第4話
翌朝。布団を剥がされ、寒さで目が覚める。
「あれだけ言ったのに、また懲りずに明け方までゲームしてたんでしょ!!」
起こされて時計を見ると時間ギリギリだった。また慌てて支度する羽目になる。流石の雅騎も呆れていた。
「俺いなかったら遅刻の常習犯だよ。元々朝強くないくせに夜通しやる!?」
文句を言われながら弁当を受け取った。
登校中、頭が働かなくなりボーッとしていた。いつの間にか柊介が合流していた。
「……おはよ。夜中にゲームしちまってさ……。寝不足だよ」
今日は柊介も眠いようで会話もなくただ学校に向かった。
「おっはよー!!気付けよこのやろー!!」
「……っ。お前な……後ろから飛びついたら首閉まるだろ」
2人とも眠いせいで校門で待っていた絢に気づかなかった。拗ねた絢がいつもの倍の攻撃を仕掛けてきた。衝撃で軽く呼吸が止まったうえに首に手を回してぶら下がろうとする。…こいつは俺を殺す気か。
「えへへー。でも目覚めたでしょ?柊にもしていい?」
当の本人は悪びれる様子もなく誤魔化すように笑っていた。柊介にまでしようとしている。
「……柊介も寝不足らしい。やめといてやれ」
「えー。つまんないの」
やめるように言うと不満そうにぷぅっと頬を膨らませる。
「俺は目が覚めたからそれでいいだろ。……死ぬかと思ったが」
「え、嘘!?ほんとに!?目、覚めたの!!わーいっ、やり続けた成果が出たー!!」
絢は目をキラキラと輝かせて俺たちの周りを走り回る。……すごく単純……。絢の様子を見ていた律花は高校に小学生がいるような気持ちになった。
「ほら、もう行くぞ」
放って置くといつまでも走り回ってそうなので声をかけて教室へ向かった。
「あっ!!律ー、待ってよー!!ほら柊、行くよ!!」
律花の後から2人が追いかけてきたが柊介が連れ回されているようで少し可哀想だった。
そのおかげか柊介も目が覚めたようで午前の授業は寝ずに板書をして過ごした。
昼休み。柊介、絢と共に屋上に向かう。テラスがあり休憩出来る。見晴らしがよく生徒に大人気の憩いの場だ。昼休みしか解放しないので尚更人気の場所になっている。俺たちはいつもそこで昼食を取る。
絢が走ってくれたおかげで1番人気の見晴らしがいい場所に腰を落ち着けることが出来た。
さっそく弁当を開けて食べ始めた。
「うわぁ〜。今日も豪華ぁ……」
「ホントだっ。どれも美味しそう……」
2人が物欲しそうに見つめるので律花はものすごく食べづらさを感じている。毎日のことなのだがこれには慣れない。
「……今日はどれが欲しいんだ?」
「いいの!?」
2人同時に声を荒らげる。あげない日はないというのに毎回この反応だ。そして2人共、弁当の中身を凝視してどれを貰おうか吟味している。悩みに悩んで別々のおかずを一つづつ貰っていった。楽しみは最後派らしく自分の弁当の端に大事そうに置いていた。
律花にとっては普段通りの弁当なので美味しいとは思いつつも平然と食べていく。3人が食べ終わるのはいつもほぼ同時だ。
「またここに居たのね」
「あっ、ルティナちゃん!!俺らお昼休みは大体屋上にいるよー」
いい加減諦めたかと思っていたが昼食を食べ終わった頃彼女はまたやって来た。絢がニコニコと笑顔で歓迎する。
「そうなのね!いいこと聞いちゃった。ねぇねぇ、私もお邪魔してもいいかな?」
「いいよいいよー!」
律花が返事をしない間に勝手に話が進んでいる。柊介も歓迎している様子だった。律花は自分一人だけ拒否するのも嫌な感じが余計目立つので諦めてしまった。ルティナが参加したままお昼休みが終わってしまう。
腹が膨れたからか午後からは眠くなりなんとか耐えながら板書をしていたものの気付けば柊介は熟睡していて吊られて眠ってしまった。
寝ていたためあっという間に放課後になる。
今日もバイトがあるため眠気がないまま行けるのは都合がよかった。
「……律花くん。君は学校に寝に来てるの?」
「……色々あるんだよ」
「……そっか。ねぇねぇ!今日は!?」
「バイトだ」
「あら残念。偉いけど程々にしないと身体壊すわよ。頑張ってね!」
荷物をカバンに詰めているとまた委員長がやってきた。……本当に懲りないな。