第11話 涼風由良だ。よろしく
1週間ぶりの更新です
期末テストも終わり、夏休みが待ちきれない日々を送っていた。そして部活が終わり外は街灯が灯っていた。僕は茜と一緒に帰っていた。
「ゴメン、茜忘れ物しちゃった。先帰ってて」
「何、やってんのよ。もう。気をつけて帰ってきなさいよ」
「はいはい」
と僕は再び学校に足を向けた。
「もう8時だ。空いてるかな?」
うちの学校は二十四時間空いているため8時以降は警備員が駐在する。
そしてその時間以降、たとえこの学校の生徒だろうと、手続きをしないと校舎には入れない。
手続きをすませ学校に入り
「これで、よしと」
無事忘れ物をとった……のだが
ピピピピピピピ……
なにかのはずみで警報装置が作動したらしい。
「え?」
「くせ者!!!」
と女の人の声と
「こいつか」
と男の人の声がした。
「この不審者が!!!!成敗してくれる!!」
と何かを振りかざしてきたのを左によけた。
「か・・刀!!?」
「ちょっと、待ってよ。ただ僕は忘れ物をひぃ〜」
と説明をしようとするが相手は聞く耳持たないらしい。
「問答無用!! そんな嘘にだまされんぞ!!」
と刀を振りましてきた。
僕は逃げ回った。当然のことだ。
「なんなんだよ一体? 君は?」
「ちょっと待て。本当に忘れ物を取りに来たのかもしれん」
「しかし……」
「事務室で確認すればよかろう?」
「お前、あいつの言うことを鵜呑みにするのか?」
「誰も鵜呑みにしてはない。可能性の話をしているのだ」
「待て〜!!」
「そんなんできるわけないよ……」
そんなわけで僕は命からがら学校を後にしたのである。
(なんだったんだろう?)
翌日
「どうだ? 銀法高校は」
「やっぱり夜とは違うな」
「それはそうだろう」
「強い人いるかの〜?」
「さぁな」
と高校の前に誰かと話す髪を後ろに束ねた凛とした顔立ちの女の人が立っていた。
「ちょっとお前はここで待っていろ」
とその女の人は持っていた刀を校門において心を躍らせるように校内に入っていった。
「ちょっと待て!!俺を置いていくな〜!!」
「すぐ戻る」
数分後
「日本刀?」
と首をかしげる茜
「なんだろう?これ」
と僕が持つと
「おい!勝手にさわるでない!!」
「すいません!!」
と僕はびっくりして思わず落としてしまった。一瞬聞き覚えのある声に聞こえた。
「何?どうしたの?いきなり謝って」
「え?今声が聞こえたんだけど?」
「いや。全然」
と僕はどこからか男の人の声が聞こえた。
(気のせいか)
「痛い!!」
とまたどこからか声が聞えた。その声の発生元は刀であった
「たく俺置いてどこいったんだ?」
「か……か……刀がしゃべった!!!」
と驚く僕。そしてまた僕はその刀を手にした。
「何バカなこと言ってんのよ?いくよ」
と歩く茜。
「若いの、俺の声が聞こえるのか?」
「はい。ばっちり」
と僕は答えた。
「ちょっとなにやってんのよ?早くしないと遅れるよ」
と腕を引っ張られて強引に学校に入った。
「わ〜」
というわけでそのまま僕は教室に刀をもってきてしまった。
(結局これ持ってきちゃったけど大丈夫かな?)
「なんだ?それ」
と倉本が聞いた。
「校門にあったのを、つい持ってきちゃった」
とぼくはそう言って頭をかいた。
「大丈夫なのか?」
「たぶん……」
自信なさそうに僕は答えた。
「それよりさ、今日転校生が来るんだってよ? このクラスに」
「え?もうすぐ夏休みなのに?」
「だな」
「ねぇどんな人かとか聞いてない?」
「女子だとしか」
「そう」
「よ〜し。みんな席に着け。ホームルーム始めるぞ」
そしてみんなそそくさと席に着く。
「今日は転入生を紹介する。涼風由良さんだ。」
「涼風由良だ。よろしく」
「う〜ん」
倉本は腕組みをして何やら考え込んでいた。
「何考えてんの?」
「D、いやEだ!!」
「は?何言ってるんだよ?」
「胸の大きさ」
「凛々しい顔してアノ胸の大きさというギャップがそそるね」
「あのね……」
僕は彼に何もいえなかった。
「由良〜!!!」
「ちょっと!! いきなり大きな声出さないでよ!!」
「すまん……」
と僕は思わず刀に怒鳴った。
「龍二、どうした?」
「いや、なんでもない」
「アノ人が君の持ち主なの?」
「ああ。俺のなくてはならない相棒だ」
「わかった。それなら早く返さないと」
と立ち上がり由良ちゃんの所に向かう。しかし
「キャー!! カッコイイ!!」
と黄色い悲鳴と
「うお〜」
と汗臭い雄たけびが教室を埋め尽くした
どうやら彼女の凛とした態度がクラスの女子の一部と男子全員を瞬く間に虜にしたようだ。
そして一斉にみんなが駆け寄ってきた。結局近づけず、返すことができなかった。
「趣味はなんですか?」
「なんでここにくることになったの?」
「家はどこ?」
「由良様と呼ばせて頂いてもよろしいですか!!」
「ねぇ何カップ?」
「うっ……」
とまるで疑惑が浮上した芸能人のように質問攻めにあい、戸惑う由良。
「ちょっと、みんな!!」
「落ち着いて?みんな」
となだめようとする僕と水島さん。
(あいつさえいれば……)
授業前、みんな席についていた。
(みんな席ついてるし、いまだな)
と僕は刀を持って彼女のところに行く。
「あの……」
「なんだ?」
「僕、谷口龍二。よろしくね」
「それで、なんのようだ?」
「あの……これなんだけど。」
僕は申し訳なさそうに刀を出した。
「これは!!」
しかし
「谷口、なに立っている? 授業始めるぞ」
タイミング悪く教師が来てしまった。
その後も休み時間
「おい!谷口、話があ」
と由良に呼ばれるも
「谷口君?ゴメンね。そのノート持って行くの手伝ってくれない?」
と教師に呼び出され
「わかりました。涼風さん?また後でね」
「ああ」
と返すチャンスはあったものの、ことごとく失敗し、昼休みになった。
そして僕たちは屋上にいた。
「ゴメンね、なかなか返せなくて」
「問題ない。別に気にしてはいない。タイミングが悪いだけだ。」
「そういや君にも名前あるの?名刀なんとかみたいな」
「ああ、俺は彦屋敷厳燐丸だ。」
「へ〜なんか人の名前みたい」
「もともと俺は立派な剣士になるはずだった。だが、大きな戦乱の中で朽ち果てた一人だ。想いも告げれずにな。それで未練を残してこの世に居座っちまった」
「どういうこと?」
「浮遊霊になっちまったんだよ。この刀に入ってるんだけどな」
「いままでは手にして、俺の声を聞いただけで飛んで逃げていった。そのため妖刀として恐れたれた。でも由良だけは違った。」
三年前
由良は一つの刀を手にした。
「久しぶりに持たれた」
(う……なんだこのやわらかい触感は)
「お、女だ!!?」
と動揺する厳燐丸。
「どうした?」
「ほう。これが、妖刀厳燐丸か」
と観察するように見回す由良。
「お、お前、お、女か?」
「そうだが。それが、どうした?」
「も、持つでない!女の持つものではない!!」
「こいつ、私をバカにしてるのか!!」
と由良は怒り出した。
「そ、そんなんじゃない。女に持た、れ……るのははじ、めてでな。べ、別に緊張してるわけではない」
とオドオドする厳燐丸。
「めちゃめちゃ緊張してるではないか。まぁいい。」
「俺のこと怖くないのか?」
「全然。こんな女ベタな刀初めてだ。女としてみてくれるのはありがたいが。」
と由良は笑った。そして
「なぁお前ずっとここに一人だったんだろう?」
「ああ」
「私も、ずっと一人だった。」
と由良が悲しそうな顔をした。
「そうだ!お前に女の免疫を付けるために私のものになるというのはどうだ?」
「そうだな。そろそろ身を固める時期だしな。刀だが」
「こうして俺は由良ものになったのだ。なぜこういう話になったのだろう?」
「さぁ」
「そろそろ、戻ろうか?」
「そうだな」
と立ち上がると
「谷口龍二〜!!」
と由良が走ってきた。
「はぁ〜はぁ〜……や、やっと見つけた」
息を切らせながらそういった
「なに? どうしたの? あ〜これか!」
と僕は思いだした。
「良かったね? ちゃんと持ち主にのもとに帰れて」
「ああ」
その瞬間一瞬だけ由良は驚いた。
「お前に話しがある」
「なに?話って涼風さん」
「まず、その刀を返せ」
「あ、うん」
「お前、こいつの声が聞こえるのか?」
「まぁね」
「お願いだ、このこと秘密にしといてくれ。頼む!」
と勢いよくせまり、僕の両肩に手を置いてそういった。
「いいけど……」
と思わず僕は後ずさりをした。すると
「うわ〜」
僕はバランスを崩し倒れてしまった。
「……」
「……」
両者顔を赤くした。
タイミングが良いのか悪いのか、茜がやってきた。
「なにやってんのよ!!」
「茜!!」
驚く僕。
「これは・・・違うんだ。」
「何が違うのよ!!」
「ひどいぞ!!俺というものがありながら!!こんな女の誘惑にのりよって!!」
と斉藤は泣いた。
「斉藤さん!!なんでいるんですか?」
「細かいことは気にするな」
「ほ〜二股?モテる男は辛いね」
と伊織が関心した。
「伊織さんまで!!なんでここにいるんですか?」
「あら、気づかなかった?いつもここでお昼食べてるの」
「何言ってんだよ、伊織姉。いつもは生徒会室で食べてるじゃん。」
ボフッと倉本は伊織の肘鉄を食らった。
「倉本君!!」
「伊織姉が教えてくれてね。」
パシャパシャ
「何写真とっての!?」
「おお!この写真使えそうだ!」
人の質問におかまいなしの倉本。
「あら、みなさん。みんな学食で食べるんですか?」
といつもおとぼけ発言の遥
「遥ちゃん・・・?ここ屋上だよ?」
「うそ!!! 今回は自信あったのにな……」
遥は悔しがる。
「残念だったね」
と苦笑いを浮かべる僕。
「ところで、二人で何話してたの?」
「いや、それは……ね」
「何?言えないことなの? だから昨日忘れ物とりに行って、変な人に襲われるのよ!」
「関係ないじゃん!!」
すると由良がいきなり刀をだして
「お前か!!! 昨日の不審者は!! 成敗してくれる!!」
「違うって!! だから……」
「男が言い訳とは見苦しいぞ!!」
と追い回された。
後日わかったことだが、昨日の警報は誤作動だったようだ。
由良が来てから一週間龍二のクラスでは思わぬ紛争(?)が・・・次回もう!!! みんないい加減にしてよ!!!




