第28話 ……わかりました
長らくお待たせしました
なんだか夏が終わってしまいましたね・・・
あいかわらず不定期になってますがよろしくお願いします
ということで今回は遥ちゃんの完結編です
「間違いない」
一人男の人は納得してこう告げた
「これからこの熊を射殺します」
その言葉に僕たちは頭が真っ白になった
「どういうことですか?」
自然と口が開いていた
「最近熊の被害が大きくて、この辺一体も今月に入って4件の被害が出てましてね」
説明をする男の人
「疑わしきは処分ですか」
伊織の深刻な顔
「違いますよ。確定しているんです、この熊がやったって」
再度男の人は言う
「なんで」
思わず遥は言葉を発した
「この間の夜、民家が被害を受けまして、その際熊に向かって発砲したんですが逃げられましまったんですよ。右の前足にはそのときの傷があるはずです。そうその包帯が何よりの証拠です」
確かに包帯が巻かれてあった。
「確かに包帯巻いてありますけど……」
それだけで断定されるので困惑する僕たち
「さぁその熊から離れてください。皆さんも標的になりますよ? 危ないですから」
男の人はライアンから離れるように促す
そして僕たちは渋々ライアンから離れた
しかし
「いやです」
遥だけは即座に意思を表明し一歩も動かなかった。
「あなたも死にたいのですか?」
「何の罪もないライアンが殺されるのなら私も一緒にいます!!」
男の人の言葉にそう答えた。
「たかが熊ぐらいで本気にならなくなくとも」
男の人はため息をつき下らないというような態度
「たかが熊って……」
低い声で遥でつぶやいた
「だってそうでしょ? 熊は人間を襲ったり、田畑を荒らしたり、危害を加えることしかしませんよ? そんな危険物を放っておけるわけないじゃなですか」
さももっともらしく振舞う男の人
「そんなことありません」
今にも爆発しそうだが抑える遥
「なんでこんなこと言えるんですか? 現に4件被害が出てるんですよ? そんな凶暴な生き物を守ろうとするなんてあなたは悪魔の何者でもありません。だいたいこの人間様に刃向かうすら許されないのに刃向かいなおかつ人間様に守られようとするなんてどこまで人間様を愚弄するつもりだ!!」
だんだん発する言葉に怒気が孕んでくる
「なんかイヤな感じだね……」
その光景を見ている茜が口を開いた
「ああ。あいつの言うこと、本当にヘドが出る」
「全くだ」
茜に続く由良に厳燐丸も同意
確かにあの男の人はイヤな感じだ
話し方もおそらく高学歴であろうプライドの高いナルシストのような話し方
自分がすべて正しいそおもっているような口ぶりである。
きっと自分の思い通りにいかないと無能なやつだと自分を棚に上げて周りを罵るだろう
「熊はもともと大人しくて臆病な性格です。人間を襲うなどありえません」
遥は声を震わせる
「それではなぜ近年、熊の被害が出ているんでしょうね? しかも人間も襲われているそれをどう説明するんですか?」
言えないだろうとニヤリと嫌な笑みを浮かべ返答を待つ男の人。
「それは……熊のえさが無くなったからです。熊はどんぐりなどの木の実を好んで食べます。特にブナやナラの木の実をね。ですがここ近年はスキー場やゴルフ場などで開拓で森林は伐採され熊が必要な木の実が得られなくなって木の実を探しているうちに人間のいるとこまで来ているのでしょう。特にこの時期は冬眠のためには大切な時期。熊も必死なんです」
学者になれるかもしれないと思った遥の説明であった
「ほう~我々人間のせいだと?」
「そうです、私たちが自分たちの欲望のままに勝手に山に住む生き物たちへの境界線を破ったからです」
男の人のいかにも興味深いと言ったような質問に遥はやるせなさを全面に出してそう答えた。
「そんなことありえない!! なぜなら人間は特別な存在なのだから!!! 何をしても許される存在だ! そこらの虫けら同然の下等生物なんかと一緒にされては困るんだよ! 人間の威厳が汚れる!」
とうとう男の人の本性が確実に露わになった
「はぁ~……またそんなこと言ってるんですか? 少しは自然に敬意を払ってくださいよ。毎回間違ってるし……」
今度は女性の人がやってきた。どうやら部下のようだ
「人間は自然の中に入ってるんですよ? だから動物たちと一緒。人間が特別ということはありません」
「だからあなたは間違ってるんですよ!」
男の人は女の人に反論
「そんなことは後回しとして、ずいぶん手間が掛かってるみたいじゃないですか。先輩」
話を切り出した
「ああ。この小娘がね。邪魔するんですよ」
男の人は答える
「人間の都合で熊を殺してしまうなんてさせません」
阻止しようとする遥
「そっか。確かにそうだね? 気持ちは良くわかる。けどそれもまたあなたの都合だよね。愛着があるものはそうそう離したくないものさ。でも人里に現れた以上なんらかの対応をしなければならない。まぁ普通は空砲を撃って山に戻るように警告するんだけど人に危害を加えた可能性があるとなると別。いつ人を襲うかもわからないし」
女の人は説得に入った
「なんとかならないんですか?」
必死で訴える遥
「動物の命も大事だけど、人間の命をどうしても優先させないといけない。何十人、何百人の犠牲者が出てからでは遅いの。だからお願い分かって!」
こちらも必死に説得する
「……わかりました」
遥は覚悟を決めて説得に応じるようだ
「わかってくれたようね」
安堵の表情を見せる女の人。
「最後にいいですか?」
女の人に尋ねる
「いいわよ。思いのたけを伝えて」
許可が下りるとくるっと反転し、ライアンを抱きしめた
「今までいろんなことがあったね? 全部忘れないから!今まで本当にありがとう。これからもずっと……一緒だからね!!」
涙ながらにライアンに語りかけ遥はライアンから離れ僕たちの元へ。
「もういいのね?」
「はい」
女の人の質問に力強く答えた
「それでは発射準備」
男の人の合図でみんないっせいにライフル銃をライアンに突きつける
そして
「発射!!」
バーンバーンバーン
周りの音が聞こえないほどの銃声と
グオーーーー
という熊の悲鳴が木霊した
これでライアンは力尽き天に召されていった
すべてが終わった瞬間糸が切れたように遥は崩れ落ち、しばらく涙が止まらなかった
1ヶ月後
この間までライアンがいた廃工場には大きい石を置いただけだがライアンのお墓が立てられていた
そしてみんなで墓参り。
ライアンが亡くなり数日はかなり遥も落ち込んでいた。しかし
「ライアン? みんな来てくれたよ? はい ライアンが好きだったお菓子だよ? 好きなだけ食べてね」
元の明るい遥に戻っていった。戻れた理由として彼女は
「ライアンを守れなかったときはとても悔やみました。でもたくさんの素敵な思い出を貰ったのでそれでけで充分。出会えたことに感謝しないといけません。それにアイアンは私の中で生きてますから」
とのこと。
方向音痴で頼りない後輩が少し大人びたように見えたのは気のせいではないようだ。
なんと斉藤さんについに春が?
次回未定




