表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/16

桜の王子様 8

そろそろ店を閉める時間だ。


だけど、桑野くんが来ない。

どうしたんだろう。



「昨日の男の子、今日は来ないんだ」


俺の考えを見透かしていたかのように、

彬さんが言う。


「彬さん、桑野くんのことご存知なんですか?」

「昨日来たからね。那智くんが休みって知ってガッカリしてたけど」

「そうでしたか」

「今日も那智くんが裏にいたとき、那智くん目当てで女の子が来てたんだよ」

「那智くんて、男にも女にもモテるのね」



彬さんと美華さんにからかわれて、

俺は苦笑いを返す。


その女の子はともかく、桑野くんはそういう意味じゃないと思うけど。

だって男性だから。



「今日は来ないみたいね、アイツ」

「あはは、別に約束しているわけじゃないですから」

「あ、噂をすれば」



店の外に影が見えた。

おそらく桑野くんだろう。


「では、お先に失礼します」

「お疲れ様、那智くん」



荷物を持って、俺は外に出る。



でも、いたのは桑野くんじゃなかった。

桑野くんよりも小柄な・・・知らない女性だった。



「あの、桜庭那智さん・・・ですよね」

「はい、そうですけど」

「お話聞いてもらってもいいですか?」



女性は、頬を赤らめながら言う。

よく見ると、指先がもじもじと動いている。


ひょっとしたら、

さっき彬さんが言っていた俺目当ての女性って、この人なのかもしれない。


ということは、お話って・・・



「わかりました」


俺が笑顔で応えると、

女性は嬉しそうに歩き出した。



ああ、やっぱり可愛いな。

女の人が嬉しそうにしているだけで、俺まで嬉しくなってくる。







建物の影に移動すると、

女性が下を向いてモジモジし始める。


きっと今、

どう切り出していいのかわからず、困っているに違いない。


俺は告白してもらってもお付き合いできないから、

悲しませることになってしまう。


だけど、落ち込んでもすぐに前を向けるように、

誠意を持ってお断りしなくては。



「話って、なんでしょう?」


促すと、

女性が意を決したように拳を握る。


そして、俺の顔をまっすぐに見た。



「あの、桜庭さんって・・・お付き合いしている人、いますよね?」



予想していない質問に、頭の中にはてなマークが浮かぶ。


マイナス思考なのかな?



「・・・いませんよ」


「でも、うちの学校で噂されてますよ。

 同じ学校のテニス部の方とか、大学生の方とかとお付き合いされてるって。

 それに・・・経験人数は100を下らないって」



・・・その噂、誰が流したんだろう。


テニス部に親しい知人はいないし、大学生に知り合いなんていない。


さらに言うなら、経験人数なんて100人どころか・・・



「ただの噂ですよ。まったく見に覚えがありませんから」



笑顔でさらりと答えると、

女性は安堵のため息をつく。



そして・・・




「――嘘ついてんじゃねぇよ!このヤリチンが!」




固いものが、俺のお腹を突き上げた。



「うぐ・・・っ」



あまりの衝撃に、その場に膝をつく。

蹲る俺の髪が、上に引っ張られた。



目の前には、悪魔のような顔をした女性。



どう・・・して?



女の人はみんな、

可憐で美しい・・・はずなのに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ