第12話 もう!!! みんないい加減にしてよ!!!
やっと1クールあたりまでこれました
みなさんのおかげです
由良が来て一週間。その間教室は異様な雰囲気に包まれていた。
「教科書忘れた」
と彼女が発した言葉によって状況が一変。
「俺の見せてあげるよ」
「私のを使いください」
「どうぞ」
「どうぞ」
と彼女の机には教科書が積みあがった。
またもや返せず、僕はそれを見て苦笑いを浮かべた。
「ありがたいが、一冊でいい」
隣の男子のを見ることになった。
倉本と西岡がにらみ合った。
(でかしたぞ)
(次は負けないから)
西岡とは西岡志穂。倉本と小中高とずっと同じクラスの女子である。事あるごとに二人は対立する。
そして二人いわくに犬猿の仲らしい。僕にはそう見えないが。
休み時間
「由良様、次は理科です。一緒に理科室へ移動いたしましょう」
とが聞いた
「別にいいが」
と返答する。
「待て待て! は俺たちといく方が良いんだ」
と倉本がマッタをかけた。
またもや困惑する由良であった。
「何言ってるのよ? 私達がするの。女の子同士のほうが話が弾むし」
「そうです、そうです」
「そんなの関係ないだろ?」
「いいから行こう?」
「いきましょう?」
「あ、ああ」
と半ば強引に女子が由良を連れて行った。
(くそ!!負けた……)
「ねぇ?由良さん一緒にご飯食べようよ」
「何言ってんだよ!!涼風さんは俺たちと食べるんだ」
「何よ!! どうせ胸目当てで仲良くなろうってんでしょ?」
「何だと!!!」
「だって由良さんを見る目がいやらしいんだもん。違う?」
「どこがどうそういう風に見えるんだよ」
とにらみ合う二人。
そして去っていく倉本に向かって西岡は消しゴムを投げつけた。
「何すんだよ!?」
「ゴメン手が滑った」
「なんだと」
とその消しゴムを投げつけ返した。しかし西岡には当たらず、別の女子に当たった。
「ひどい。大丈夫?」
その繰り返しでいろんなものが乱れ飛び全面戦争へと広がっていく始末。そしてその間に
「由良様今のうちに」
と由良を連れていく。
こんな風にこの一週間、僕のクラスは由良を慕うクラスの女子と男子の間で涼風由良争奪戦が日々行われていた。
「というわけなんだけど?なんかいい方法ないかな」
僕は昼休み保健室に茜、伊織、遥、斉藤の四人を呼びだした。
「難しいわね……中立派は?」
と茜が聞いて来た。
「僕と水島さんの二人」
「なおみちゃんだけか。男子を龍二が説得して、女子をなおみちゃんが説得すれば?」
「茜? そんなことできたらとっくにできてるよ」
「勝負をするとか」
と伊織が提案する。
「いいな、それ!! それで俺は運命の人と出会ったわけだし」
その提案に激しく同意する斉藤。
「伊織さん?それはやめてください。この間、僕と斉藤さんの勝負のとき思いのほか生徒会がお金使って残り少ないって久本くん嘆いてましたよ?」
「大丈夫。いつものことだから。それにまだ余裕あるし」
「そういう問題じゃなくて」
「え〜と保健室は……」
その頃遥は食堂の前にいた。
「あれ?保健室ってこんなに大きかったっけ?」
首をかしげる遥であった。
「先生、どう思います?」
「このままにしておくほうがいいんじゃない?」
「そんな」
「下手に入っていったら、余計にあおりかねないでしょ?」
「それは、そうだけど。でもまたいつ爆発するか……」
「そのときは、そのときでなんとかすればいいし。まぁ今は余計な刺激を与えないことね」
その頃由良たちは屋上にいた。
「なぁ私どうすれば良いんだ?」
「わからん。お前にはいいんじゃないか?」
「どういう意味だ?」
「さぁな」
と由良は厳燐丸に聞いてみる。
「ここにいたんだ?」
僕は保健室の作戦会議を終えなんとなく屋上に来て見た。
「谷口龍二!!」
「すまんな」
「何が?」
「クラスをめちゃめちゃにしてしまって」
「全然気にしてないって。こっちこそゴメンね。こんなのに巻き込んじゃって」
「だって、私が来てからというものずっとケンカばっかりではないか。しかもすべて私が原因。私……来るべきではなかったのか?」
「そんなことないよ? 考えすぎだって。そんなに自分を責めないでよ。涼風さんが悪いんじゃないんだし。一時的にフィーバーしてるだけ。度は越えてるけどね」
「俺もそう思う」
と慰める僕。
「そうか?」
「そうだよ!」
と僕が力強く答えた。すると
「たくっ私をおもちゃにしよってけしからん」
どうやら由良は元気を取り戻したようだ。
「ちょっとトイレ」
と席を外す由良。
「あいつはいままでほとんど人とまともに付き合ったことがない。前の学校も、その前の学校もずっと一人でいた。初めてだ、あいつに人がこんなに寄ってくることは。だから戸惑っているのだ。まあいつにとってはいい経験だがな」
由良が戻ってきて
「何を2人で話してたんだ?」
「さぁな」
と厳燐丸が答える。
「もどろうか?」
「ああ」
そして3人で教室に戻ると全面戦争が勃発していた。
「みんな落ち着いて、投げないで! 痛っ」
「どうしたの?」
「放課後どうするかでまたケンカしてるの」
となおみが説明した。
「由良様は、放課後は私たちとフィンフェクトに行くの!」
※フェンフェクトとは放課後女の子の間で人気のスイーツのお店。
「いや、由良ちゃんは俺たちとカラオケに行くんだ!お前ら昨日、一緒にどっかいってたじゃねえか?」
「あんたみたいな野蛮人に由良様は渡さないわ」
「どこがだよ!!」
「変な写真ばっかり取ってるくせに。それに伊織お姉ちゃんいつもいじめるし」
「なんだと!! そんなの関係ないだろう」
といがみ合う倉本と西岡。
「由良様は私達といきますよね?」
「由良ちゃん?もちろん俺たちといくよな?」
「いや私達とよ!」
「いや俺たちとだ!」
そんな口論に僕はついにしびれを切らし
「もう!!! みんないい加減にしてよ!!!」
と怒鳴ってしまった。一瞬にして沈黙した。
「仲良くなりたいのはわかるけど、ケンカしたって意味無いでしょ。それに涼風さん、戸惑ってるじゃない!涼風さんまだ来て一週間しかたってないんだよ?そんなに慣れてないのに、あれやこれやケンカしてたら余計になじめにくいに決まってるでしょ!! お互いに主張しすぎ!! なにをするかは涼風さんが決めるんだよ? 仲良くなりたいならお互い涼風さんの話も聞かなきゃ」
「そうだな」
「そうね」
2人は納得したようだ。
「由良様、どちらがいいですか?」
「由良ちゃんどっちがいい?」
「え、その……両方」
と照れを隠すように小声で言う由良。
なんとか収拾がついた……と思ったのだが
「私達が先ですよね?もちろん」
「いや俺たちが先だ!」
「いや私達が先よ」
「いや俺たちだ」
とまたにらみ合う倉本と西岡。
当分この対立は続きそうだ。
ついにインターハイが間近に迫ってきた。しかし斉藤はスランプに陥っていた。果たしてその原因とは……
次回 あんな恥ずかしいことできなよ……
やべぇ〜ストックがもうない!!




