表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
降魔一郎の東方異聞録~見える  作者: めけめけ
第7章 日記その1
32/33

日記 田宮一郎19歳 5月5日

拝啓、母さん、子供は嫌いです。

 前に近くの公園で見かけ、つい声を掛けてしまってから付かず離れず僕に憑いている白いワンピースを赤く血で染めた少女のその後の顛末をお話します。"あいつら"の仲間とはいえ十日も一緒にいれば情も移ろうというものです。何を訴えるわけでもなく、ただわんわん泣くだけ。ただただ鬱陶しいだけの存在だったのに、いざ、いなくなってしまうと寂しさを禁じ得ません。彼がどうして消えてしまったのかをお話しましょう。

 今日が子供の日だから、ゴールデンウイークだからと言うわけではなく、受験勉強の息抜きに外に行きたくなり、少し遠くの公園まで散歩にでかけ、木陰にあるベンチで本を読んでいました。しばらくすると若い夫婦が花束を持ってこっちに向かって歩いてきました。彼らは僕の前を通り過ぎ、ベンチの後ろにある大きな桜の木の根元にその花を手向けて手を合わせました。よせばいいのに僕が「何かあったのですか?」と二人に尋ねると、父親の方が答えました。娘がこの木に登って転落死し、今日はその供養に来たのだと。なるほどそういうことかと少女の姿を探すと、何と彼女は桜の木に登り、こっちを見て笑っているのです。僕は思わず、危ないから降りなさいと声を掛けそうになりました。しかも驚いたことに、少女は木から母親の胸に飛び込み、二人は春風に消えてしまったのです。

 父親は、妻も後を追って逝ってしまった。二人は今頃、天国で仲良く暮らしているのだろうと言い残して去っていきました。まさか迷子探しを手伝わされるとは思いませんでした。子供はもうこりごりです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ