第7話 僕にはそんな趣味ありませんから!!
ありえないことが起こりますが気にしないでください(笑)
勝負を挑まれた翌日
「おい! 聞いたか? あの柔道部の斉藤が谷口に勝負挑んだらしいぞ」
「まじで!! 勝てっこないってあんな野獣に」
「ねぇ? 聞いた? 谷口くん、斉藤君に目を付けられたみたい」
「うそ〜それって……」
登校すると昨日の話題で持ち切りであった。
「は〜」
「ほら、しゃきっとする」
と茜は僕の背中を叩いた。
「そんなこと言われたって……」
と気を落としながら僕は教室に向かった。
「おはよう、聞いたぜ、あの斉藤から勝負を挑まれたんだっけ?
ついてねえなお前」
「斉藤って誰だよ?」
(あ! 昨日の)
と思い出す僕
「お前知らねーの?」
「うん」
「銀法高校の、いや全国の高校の野獣、斉藤明。
柔道部主将で去年のインターハイでは2連覇を達成。
しかも決勝では背負い投げで相手選手の背骨を粉砕したとか。後……」
と倉本から情報を聞き怯える僕
「おい!! 龍二聞いてるか?」
「うん……」
僕は魂がぬけたような受け答えをした。
(ダメだ……力弱いし……)
といろんなこと考え初めて
「おい!! 龍二? あ! やべぇ魂が!!」
と倉本は僕の魂を急いで手で口に戻した
「まぁなんとかなるさ。龍二なら。あの山本を倒したんだから」
「あれは、確かに自分から立向っていったけど……」
「けど?」
「あ! なんでもない」
と僕は我に戻ったようにいった。
(あぶない、あぶない。バレるとこだった)
「まぁガンバレよ」
「うん……」
そして朝のHR
「今日は3時間目から急遽イベントが入りました。なので3時間目はグラウンドに集まってください」
「先生、イベントってナンですか?」
「それはね」
と先生は僕に目線をむけてこう言った。
「3時間目からのお楽しみ」
運命の3時間目外に出てみると
そこには大きなステージが設置されていた
「なんだこれは!!!?」
「あ〜これ?君と斉藤君が戦うところ。いわばリングみたいなとこね」
「伊織さん?何言ってるんですか?てかなんでこんなの作ってるんですか?」
「決まってるじゃない。おもしろいからよ。それにこれも提出してきたから」
「おもしろいって……これなんですか?」
伊織の手には1つの書類があった。
「これは催物届(生徒用)よ」
この書類を提出すればこの学校では、生徒主催でいろんなイベントを生徒会がバックアップして開催することができる。この学校の生徒の自主性を尊重する制度の一環なのだ。
「よくこんなの受理しましたね……」
「だってそうじゃない。学校始まって以来の落ちこぼれと言っても過言ではない君が
高校の野獣と戦うのよ?これはハン○チ王子対マ○君の決勝再試合や佐賀○の奇跡の逆転満塁ホームランよりも見ものだわそれに調査もできるし、一石二鳥だわ」
「なんかビミョーに古いし」
そして勝負の時がやってきた
僕と斉藤さんは特設ステージの上に立っていた
その周りには全校生徒が注目していた。
(今日は茜ちゃんをこいつから遠ざけるんだ。こいつの病気が移る前に。まぁ本気ださなくても余裕だけど)
(あ〜イヤだな。結構痛いんだろうな。逃げたいな。でも……)
と思う斉藤と僕。
「さ〜やってきました」
と突然聞き覚えのある声がした
(この声!!)
と思い周りを見回すと、今日の朝まで見た女の人だった。
[誰だ? あのキレイな人は?」
という男子生徒に
「なんかテレビでみたことある」
という女子生徒。
「かあさん!!」
「あの人、谷口の母親?」
「かなりキレイだな」
と見とれる男子生徒たち
「なんでここにいるんだよ!!」
「実況を頼まれたのよ、伊織ちゃんから。それに龍二の日頃のがんばりを見ときたいからね。だからといって龍二の応援はしないからね」
「あっそう」
(フリーとはいえこんなことまで引き受けるのか…… この人は……)
「それでは、お互いに一言を言ってもらいましょう」
「お前の魔の手から、みんなの茜ちゃんを守るんだ!!」
と断固たる決意に対し
「えっ、あっ、たぶんぼろ負けすると思いますけどがんばります」
と弱気でオドオドした態度の僕。
(あのバカ……)
呆れて茜はうつむいた。
「それではこの勝負の大まかなルールをこれから3本勝負を行います。それで先に2勝した方が勝ちとします。勝者は本郷茜さんからのキスです」
「お〜!!」
とどよめく会場
「ちょっと何決めてんのよ!!」
「いいじゃない? ヘルモンじゃないし。それにこれは伊織ちゃんが提案したのよ」
「そういう問題じゃないの!! 何考えてんのよ? あの生徒会長は」
「これで龍二君負けられなくなったね」
「美和子まで何言ってんの」
「大丈夫だって。龍二君ならやってくれるって」
「ではまず1本目はこれ!!」
と大きい垂れ幕が下りてきた。
「激辛スイーツ対決〜!!!」
「今から、2人にスイーツを食べてもらいます。しかし、全て激辛です。その激辛スイーツをどれだけおいしそうに多く食べられるかを競います。制限時間は15分です。多く食べられた方が勝ちです。さぁどれだけ食べられるのでしょう?」
ととてもおいしそうなスイーツが出てきた。見た目が
「なんかうまそうだな?」
「ああ見た目はな。でもお前、全部これ激辛なんだぞ」
という男子生徒。
「ちょっと生徒会長、これどう見ても懲りすぎですよね。よくこんなお金ありましたね?大丈夫なんですか?」
「大丈夫、その分部活の支給額を制限すればいいから」
(だから、いつも部費が少ないんだ……)
「谷口くん、まずはモンブランを、そして斉藤くんは洋ナシタルトをとりました。」
と1本目の勝負が進んでいく
そして一口食べる両者。
(うっカラッ〜!!! でもこれを乗り越えないと明日は来ない!!)
「なんのこれしき!!」
と一個食べ終えたが悶絶状態であった
一方僕は
(辛いよ〜こんなの食べられないよ)
と思い僕は周りを見た。茜がこっちをにらみつけているようにみえた
(あのクソ会長が!!)
とちょうど僕の後ろにいた伊織をにらみつけていた
(ヤバイ茜が僕をにらんでる……)
と僕は走思い込み一気にかき込んでテーブルにあるものを全て完食した
「谷口選手、なんと一気にペースアップしてきました、速い、速い!!
なんという速さ!!」
と実況する母さん。
(おもしろくなってきたわね)
「終了!! 斉藤、洋ナシタルト、谷口、モンブラン1個、イチゴのケーキ1ホール、巨大パフェ2個、チョコレートケーキ1ホール、シュークリーム5個、マンゴープリン12個。よって……勝者、谷口!!!」
「信じらんない……龍二って日頃そんなに食べないのよ? しかもいつも食べるの遅くて
いつも後片付けに困ってるんだから」
と茜は驚く。
「茜、それはあなたのおかげだと思うよ?」
「どういうこと?」
そういう美和子に対して首をかしげる茜であった。
「ということでまず1本目の勝負は谷口選手に軍配があがりました」
「まず、斉藤選手にインタビューしましょう。どうですか? 今の気持ちは?」
「すっごい悔しいです。あんなやつに負けたことが。この学校の恥に負けたんだから」
と苦しそうに斉藤は言葉を発した
(そこまで言わなくても)
と茜は思った
「もう後はありませんが?」
「たたきのめすまで!! 茜さん、待っててくださいね〜」
ものすごい笑顔で茜に向かって手を振った
「うっ気持ち悪……」
「すごい手振ってるよ?」
そして2本目の勝負が始った。
2本目は紙相撲対決。
紙の種類も大きさもステージに入れば自由。しかし少しでも
ステージからはみだしたら失格というものだ。
僕は大きい方がいいと考え、ダンボールを使ったのだが、大量に使ったせいか
ステージからはみだしてしまった。よって2本目は斉藤さんに軍配が上がった。
「あのバカ!! ルールちゃんと聞きなさいよ」
と茜が呆れていた。
「さぁ1対1になりました。なんとか踏みとどまった斉藤くん。しかし次の勝負が
泣いても笑っても最後〜」
と母さんの実況にみんなが盛り上がった。
「うお〜」
「最後の勝負はこれだ〜〜!!!」
と垂れ幕が下りてきたと同時にステージがバレーコートに変形した
一人バレーボールと書いてあった
「一人バレーボールとは、今から1対1でバレーの試合をしてしまいます。
コートの広さは通常通り。ネットの高さは2m。15点、1セットです」
最後となる3本目のバレーボール対決が始まった。
もちろん運動神経の欠片もない僕の圧倒的な不利なわけで……
どんどん点差が開いていく。
「13―2。斉藤選手の大量リードです。追い詰められていく谷口。龍二!!しっかりせんか!!!」
と檄をとばす母
(そんなこと言われても〜……こんなの勝ってこないよ!!)
「あのバカ、負けたら承知しないからね」
「応援に力はいってるわね」
「だってあんなゲス野郎とキスなのよ?」
「なら龍二君ならいいんだ?」
「なんでそうなるの? そんなこと一言もいってないでしょ?」
と顔を赤くする茜
(茜ったら)
と美和子は笑顔で茜を見た
(そうよ!! ファーストキスの相手は決まってるんだから)
「これはどうだ」
とスパイクをうたれ斉藤のマッチポイント。
僕は後がなくなった。
そのときだった。
打ったボールが高く跳ね上がり、観客を追い越しどんどん転がっていく。
「ボールが〜」
と1人の女の子がボールを追いかけていきいつの間にか校門の前の大きな道に出ていた。
「ふ〜追いついた」
とほっとする女の子。
プップー!!!
と女の子の横から大きな音が響いた。みんなそれに気づく
「あぶな〜い!!!」
女の子がその方向をむくと大型トラックが迫ってきた。
その光景にミンナ息を呑む中僕は気づいたら必死に走っていた。しかも
ものすごいスピードで
(僕何してんだろう?なにこれ体が軽い僕じゃないみたい)
トラックはもうすぐそこまできていた。
「間に合わない!!」
「轢かれる〜!!」
と誰もがもうダメだと思った瞬間僕はその子を抱きかかえて反対の塀の上にのった
「ふ〜危なかったね? ケガない?」
「はい……」
「わ〜」
と周りが盛り上がった
「すごいじゃない!!」
「谷口君カッコイイ」
「スゲーよ!! お前!!!」
「男の中の男だ」
とみんなに僕はほめられもみくちゃにされた。
そして茜がやってきた。
「お!お姫様のおでましだ〜」
「ちょっといつまで抱えてんのよ」
と1発グーで殴られた
「このバカ龍二!! 何やっての!!」
「何って女の子を助けただけだけど?」
と平然と答えると
「そんなのわかってるわよ!!ナンもできないのにでしゃばってんじゃないわよ!!今回はうまくいったけど、死んじゃったら助けたって何も意味ないんだからね!!」
と胸ぐらをつかまれた。
「わ〜なんかいつもの本郷さんじゃない」
「本郷さんがこんなことするとは思わなかった」
(やっちゃったなついいつものペースになってしまった。そういえば保健室以外で人前でいつもの接し方するの初めてだな。たぶん引かれたな完全に)
「かっこいい」
「え?」
「そんな本郷さん初めてみた。」
「本郷さん? 僕をしかってください」
と男が殺到してきた。
「え〜〜〜? ちょっと!!!」
と逃げる茜
「コラ!! 龍二!!! 助けなさ〜い」
「え? そんなこといわれても。こっちもそれどころじゃ……うわ〜きた〜!!」
僕も僕で
数分前
「谷口〜」
と斉藤さんはものすごい勢いで僕に迫ってきた
(絶対殴られる!!)
と覚悟を決めたとき
「お前!!すごいぞ!! ゴメンな。いままでずっと見下してたお前のこと。お前じゃ
茜ちゃんに似合わないって」
「いいですよ。本当のことだから」
「でも今日お前の行動をみて俺は1つ大きな間違いに気づいたんだ」
「なんですか?」
「お前じゃ茜ちゃんに似合わないんじゃない、茜ちゃんじゃお前に似合わないんだ!!」
と斉藤は力説する。
「え?」
(どういうこと?)
「谷口?お、お前にほ、惚れた!!」
やけにたどたどしくそういって顔を赤くした
(え? もしかして、嘘!! まさか……)
そのまさかであった。斉藤さんは禁断の扉をあけてしまったのである。
「谷口!!」
と抱きついてきた
「やめてください!! 僕にはそんな趣味ありませんから!!」
と必死に離した。
「谷口、逃げんなよ〜」
こうして決闘はうやむやのまま終わった。
こうして禁断の扉を開かせてしまった龍二君。
さて次回は助けた女の子のお話
次回
何がよくないんですか?
何が良くないんだろうね? 龍二君




