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暖かい食事

「大変お恥ずかしいところをお見せして、申し訳ありません!!」


 13にもなって小さな子メルと一緒に大泣きするという醜態をさらし、レイは恥ずかしさのあまり全力でギルド長に謝罪をしていた。

 それを見ながら、何も気にすることがないかのようにギルド長はレイの肩を叩いた。


「子供が泣くなんていつものことさ。ほら、もう大丈夫ならご飯にするよ。子供たちが用意してくれて、もう食べている始めているころだからね」


 せっかくのお誘いだが、これ以上お世話になるわけにはいかない。

 そう思って、断りを口にしようとしたとき、先んじてギルド長ににらまれる。


「うちの子たちが作った料理が食べれないってんなら、延々と今日の出来事をギルドで語ってやるよ?」

「……喜んで食べさせていただきます」

「よろしい」


 満足そうにうなずいたギルド長は部屋を出て、ずんずんと進んでいく。

 レイは見失わないようにギルド長の後についていく。

 ちなみに、レイの後ろには、謝罪を始める前からレイの服を掴んで離さないメルがくっついている。


 ……なんか懐かしいな。


 レイがメルくらいの時、よく今みたいに(リリシア)がくっついていたのを思い出す。

 そんなちょっとした感傷に浸りながら、廊下を歩いていくと広い部屋へ着いた。

 そこには赤ん坊からレイよりも少し小さいくらいの子供が、長い机を囲むようにして座り、一緒になって食事をしていた。女の子が赤ん坊をあやしながら、器用に自身も食事をとっている。

 そんな光景を感心して見入っているレイのもとに、みんなの視線が集まった。


「今日はこのお兄さんも一緒だからね。ほら、自己紹介」


 突如、ギルド長に振られ、慌てて自己紹介をするレイ。


「は、初めまして!レイ.グ……、レイです。今は冒険者をしています。今日は夕飯をご一緒させてもらうことになりました。よろしくお願いします」


 そして、軽く頭を下げると、一斉によろしくお願いしますという声がかかり、さらに、いくつもの質問が重なってきた。


「……えっと」


 幾重にも重なる声を聴きとれず、戸惑っているレイの前に、意外にもメルが出てきた。


「お兄さんが困ってるから、順番」


 あまり大きいとも言えない声ではあったが、それを聞いた瞬間にみんなが静かになった。というよりも、驚いて声が出なくなっているようにも見える。ギルド長でさえ感心したような顔をしているのだから。

 それを見て、レイも落ち着きを取り戻す。


「ありがとう、メル。みんなも聞きたいことがあったら聞いてくれて構わないけど、メルが言ったように順番でお願い」


 そこからレイはみんなと楽しくおしゃべりをしながら夕食を食べた。

 一人じゃない夕食は久しぶりで、心がふわふわするほどには堪能していた。


「「「帰っちゃうの~?」」」

「ごめんな、また来るからさ」


 孤児院の入り口で子供たちに引き止められながら、ギルド長にお礼を告げる。


「ギルド長、ありがとうございました」

「いいってことさ。それよりもずいぶん気にいられたもんだね」


 ギルド長の視線の先には、レイの服を掴んで離さないメルの姿があった。

 先ほどからずっとこの状態だ。

 レイはしゃがんで、メルと視線を合わせる。


「きっとまた来るから」


 そう言って、メルの頭をなでると、メルは泣きそうな顔をしながらレイの服を話した。


「……明日?」


 小さな呟きを聞いて、レイはメルと小指を絡ませる。


「うん、明日。約束」

「……うん!約束!」


 笑顔をほころばせるメルの頭をもう一度なでて、立ち上がる。


「ふーん、明日ね~」

「あ、勝手にごめんなさい」


 ギルド長は顔をにやつかせながら、僕の前に手をかざす。


「いいんだよ。他の子たちも喜ぶからね。それより、約束を破ったらただじゃおかないからね」


 ギルド長の笑顔に一も二もなく、即座にうなずいた。


「それじゃ、またおいで」


 みんなに見送られ、ギルドへと戻るレイ。

 本当に心が温かくて、その日の夜は穏やかに眠ることができた。

お読みいただきありがとうございました。

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