の言葉にルティナは目を丸くした後ランランと輝かせる。その様子をみて、しまったと思った。


「え、じゃあやろうよ!!」

「しない。勧誘もされたけど断った」

「どうして?一緒に入ったらきっと大丈夫だよ!!ね、どこにあるの?」

「しらない」

「じゃあ調べる」


調べたところでどうせ出てこないと思ったのに検索したらそれっぽいのが普通に出てきた。そもそも検索されること自体少ないんだろう。そのサイトに載せられた地図はあのBARだった。


「多分ここね!!律花くんも早く」

「いや、だから……っ」


自我を持ち始めた子供のように話が全く伝わらない。あまりにも強引過ぎる。ルティナは律花の手首を掴んだ。


「俺はいかない。悪いけどルティナ1人で行ってくれ」

「そんなときばっかり名前で呼ばないでよ……。役に立てるんだったらやってみたいじゃない。やってみようよ一緒に」


ほんの刹那、心が揺らいだ。だけどすぐに過去に言われたあの言葉が脳裏に蘇って離れない。


「言っただろ!?属性は破壊だって。だから、俺の力は人を助けられる力じゃない!!……俺のせいでどうせまた誰か死ぬ。……足手まといになるだけだ……放っておいてくれ」


ルティナに掴まれた手首を逆の手で引き剥がしながら言った。


「……やだ。律花くんに何があったのか知らないけど私はあなたに助けてもらったのよ?足手まといって言うなら私もだし能力のことでもう嫌な思いばっかりするのは嫌だよ。せっかく活かせる所があるなら行きたい。律花くんも一緒にいてくれたら1人で入るよりずっと、ずぅーっと心強いな」


ルティナはなんとか自分の思いを伝えようと目を真っ直ぐ見て答えた。


邪魔だとしか思っていなかった能力が人のために活かせるなら入ってみたいと思った。そこには律花が必要不可欠で昔みたいに輝いていた律花を見たいしその頃のように戻って欲しい。一緒に戦って律花の助けになれたら恩返しできる。ルティナはそう思った。


「……降参するよ。今日のこともそうだけど本当に押しに強いなあんたは……」


必死の説得の効果あって律花は一応取っておいた名刺を取り出し連絡を取った。今時間が空いているのですぐ来て欲しいと言われ2人でBARに行った。


「連絡くれるの待ってたよー。女の子も来てくれてありがとう。ささ、座って〜」


BARには春さんと日向さんの姿。律花は銀の姿がなく正直ほっとした。一方ルティナはニコニコ笑ってはいるものの緊張しているのか喋らない。


「律花くん。もう一度確認するけど入隊でいいんだよね?さっそく手続き始めちゃうけど」

「……はい」

「うんうん!考え直してくれておじさん嬉しいよ!もしかして君のおかげなのかな?お名前と属性聞いても?」


日向は嬉しそうにニコニコとしている。日向の姿をみてルティナも緊張がいくらか和らいだ。


「白城ルティナです。属性は石化です。よろしくお願いします」

「よろしくね。俺は成宮日向です。隣の彼は坂本春。じゃあまずは隊について説明するね。春頼むよ〜」

「また丸投げかよ……。特区封魔警守隊、それが俺らの正式名称だ。特警と略されることもある。それで俺は副隊長をしている。隊長は日向だ」


それから春は活動目的と契約内容について話してくれた。


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